東京都市大学 研究者一覧
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TCU Research Directory 113 准教授 古川 務法 学 新領域法学所 属環境学部環境マネジメント学科所 属研究室環境政策分野 古川研究室(環境法政策)H P─分 科細 目研究内容と目指すもの生物多様性条約は2000年に開催されたその第5回締約国会議(COP)で生態系アプローチに関する決定を採択した。この決定は、生態系アプローチを「土地、水および生物資源の統合的管理戦略」とし、12の原則を示している。すなわち、①資源管理目標は社会的選択事項である、②もっとも下位の適切なレベルで管理される、③他の生態系に対する影響を考慮する、④経済的観点から生態系を理解および管理する、⑤生態系の構造および機能の保全を優先目標とする、⑥生態系の機能の範囲内で管理されなければならない、⑦適切な空間的および時間的範囲で実施される、⑧変化する時間的尺度および時差効果を考慮して長期目標を設定する、⑨管理は変化が不可避であることを認識しなければならない、⑩保全と利用の適切なバランスおよびそれらの統合を追求する、⑪科学的知識等のあらゆる関連情報を考慮する、⑫関連するあらゆる社会および科学部門が関与する、である。これらは国際社会に広く受け入れられているものであるが、原則として法的拘束力を有しない。したがって、その受容方法や実施確保が課題となる。これまでの研究では、生態系アプローチの適用状況につき、国際的漁業管理、地域的(環日本海)な沿岸域管理、エコロジカルネットワークの形成等を通じて確認し、その課題等を抽出した上で、一定の提案を行ってきた。今後も基本的にはこの方向性を維持し、生態系アプローチの適用状況を研究するとともに、その原則の国内法制への応用の必要性、妥当性等を明らかにし、関連する法律の改正提案を行っていきたいと考えている。1生態系アプローチの手続的側面の法制化に関する研究最近の研究テーマ2業績・プロジェクト・産学連携等3「生物多様性保全と土地利用規制~土地利用基本計画によるエコロジカル・ネットワークの形成」(日本土地環境学会誌、第21号、2014年) など 15件論 文「アメリカにおける生態系サービスへの支払い(PES)の動向」(平成26年度諸外国における環境法制に共通的に存在する基本問題の収集分析業務報告書、2014年) など 13件研究報告(環境省委託研究)1. 科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))期 間:平成14年度・平成15年度研究課題名:ヨシ原をめぐる地域環境のグランドデザイン構築研 究 成 果:�分担研究者として、生態系管理取組を踏まえて、グランドデザインを提案した2. 環境研究総合推進費期 間:平成22年度~平成24年度 研究課題名:�D-1005生態系サービスからみた森林劣化抑止プログラム(REDD)の改良提案とその実証研究研 究 成 果:�分担研究者として、生態系アプローチをもとに、正当なREDD+事業であるか否かを判断する基準・指標を整理し、劣化抑止プランをまとめた外部資金最近の論文で、生態系アプローチの原則を実体的側面に関する原則と手続的側面に関する原則に区分し、手続的側面の先行適用を検討することが合理的である旨指摘した(「REDD+活動に対するセーフガードと生態系アプローチ」(『東京都市大学環境情報学部紀要』、第14号、2013年)。生態系アプローチの実体的側面に関する原則(原則3、原則4、原則5、原則6、原則8、原則9、原則10)とは、生態系が全体として保全された状態を結果的に導き出すことを求めている原則群であり、手続的側面に関する原則(原則1、原則2、原則7、原則11、原則12)とは、実体的な原則群に基づく諸決定を行う前提条件または枠組を整備することを求めている原則群であるとして、後者の先行適用を提案した。もっとも、原則6に含まれる「予防的アプローチ」や「順応的管理」といった考え方は、手続的側面に関連するかもしれず、この区分自体も引き続き検討していく必要がある。生物多様性条約に基づく決定では、生態系アプローチの原則の一括適用を求めているので、その部分的適用を求めるためには相応の合理的根拠が必要である。生態系が保全された状態を導き出すことやその状態を正確に評価することについて、科学的にかなりの困難を伴うであろうことから、生態系管理の意思決定手続の適正化を先行させる必要性があると上記論文において指摘したが、こうした区分の合理的根拠はいっそう明確化されなければならない。さらに、手続的側面の実施確保を果たすことで、結果的に実体的側面をも充足し得る可能性についても検討してみたいと考えている。これらの検討を踏まえて、手続的側面の法制化に関連する具体的な提案を行っていきたい。社会科学生物多様性の保全と利用生態系アプローチ予防的アプローチ順応的管理エコロジカルネットワーク研究者情報

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