TCU Research Directory 2023
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CASE 03Research UnitソーシャルVR研究ユニットコミュニケーションインフラとしてのメタバースの可能性コミュニケーションインフラとしてのメタバースのためのノンバーバルキューの提示手法の確立とその応用▪ デザイン・データ科学部 デザイン・データ科学科 教授 市野 順子(ユニット長)▪ メディア情報学部 情報システム学科 教授 宮地 英生▪ メディア情報学部 社会メディア学科 教授 岡部 大介 ▪ 人間科学部 人間科学科 准教授 宮川 哲弥▪ 岡山理科大学 経営学部 経営学科 准教授 横山 ひとみ ▪ 工学院大学 情報学部 コンピュータ科学科 准教授 淺野 裕俊▪ TIS株式会社 戦略技術センター 主査 井出 将弘 / 上級主任 芳木 武仁TCU Research Directory 2023 7 コミュニケーションインフラとしての メタバースの可能性 3次元バーチャル空間であるメタバースでの対話は、交換されるノンバーバルキュー(外見、視線、顔の表情、ジェスチャー、声量等)が多く、リアルタイムに環境を再構築できるため将来性があります。このことから、メタバースでノンバーバルキューの情報をユーザーにどのように提示すべきかという疑問が生じます。社会におけるコミュニケーションの重要性および急速に進む社会のデジタル化をふまえると、今や講義・会議・展示会・懇親会等様々なシーンで利用されるようになったビデオ会議(例:Zoom)と同等あるいはそれ以上にメタバースが利用されるようになる前に、この疑問を明らかにしておく必要があります。 以降では、本重点推進研究期間(2022年8月~2023年3月)で実施した3つの研究テーマのうちの一つである、メタバースで視線のキューの情報をどう提示するかを探求した研究について紹介します。 視線の可視化とインフォーマル コミュニケーションの誘発 インフォーマルコミュニケーションは、しばしば課題解決のヒントの発見やイノベーションの創出のきっかけとなります。しかし、インフォーマルコミュニケーションが生じにくいとされるデジタル空間での活動時間が急増した現在、日常生活全体で人々のイ(左)シャボン玉が視線の送り手から視線の受け手に向かって流れている(右) 視線の送り手のミニチュアのアバターが視線の受け手の目の前に現れているンフォーマルコミュニケーションの機会が急減しています。本研究は、コミュニケーションの開始時に重要な役割を果たしているとされる視線に着目し、メタバースにおいて本来見えない視線を可視化することで、インフォーマルコミュニケーションを誘発することを試みました。 3つのスタイルの視線の可視化(矢印、シャボン玉、ミニチュアのアバター)を実装し、この3つの可視化された視線と、可視化されない視線を比較するユーザー実験を行った結果、すべての可視化された視線は、可視化されない視線よりも効果的にインフォーマルコミュニケーションを誘発することがわかりました 。特に、シャボン玉の場合、他のスタイルよりも、ユーザー間の会話(言語によるコミュニケーション)を誘発する確率が高いことが示されました。

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