TCU Research Directory 2023
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佐サタケ竹 幸ユキノブ信教授脳血流量の変化を示したグラフ:機械翻訳を利用した学習時(線の前)と機械翻訳を利用しない(自分で英文を作る)学習時(線の後)でブローカ野の血流量が後半少し上がっていることが分かる。機械翻訳を使用しなかった場合の脳血流量の変化機械翻訳の研究成果をまとめた拙著(2022年出版)278 TCU Research Directory 2023機械翻訳の使用が日本人の英語学習に与える影響の脳科学的研究機械翻訳 / 英語ライティング学習 / 脳機能イメージング / 近赤外線分光法(Near infrared spectroscopy(=NIRS))研究テーマキーワード共通教育部 外国語共通教育センター佐竹研究室研究者情報最近の研究テーマGoogle Translate、DeepL等、2010年代に入ってからの機械翻訳の性能の向上は目覚ましいものがあります。その背景には人工知能(AI)の導入があります。従来のrule-based型では人間が都度情報をアップデートしなくてはなりませんでしたが、この種の機械翻訳は自分で学習する、深層学習が可能となりました。特に2022年にプロトタイプとして公開されたChatGPTは、日本語を英訳するだけでなく、トピックだけ与えて英文エッセイを作らせる等もでき、かつビッグデータに基づいたその英文は様々な表現に富み、文法もかなり正確です。本研究は、そういった機械翻訳が示す英文を一つのロールモデルとして、日本人の英語教育、特にライティング教育に有効に利用し得る方法を模索することをテーマとしています。研究内容と目指すもの被験者を機械翻訳を利用して学習するグループと利用せずに学習するグループとに分け、それぞれ学習時の脳血流量をNIRSを使用して測定します。その結果、ブローカ野(文の統辞構造を司る脳の領域)の脳血流量は後者のグループの方が高かったですが、他の領域では前者のグループの方が高い可能性が出てきました。将来的には、前者のグループの脳血流量が高いと予想される領域を同定し、(どの領域の脳血流量が高いかが分かれば、どういった言語的特性(統辞、語彙、音韻等)に脳が使用されているかが分かるので)機械翻訳の使用がどういった言語的特性の習得に有効(或いは有効でない)かを特定し、機械翻訳を利用するパターンと利用しないパターンを効果的に融合させた指導スタイルを確立することを目指していきます。また、上記の内容が英語習熟度によって異なる様相を見せるかについても考察の対象としていきます。外部資金• 科研費 若手 2019~2022年度「機械翻訳をめぐる日本の英語教育の新たな可能性の探求ーライティング指導の観点から」(研究代表者)研究の特徴従来の機械翻訳の使用が外国語学習に与える影響を扱った研究は、一過性の機械翻訳の効用(テストのスコアや被験者の印象)を論じたものが大半でしたが、本研究は第二言語習得研究で得られた知見を基に、脳機能イメージングの観点から学習過程の認知プロセスに焦点を当てた点が特徴的です。研究の内容被験者を機械翻訳を利用して学習するグループと利用せずに学習するグループとに分け、それぞれ学習時の脳血流量をNIRSを使用して測定します。その結果、ブローカ野(文の統辞構造を司る脳の領域)の脳血流量は後者のグループの方が高かったですが、他の領域では前者のグループの方が高い可能性が出てきました。企業等との連携可能テーマ• 脳機能イメージングを利用した外国語学習の認知プロセスの解明• 脳機能イメージングを利用した外国語学習における機械翻訳の利用可能性の探究• 脳機能イメージングを利用した一般言語使用の認知プロセスの解明知的財産権・関連論文情報・著書• Satake, Y. (2022). Second Language Acquisition and Machine Translation. Aoyama Life Shuppan.• 佐竹幸信 (2018).「The Potential of Utilizing Machine Translation in EFL Japanese University Writing Classes」『比較文化の語らい』, 24-34.

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