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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)総合研究所の石川 亮佑准教授らは、青色発光ダイオード(LED)と独自開発した太陽電池を用いた光無線給電技術を開発しました。
近年、電化製品やネットワーク機器などの多くが無線化する中で、離れた場所から電気を供給する技術への期待が高まっています。
今回開発した新型太陽電池は、臭素系のペロブスカイト型で、従来の一般的なシリコン太陽電池と比較して、波長が短く高エネルギーの青色光を、効率的に電気に変換することができます。この新型太陽電池と青色LED、移動体を追尾する装置を組み合わせれば、屋外で移動するスマートフォンや電気自動車等への光無線給電が可能となります。
今後は、この新型太陽電池のさらなる変換効率の向上と長寿命化を目指した研究を継続するとともに、民間企業との共同により、10年以内の実用化を目指して移動体を追尾するシステムの開発に取り組んでまいります。なお、この成果の一部は米物理学協会の専門誌「Applied Physics Letters」に掲載され、同誌のFeatured Articleに選ばれました。
本研究のポイント
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青色の光を効率よく電気に変換する新型太陽電池を開発
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青色LEDと組み合わせて無線で給電できることを確認
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自動車や携帯情報機器への給電を目指す
概要
東京都市大学 総合研究所の石川 亮佑准教授は、東京工業大学の宮島 晋介准教授と共同で、室内照明や薄型ディスプレーのバックライトに組み込まれている青色発光ダイオード(LED)を用いて離れた場所に電気を送る技術を開発しました。これは、「ペロブスカイト(※1)」と呼ぶ結晶構造の半導体を用いて、可視光の中で高いエネルギーである青色の成分を効率よく電気に変換できる太陽電池を開発し、青色LED の光をペロブスカイト型太陽電池に当て、光エネルギーの5分の1以上を電気に変換することに成功したことによるものです。この新型太陽電池と青色LED、移動体を追尾する装置を組み合わせることにより、スマートフォンや電気自動車に無線で給電するシステムの実現が期待でき、10年以内の実用化を目指します。今回の研究成果の一部は、米物理学協会の専門誌「Applied Physics Letters」に掲載(※2)され、同誌のFeatured Articleに選ばれました。また、2020年12月23日(水)にオンラインで開催された日本太陽光発電学会の次世代太陽電池セル・モジュール分科会主催研究会にて招待講演を行いました。
図1:光無線給電システムの実用化例(イラスト:HARU)
図2:開発されたペロブスカイト型太陽電池と青色LEDによる光無線給電の様子
現在の最も代表的で一般的な太陽電池は、半導体のシリコンで作ります。シリコンは電気を流すために光の粒(光子※3)に必要なエネルギーである禁制帯幅(バンドギャップ※4)が約1.1電子ボルトの半導体で、波長が長い赤外線を電気に変換する性質があります。一方で、今回用いたペロブスカイト型半導体の原料、メチルアンモニウム臭化鉛(CH3NH3PbBr3)はバンドギャップが2.3電子ボルトで、赤外線より波長が短く高エネルギーの青色光を電気に変換することができます。
今回、青色LEDとペロブスカイト型太陽電池を約50センチメートル離して設置し、青色光を無線で送って電気に変換する実験を行いました(図2)。その結果、太陽電池に当たった光エネルギーの20.2%を電気に変換することができました。
研究の社会的貢献および今後の展開
今回用いたペロブスカイト型太陽電池は、脆く割れやすいシリコンでできた太陽電池と違って軟らかく、曲面にも貼り付けることができます。また、シリコン太陽電池の製造には真空装置が必要ですが、新型太陽電池は大気中での製造が可能です。ただ、現在のところ長時間使用すると発電能力が低下するという欠点があるため、今後は、一層の長寿命化と変換効率の向上を目指した研究を進めます。さらに、電機メーカーと共同することにより、指向性の高い青色LEDの向きを自動車や携帯情報機器など移動体の動きに合わせて追尾できるシステム(図1)の開発を進めます。
用語解説
※1 ペロブスカイト
もともとはチタン酸カルシウムを主成分とする鉱物「灰チタン石」の英名。現在は灰チタン石と同じ結晶構造の名称。これまでにこの構造をした圧電素子、高温超電導材料、太陽電池などが開発されている。現在注目されている太陽電池材料は鉛などの金属原子と臭素などのハロゲン原子、水素や窒素などからなる有機物を組み合わせてできている。
※2 論文情報
R.Ishikawa et.al.,Widegap CH3NH3PbBr3 solar cells for optical wireless power transmission application, Appl. Phys. Lett. 117, 013902 (2020) https://doi.org/10.1063/5.0010009
※3 光子
量子力学では光は光の粒の集合体と定義する。1個の粒を光子、英名でフォトンと呼ぶ。紫から赤までを含む可視光では、紫に近いほど光子1個のエネルギーは高く、赤に近いほど低い。
※4 バンドギャップ
通常は電気が流れない半導体を、電気が流れるようにするために外から与えるエネルギーの大きさ。禁制帯幅とも呼ぶ。単位は電子ボルト(eV)。光によってエネルギーを与える場合、バンドギャップより低エネルギーの光は素通り、同等の場合は電気に変換、高い場合には余剰分が熱に変わる。
共同研究者
東京工業大学 工学院 電気電子系 宮島 晋介准教授
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)