東京都市大学
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地域社会との連携に関する取り組み

活動報告

講演会「軍艦島をはかる」が行われました

2017年3月25日(土)、明治日本の産業革命を支えた世界文化遺産である「軍艦島」をテーマにした講演会が、本学二子玉川夢キャンパスにて行われました。これは、東京都市大学と校友会によって開かれたものです。

最初に登壇したのは、本学名誉教授の濱本卓司教授です。濱本教授は、1.軍艦島をなぜはかるのか、2.30号棟の今をはかるをテーマに講演しました。濱本教授は、崩れゆく軍艦島の姿を、視覚・聴覚・触覚を用いるという斬新な方法で、2014年4月以来長期にわたってモニタリング調査を行っています。

講演の冒頭に、ドローンを用いた軍艦島の全景が映し出されると、その珍しい画像に聴衆は一気に引き込まれていきました。その後、具体的なモニタリングの手法説明に入りました。

視聴触統合モニタリングの背景にあるのは、建築群の非常時モニタリングです。建築物の基礎構造と上部構造に振動センサをとりつけることで、振動をはかり、建築物の健康状態をはかっています。それらを行うことで、平時の準備、さらには想定外事象の備えになっているのです。

特に、崩壊が進んでいる30号棟には振動センサを配置し、振動をモニタリングすることで、触覚的にその崩壊具合をはかり、また自立型監視カメラを設置し、視覚的に映像モニタリングを実施しています。聴覚的には、マイクロフォン・アレイを設置することで、異常音をモニタリングすることができます。

このようにモニタリング調査の実験結果を有事に結び付け、非常時に対応できるものと考えています。100年経ったコンクリートの建造物が残っていること自体、非常に稀なケースであり、そういった意味でも30号棟の調査は画期的なものと言えるでしょう。

その30号棟をこのまま保存しようと奮闘しているのが、元NPO法人軍艦島を世界遺産にする会理事で、本学工学部建築学科卒業の中村陽一氏です。軍艦島といえば、世界遺産となり注目を浴びたものの、実際の姿を知る人は少ないのではないでしょうか。中村氏は、実際に軍艦島で暮らしたという貴重な経験と、豊富な写真を交え、軍艦島の歴史を手に取るように語りました。世界一の人口密度で島民がまるで一家族のように寄り添って暮らしていた軍艦島には、仕事はもちろん娯楽など、当たりまえの日常生活がありました。なかったのは墓地と火葬場だけだったといいます。昭和35年には5265人の人口を誇った軍艦島も、昭和49年の閉山にともなって、わずか3か月で無人島となりました。

そこで今、中村氏が手がけているのが30号棟を現存のまま残す活動です。日本初のコンクリート集合住宅のひとつである30号棟は、現在でも観光客の目玉のひとつとなっているそうです。コンクリート部分は海の塩分のためかなり腐食が進んでいますが、何とか現存を保存できないか、中村氏は奮闘中です。中村氏のお話からは、軍艦島での生き生きとした暮らしの模様と、30号棟保存にかける熱い想いが伝わってきました。

軍艦島にまつわる講演については、第二回が9月30日(土)、第三回が来年3月24日(土)に予定されています。

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