東京都市大学 研究者一覧
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TCU Research Directory 123 教 授 川村 久美子社会学 社会学所 属メディア情報学部 社会メディア学科所 属研究室川村研究室(持続可能な社会)H P─分 科細 目研究内容と目指すもの持続可能な社会の構築に向けた近代政治経済思想の批判的研究。社会的不公正、環境破壊、成長至上主義などの現代的問題に対して、「普遍主義の危機」という観点から社会学的分析を試み、解決法を提示するのが川村の研究目標である。1最近の研究テーマ2業績・プロジェクト・産学連携等3Environmental Network to Promote "Green" Markets, Information Media Journal, 2004 など 論文27件論 文発達科学研究教育奨励賞(発達科学研究教育センター)、Young Psychologist Award(日本心理学会)受 賞科学社会学者のなかに、「科学的実在論」(科学を真理についての記述とみなす)は一つの言説に過ぎないという考え方が広がっている。もっとも実在論は依然として一般には常識であり、そのために「自然という共有世界はすでに与えられており根本的な所で紛争は存在しない」と広く判断され、利害関係者の間に調整的議論が必要なのにもかかわらずそれを省略したり、省略の事実を不可視化したりする事態が生じている。これを「普遍主義の(がもたらす)危機」とみなすことができる。川村は「普遍主義の危機」が多くの現代的問題に内在していると見て、例えば次のような分析を行っている。かつて啓蒙思想家は人間の自然状態を「万人の万人に対する闘争」と断じ、それを生物の生存競争になぞらえた。そして生存競争が進化を引き起こすように市場競争は進歩を引き起こすと議論した。政治経済的議論は生物学に重ね合わされ、市場競争が「自然化」されたわけだ。その結果、市場の自由化は基本的に善だとされ、市場をどう組織すべきかについて市民にまで開かれた議論がされたことはない。加えて啓蒙思想家は、身体は自然法則下にあるものの人は理性(精神)を発達させ自然を乗り越えるとした。人類共通の特徴としての理性に「人間の自由」の根拠が求められた。こうして近代に特徴的なもう一つの普遍主義、理性の万能視が生まれた。その結果、様々な社会問題の解決法として個人内部の変化(個人責任の強化、個人の意識改革など)が強調されることとなった。そしてそれは十分な実効性を上げていない。最近関心のあるテーマで、同様の観点で分析を行う予定は以下。①環境政策と自然の実在論、②人権政策は社会的弱者救済に有効か、③カントの道徳的責任論をベースとしたコスモポリタニズム政策は有効か、④環境権を憲法の枠組みに取り込むのが難しいのはなぜか。社会科学近 代持続可能な社会科学技術『フェアな未来へ』(2013、翻訳・解題)『虚構の「近代」』(2008、翻訳・解題)『地球文明の未来学』(2003、翻訳・解題)『宇宙船地球号のグランドデザイン』(2013、分担)など 著書13冊著 書研究者情報

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