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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)工学部 機械工学科の大塚 年久教授らは、水道管などで用いられている配管の減肉部位置と肉厚を、簡便かつ即時に測定できる技術を開発しました。
従来の測定方法は、管の表面を磨く等の前処理が必要な超音波探傷法などで、作業者の手間と熟練が必要とされ、測定には長い時間と多くの費用を要していました。
今回開発した技術は、多くの配管に用いられている非磁性のステンレス鋼製を対象とし、管の2点に針を立て、その間に通電することによって、配管表面に生じた磁束密度を測定し、得られたデータから配管減肉部の位置と肉厚を探知するものです。リアルタイムでの測定のほか、実用化に向けてサイズをタバコケース程度にした上、コスト面でも超音波探傷法の10分の1程度まで低減が見込まれます。
今後は、検査会社等との連携を図り、同技術を蛇型ロボットに組み込むなどして、例えば人が近づくことができない原子力発電所内等での活用も含めた実用化が期待されます。
本研究のポイント
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時間をかけずに配管減肉程度の把握が可能
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測定における手間と経験も軽減
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装置の構造が簡単で、小型かつ持ち運びも容易
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超音波探傷法の10分の1程度までコストを低減
概要
東京都市大学 工学部 機械工学科の大塚年久教授らは、ステンレス鋼材製の配管表面に電気を流し、そこから発生する磁束密度(※1)を測定して、得られたデータから逆解析的(※2)に配管減肉部の位置ならびに非破壊同定する技術を開発しました。
主要な配管の多くは磁場を吸収しない非磁性のステンレス鋼製のため、図1のように2点に針を立ててその間を通電することによって、管の表面に発生する微弱な磁場を外部に取り出すことが出来ます。
本測定法では、その微弱な磁場をさらに高透磁率材料(※3)を組み合わせることにより増幅させ、その磁束密度を測定することで、リアルタイムに減肉部の位置や、肉厚を予測することが出来ます。図2は実験室レベルの様子を示します。装置の構造は簡単なため、実用化に向けてタバコケース程度の寸法にできるほか、従来の超音波探傷法を用いる装置に比べて価格を10分の1程度にできるとみています。この技術を図3のような蛇型ロボットに組み込めば、端子が自動的に管外部を移動できるので、人が近づくことが出来ない原子力発電所内の配管の厚さを連続的に測定できるようになると期待しています。
研究の背景
近年、産業構造物等の老朽化や整備不良による事故が多発しており、事故防止や長寿命化のための技術的なニーズが急速に高まっています。特に配管や破裂を未然に防ぐことは、構造物全体の事故防止や長寿命化を図る上で不可欠です。一方、配管の材質はここ数年、原子力発電所で主に、ステンレス鋼を用いた配管が設置、整備されています。これはステンレス鋼製配管が、他の材料でできた配管に比べて内部の流体のエロージョン(※4)・コロージョン(※5)に対する耐食性が高いことや、ステンレス鋼材の中でも特に廉価であるためなどが考えられます。しかしステンレス鋼管も特に曲がった部分の内側が流体によって薄くなり、破断事故の原因となります。配管を健全な状態に保つために老朽化した部分の交換が必要となりますが、交換時期を決定するには、配管の断面寸法、すなわち、減肉部での厚さを管理することが重要となります。
従来は、管表面を磨く等の前処理が必要な超音波探傷法により、手間と経験が必要とされる方法で診断をしていましたが、今回開発した方法は、配管表面に電極を立てて通電し、生じた磁束密度を測定するシンプルな技術であり、管の表面を磨く必要もありません。そのため簡単で時間をかけずに配管減肉の程度が把握できます。
研究の社会的貢献および今後の展開
この技術をロボット研究者と組んで蛇型ロボットに組み込めば、端子が自動的に管外部を移動でき、人が入るスペースがない場所や、放射線量が高く近づくことが出来ない原子力発電所内の配管の厚さを連続的に測定できるようになります。検査会社に技術を紹介し、実用化されることを期待しています。
用語解説
※1 磁束:
その場所における磁場の強さと方向を、線の束で表したもの。
※2 逆解析:
原因から結果を導く普通の因果律の解析(順解析)とは逆の結果から原因を推定する解析のこと。
※3 高透磁率材:
透磁率が高い材料で一般に純鉄や炭素含有量が少ない軟鋼がそれに相当します。
※4 エロージョン:
機械的に起こる研磨作用。
※5コロージョン:
錆る作用
共同研究者
東京都市大学 工学部 機械工学科 准教授 岸本 喜直
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)