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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)人間科学部 児童学科の松橋 圭子准教授らは、地域の子育て資源(公園、商店街、神社、道、交番、子育て支援事業等)を子どもと大人が一緒に活用する「お散歩マップ」の作成手法を開発しました。
近年、子どもを取り巻く環境が変化して自然や人との交流が減少したことにより、子どもの他者との関わりや運動能力、自立心、規範意識の低下と、子育ての孤立化が課題となっています。今回開発した「お散歩マップ」の作成手法は、子ども目線を重視しており、同マップを子どもと大人が一緒に作成・活用することで、子どもの五感を刺激し、成長を促す効果が期待できるうえ、地域の子育て資源を発見・活用することにも通じ、大人(保育者、保護者)・子どもと地域社会との接点が生まれることで、地域における繋がりの希薄化を低減する効果が期待されます。
今後は、同作成手法を全国に広げるための活動を行っていくとともに、周囲に相談相手が少ない妊婦や高齢者向けのマップ作成手法も開発していく予定です。
本研究のポイント
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園外散歩を通じた子どもの成長に期待
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「お散歩マップ」を介した地域の繋がり強化に期待
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地域資源の情報共有と共に、子育て中の親子やシニアの外出行動のきっかけを創出
概要
東京都市大学 人間科学部児童学科の松橋 圭子准教授ら(まち保育研究会2007年~、代表・横浜市立大学三輪 律江准教授)は、横浜市内にある保育施設の協力を得て、子どもとまちとの関係性に着目した「お散歩マップ」(※)の作成手法を開発しました。
同マップは、大人ではなく園児の目線で「楽しい」や「危ない」と思う点を取り入れることが可能で、園児にカメラを持たせて園外で撮影させたり、散歩から帰った園児から話を聞きとるなどして、覚えやすいマークや写真を貼り付けた散歩ルートを作成します(写真)。
近年、特に都市部では園庭の無い保育施設が増えていることから、保育者などの見守りによって安全を確保したうえで、園児を自然に触れさせたり、屋外で遊ばせたりするために、園外へ出ます。こうした園外での活動は、子どもの五感を刺激し、成長を促す効果が期待されるうえ、園児が小学校入学前に地域生活に慣れる上でも有効で、今回、子ども目線の「お散歩マップ」の作成手法を開発した狙いの一つには、子どもが就学前から安全に配慮した外出ができるようになることと、地域の人たちと交流を深め、地域に溶け込めるようにすることがあります。
なお、この活動は2012年横浜市青葉区にある保育施設の協力を得てスタートしており、今後は、同マップの作成手法を全国に広げるため、12月19日からの国際校庭園庭連合日本支部が主催する「まち保育連続セミナー」(https://www.isga-japan.com/)を皮切りに、研修会を定期開催する予定です。また、同マップの作成にあたっては株式会社ゼンリンの協力を得ています。
※写真引用元:「まち保育のススメ」萌文社(2017.5.5)
研究の背景
2005年頃より、都市部では待機児童対策が優先されたことから、保育施設が商業施設や駅前のビルに併設されるなど「園庭のない保育施設」の存在が目立ってきました。松橋准教授らは園庭の代替となる公園等の地域資源の日常的な活用に着目した園外活動(お散歩)の実態調査を行う中で、保育施設が独自に作成している「お散歩マップ」には子ども目線で見た「まち」の魅力が満載であることに気づきました。またその一方で、保育施設が周辺地域と繋がるきっかけを模索していることや、特に設置後間もない保育施設が地域から孤立している現状も目の当たりにしました。
さらに、並行して乳幼児親子の行動特性や居場所に関する実態調査を行うことで、親子の気軽な外出を促進するための仕組や地域環境整備が育児不安や子育て期の閉そく感の軽減につながっていることも改めて確認しました。
そうした経緯から、同准教授は、多分野(建築学・都市計画学・都市防災・保健学・子育て支援・保育学・児童学・社会福祉学)を専門とする「まち保育研究会」のメンバーらとともに「子ども」と「まち」との関係に着目した研究を行い、まちで育てることはまちが育つこととする「まち保育」という概念を提唱しました。
研究の社会的貢献および今後の展開
マップについては、これまでも小学生向けの「安全マップ」や「遊び場マップ」などが各所で作成されていますが、就学前の子どもの成長発達を意識し、保育現場のプロが子ども目線で「まち」の資源について点検と確認を重ねながら作成したものが公になる機会は多くありませんでした。
今後は、株式会社ゼンリンの協力を得て、子育て中の親子、周囲に相談相手がいない妊婦、高齢者などが安心して暮らすためのマップ作成手法も開発し、普及に努める予定です。
用語解説
※お散歩マップ
保育施設が作成するお散歩(園外活動)に用いるための独自のマップ。保育園の場合、自治体によっては散歩計画表とともに自治体へ届け出る義務がある。
共同研究者
まち保育研究会、株式会社ゼンリン
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)