都市工学専攻 Civil Enginnering
専攻の特色
都市は政治・経済・地域社会の発展や盛衰とともに変遷する。その膨張・発展期では「建設」が主流となり、成熟期には「よりよい環境」、「都市の改造」、「施設のリニューアル」、あるいは「強い防災力」が社会から強く要請される。わが国の現代都市の有り様を反映した研究・技術開発が求められていることから、都市工学専攻では、学科目として、「構造安全工学」、「災害軽減工学」、「地盤環境工学」、「水圏環境工学」および「計画マネジメント」を用意して、以下の研究課題に取り組んでいる。
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陸水・海水域および地盤に関わる環境問題解決のための研究開発
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地震・風水害などの自然災害に対する都市防災技術開発
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都市・地域計画に関わる研究開発
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都市基盤施設の更新・マネジメントに関わる研究開発
学習・教育目標と育成する人材目標
学習・教育目標
都市工学の使命に基づく、本専攻の学習・教育目標は以下の通りである。
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地球人としてのヒトの理解、人間社会活動とヒトとの関係の幅広い理解を高め、地球的視 点から、多面的に物事を考える能力とその素養を身につける。
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「公正、自由、自治」という東京都市大学の建学の精神を理解する。また、都市工学技術者としての社会的使命を理解するとともに、技術が社会や自然に及ぼす効果、技術者が社会 に負っている責任、すなわち技術者倫理について理解する。
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都市の刷新・再生、都市環境の改善・創造を進め、地域の特色を踏まえた安全で快適な都市の構築と持続的維持の中核を担う技術者としての、素養を習得する。
育成する人材目標
本専攻の学習・教育目標および人材育成目標は、都市型社会を支える建設技術分野の多面的かつ高度な技術を駆使し、責任ある業務を担える人材として社会で活躍できる素養を養成するために定められている。都市工学専攻では、橋梁やトンネルなどの都市基盤施設の構造物設計・施工を担う「もの造り」の建設技術者、計画・環境・防災・各種マネジメントなどに従事する都市技術者、海外プラント建設や海外プロジェクトに参画し活躍できる技術者、あるいは国内外の研究機関や大学で建設技術に関わる研究開発を推進する研究者・研究技術者として社会に貢献する人材育成を目標としている。
学位授与の方針
修士課程においては、次のような資質を持った人材に対して修士(工学)の学位を授与する方針である。
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大学院修了生レベルの数学、物理学および専門科目を習得し、それを応用できる能力を有すること。
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高度情報化社会に対応できるように情報処理の知識と技術を習得していること。
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プロジェクト科目により、都市施設の設計、都市のデザイン、環境、防災に関する応用力を習得していること。
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都市工学が抱える問題に対して、自主的に課題を探求し、専門知識、技術を総合して解決するエンジニアリングデザイン能力を習得していること。
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大学院修士課程レベルのプレゼンテーション能力、語学力を十分に修得し、コミュニケーションのための能力を有していること。
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社会の要請に応じた事業を計画し、実施管理し、説明責任を果たすといった実務上の問題を理解し対応する基礎を習得していること。
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制約のある中で計画的に対処し成果をまとめ、実社会に進んでからも吸収力、応用力のある心身堅固な技術者の素養を習得していること。
学科目 研究内容
構造安全工学 Structural and Safety Engineering
都市基盤はハードである構造施設と、ソフトである施設・仕組み等の運用とから成り立っている。ハードの構造施設を計画・設計・施工・維持管理するには、各種の計算機ソフトなどのソフトが重要な役割を担う。新交通システムなどの仕組みを適切に運用するためには、当然ハードの構造施設が必要である。本学科目では、持続可能で安全な社会を構築するための構造工学の課題を、耐震工学、安全工学、維持管理工学を十分踏まえつつ、探求する。
災害軽減工学 Disaster Mitigation and Reduction Engineering
現代都市は、都市基盤施設、生産施設、商業施設が高度化/集積化される一方で、各種災害に対してなお脆弱であり、各種の都市型災害が警鐘されている.本学科目では、地震災害・火災被害を中心として、耐震技術、防災技術、災害軽減技術について、調査・研究するものである。
以下に、具体的な研究項目を列挙する。
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鉄道/道路を対象とした耐震設計/耐震補強の解析的検討と事例解析
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地震リスク評価に関する、解析手法の構築/各種構造物への適用/リスクの可視化
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鉄筋コンクリート部材の耐荷力と非線形挙動に関する実験的・解析研究
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高じん性セメント複合材料の力学および、ひび割れ閉塞特性の把握と補修・補強材料としての適用
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高温曝露されたコンクリートの力学特性の変化とその後の強度回復性能の評価
これらの成果は、更新期にある膨大な公共施設/都市施設 (Infrastructure) に対する適確なリスク評価、設計・施工・維持管理への応用に直結するものである.加えて、本学科目では、上記研究項目の専門家を招聘し、実践的なアドバイスを受けている。
地盤環境工学 Geotechnical & Geoenvironmental Engineering
地盤は都市を構成する構造物の基礎であり、あるいは災害リスクの大きさを決める要因でもある。また、豊かな都市環境を創出する要素でもある。本学科目では、地盤環境に関する課題及び液状化や斜面崩壊といった防災上の重要な課題について研究している。主な研究テーマは要素試験や遠心載荷実験による
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砂の液状化対策工法の開発
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地震時の基礎杭の支持力・水平挙動の解明
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宅地の安全性や防災上の観点を重視した価値を評価するためのハード・ソフト技術の開発
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地中熱を利用した杭の評価や新技術の開発
などである。
水圏環境工学 Water Environment Engineering
水域における水環境および上下水道などの都市における水循環システムについて広く扱う。
具体的には以下の通りである。
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膜を利用した浄水処理・排水処理技術
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水道配水管内における水質変換機構
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市民の飲料水選択に及ぼす心理的要因の解明
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上下水道システムにおけるエネルギー消費量の定量化
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沿岸域における水質浄化機能
計画マネジメント Urban Planning and Management in Civil Engineering
本学科目では、都市計画や各種マネジメントに関わる教育・研究を行う。具体的テーマとしては、人口減少下における総合的な土地利用計画、防災の観点も踏まえた土地利用計画、社会基盤施設の建設マネジメント、インフラマネジメント、リスクマネジメント、アセットマネジメントに関する研究などが挙げられる。
進路/職業
修了後の進路/職業としては、各履修モデル共に、
総合建設業、専門建設業、鉄道・電力等公益企業、建設コンサルタント、公務員等に活躍の場が存在する。