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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)工学部建築学科 小林 茂雄教授と角舘 政英客員教授ら研究チームは、宮城県・気仙沼駅前商店街(商和会)を安心・安全な街にするため、照明灯の数を従来の3倍に増やすとともに、各場所に合わせた25種類の照明器具を設置するリニューアルを実施しました。
道だけが照らされて、建物や周囲の状況が把握しづらくなっていた環境を整備し、建物際や駐車場なども照明のあたる範囲に加えることで、防犯性向上を目指しました。
また、灯具を水銀灯からLEDを用いるものに変更することで、照明数を3倍増しても、消費電力を約6割削減する「省エネ」の実現にも成功しました。
リニューアル前後に行ったアンケート調査では、道の明るさが低下したにもかかわらず、「明るく感じる」「安心感がある」など、全ての項目が上昇したことから、「安心・安全」な照明環境作りには、道を中心に照らすのではなく、周辺の暗闇を照らすことが重要であることが分かりました。
本研究のポイント
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道を中心に照らすのではなく、周辺の空間や建物を照らすことで防犯性が向上
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既存手法よりも省エネルギー化を実現
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路面の照度は低下したが、街は「明るくなった」との印象を獲得
概要
2019年5月、宮城県気仙沼市の駅前商店街灯をリニューアルしました。既存の商店街灯は路面を明るくするために計画されていることから、道路だけが目立ち、光源が眩しい状態となっていました。建物や周囲の状況が把握しにくいという、日本の夜の典型的な光環境でした。こうした環境を改善するため、道路と連続する空間の境界部分である、建物際や駐車場などに照明を設置し、街の奥側にある暗闇を無くすことで、歩行者の安心と防犯性を高めることを目指しました。
・気仙沼駅前商店街(商和会)商店街灯リニューアル計画
http://www.bonbori.com/pj/2_m/kesen_syouwa/index.html
研究の背景
現在、小林 茂雄と角舘 政英は東日本大震災支援として、あかりからのまちづくり、高台避難誘導照明環境整備の活動を、釜石市東部地区、岩手県陸前高田市、いわき市久ノ浜地区にて活動を行っています。
気仙沼市では内湾地区を中心に2014年から景観に配慮した高台避難誘導を促進する照明社会実験と評価を行ってきました。実験を受けて、内湾地区復興まちづくり協議会、阿部俊彦(早稲田大学都市・地域研究所)と連携し、2017年5月に市長に全体方針を説明。その後これまでに、防潮堤や公園、周辺道路、災害公営住宅、商業施設、公共施設などにおいて統一した夜の照明環境の改善をしています。
今回の気仙沼駅前商店街(商和会)では、「商店街再生加速化支援事業費補助金(県・市)」を活用し、安心・安全な地域づくりと、地域に密着した商店街として子どもから高齢者まで幅広い世代の交流を促す「気仙沼あかりものがたり」の一環として街あかりの整備を実施しました。
研究の社会的貢献および今後の展開
照明の電源は既存の商店街灯から供給することを基本としながら、建物側などの民有地に照明灯を設置しました。既存の商店街灯は22灯(29W×2)、新設の照明灯は64灯(4~10W)であり、25種類の照明器具を各場所に合わせて選択して配置。また民地側と協力し、駅前ホテル(パールシティ)の駐車場は既存の7灯の水銀灯照明を10WのLED照明に変更しました。リニューアル範囲全体で、道路の路面平均照度が7.1ルクスから3.8ルクスに下げ、電気使用量も改修前の約4/10となり、大幅なエネルギー削減を実現しました。
リニューアル前後でアンケートを行った結果、照度が下がっても「明るく感じる」「安心感がある」「雰囲気が好き」の全ての項目で評価が上昇しました。歩行性能と運転性能(歩行者への危険予測)も共に向上。特に夜間に帰宅する高校生からは、「暖かい雰囲気になった」「ゆっくり歩いて帰るようになった」「明るくなった」など好意的な意見が得られました。道を中心に照らすことが安心・安全になるのではなく、道周辺の暗闇や建物を照らすことが防犯の向上になることが示されました。また、市との協議のもと利用者の意見が反映された景観整備を行うことができました。
今後は、気仙沼駅前広場公園、駅舎周辺の照明環境整備を目指し、気仙沼のさらなる安全性向上を目指します。
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)