TCU Research Directory 2023
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秋アキタ田 貢コウイチ一教授熱サイクル前(a)後(b)の溶接部内部残留応力分布236 TCU Research Directory 2023量子ビームを用いた応力評価技術の開発と応用残留応力 / 応力測定 / Ⅹ線回折 / 中性子回折研究テーマキーワード理工学部 機械システム工学科強度設計システム研究室研究室HP研究者情報「残留応力」は、外力が作用しない状態で物体内に存在する応力です。残留応力は、疲労強度や応力腐食割れなどの材料の強度特性に影響します。したがって、電子デバイスのような小さなものから自動車、航空機や発電プラント構造物のような大きなものまで、あらゆる機械・構造物の強度信頼性確保と高最近の研究テーマX線回折を用いることで、結晶材料の応力・ひずみを非破壊、非接触で測定できます。また、回折測定のプローブとして、放射光や中性子線といったいわゆる量子ビームを用いることで、実験室では実現できないようなミクロンメートル領域の微小部応力や、表面から数センチメートル深さまでの深部の応力分布が測定できます。下図は、中性子線を用いて熱サイクル中の溶接部残留応力変化機構を検討した例です。昇温・降温過程の残留応力変化を追跡することで数値解析の結果を支持する実証データが得られ、熱応力による材料の降伏が残留応力緩和を引き起こすことが解明されました。この成果は、発電プラント構造物の安全性確保に役立てられています。研究内容と目指すもの外部資金• 文部科学省科学研究費:基盤研究(B)「残留応力緩和に及ぼす結晶学的微視構造の影響」(H23-25年度),挑戦的萌芽研究「大強度パルス中性子による疲労荷重下の機械内部応力測定システムの開発」(H25-26年度)など• 基盤研究(C)「中性子応力測定の確度向上のための基準格子定数決定法に関する研究」(令和2-5年度)性能化のためには残留応力状態を正確に把握することが極めて重要です。我々は、放射光X線や中性子線等の量子ビームを用いた残留応力測定技術を開発し、それらを用いて機械・構造用材料における残留応力の発生・緩和機構や変形・破壊機構について研究しています。• 科研費以外の競争的外部資金:文部科学省原子力基礎基盤戦略研究イニシアチブ「原子力発電機器における応力改善工法の長期安全性評価のための基盤技術開発」(H26-28年度)など• その他:受託研究、共同研究、寄付金など技術の特徴X線応力測定法における測定プローブとして、実験室Ⅹ線の代わりに、放射光Ⅹ線や中性子線を用いることで、極微小領域や機械深部、また、稼働状態下での応力測定が可能となります。技術の用途機械加工や接合、表面処理などの機械部品の製造条件や熱処理条件が残留応力に及ぼす影響を解明し、それらの条件を最適化することが可能です。高温中や荷重下の機械部品の応力状態を実測できるため、数値シミュレーション技術の検証や高度化に有効です。企業等との連携可能テーマ• 種々の環境下(荷重、高温、低温など)における機械部品等の応力状態の非破壊・非接触測定• 残留応力の発生、緩和機構に関する研究• 残留応力が材料や製品の強度特性に及ぼす影響に関する研究知的財産権・関連論文情報・著書• 特許、特開2005-248291、「低鉄損一方向性電磁鋼板」• K. Akita et al., 溶接学会論文集, Vol. 35, No. 2, 2017, 112s-116s.• 「X線応力測定法標準(2002年版)-鉄鋼編-」、日本材料学会、2002• 「加速器ハンドブック」、丸善出版、2018(分担執筆)

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