TCU Research Directory 2023
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CASE 01Research Unit先端食品プロセス研究ユニット人生100年時代の栄養機能性食品を開発多糖類ポリイオンコンプレックス微粒子を利用した高齢者向け栄養機能性食品の開発と消化シミュレーション▪ 理工学部 応用化学科 教授 黒岩 崇(ユニット長) ▪ 理工学部 機械システム工学科 准教授 白鳥 英多糖類(キトサン)と脂肪酸(オレイン酸)の複合化により形成される多糖類ポリイオンコンプレックス(PIC)微粒子の模式図と作製したPIC微粒子分散液の外観。PIC微粒子の電子顕微鏡写真。TCU Research Directory 2023 5 新しい機能性食品開発技術で 健康長寿に貢献 2050年以降、日本の人口に占める65歳以上の割合は40%に達するとの予測があり、人生100年時代の到来も目前に迫っています。食事による栄養機能成分、とくに抗酸化成分の摂取は、がんや心疾患を予防する効果があることが判明しています。 本研究では、高齢者が脂溶性ビタミンやポリフェノールなど、水に溶けにくく、体に吸収されにくい栄養機能成分を効率的かつ効果的に摂取できる栄養機能性食品の開発を目指しています。具体的には、①多糖類ポリイオンコンプレックス(PIC)微粒子への栄養機能成分の内包化技術の開発、②高齢者向け食品を想定したPIC微粒子分散液の物性制御、③消化シミュレーターを用いた消化特性の評価を行うことで、咀嚼や嚥下、消化などの機能低下が見られる高齢者の身体に合わせた新しい食品開発につながる技術の確立などにつなげたいと考えています。 独自開発したPICの有効性を実証 本研究で開発した独自の多糖類PIC作成技術を用いて難吸収性栄養機能成分を包み込み、粒子特性や安定性を調べたところ、常温で長期間安定な状態を維持することを確認しました。併せて、各種の機器分析手法を駆使し、独自開発したPIC微粒子による難吸収性成分の保持メカニズムを明らかにするなどの成果を得ています。高齢者向け食品の開発に向けて、栄養機能性の強化とおいしさの向上にも寄与する基盤技術として、このPIC微粒子の有効性を示すこともできました。 また本研究で開発したPIC微粒子と可食性の高分子の水溶液を混合することで、素材単独では見られないユニークな増粘性や力学特性が見られることを初めて発見。栄養機能を高めた高齢者向け食品の開発に、このPIC微粒子の有効性を示し、高齢者が咀嚼せずに摂取できるサプリメントの作成を目指して、PIC微粒子を含むフィルム素材の開発を行い、高品質なフィルム製造につながる重要な設計指針を得ました。 その消化特性についても検討し、口腔、胃、小腸における模擬消化実験を通して、PICの有効可能性を明らかにしています。以上の成果の一部を論文および国際会議を含む関連学会において発表しました。 難吸収性栄養機能成分の効率的な送達に貢献する食品の開発は、健康寿命の延伸に大きく貢献するものであり、高齢化先進国と言えるわが国においては急務です。本研究の成果をさらに発信していくことで、その社会的意義を広くアピールしたいと考えています。

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