機械工学専攻 Mechanical Engineering
専攻の特色
機械工学専攻は基幹となる力学系4分野である材料力学、機械力学、内燃機関工学(熱力学)、流体工学(流体力学)に、材料、加工に関する機械材料学、精密加工学を加えた6学科目で構成されており、ものづくりの基盤技術である機械工学に関する幅広い研究領域をバランスよく含んでいる。各学科目では、現代の高度化・複雑化した技術開発に対応するため、俯瞰的な視野を持った創造的な研究・教育を重視している。
修了後の就職業種先は広く、職種は研究職、開発職のほか、製造現場、営業、公務員など多岐にわたる。修了生は課程において身につけた能力を活かし、多くは高い専門性をもつエンジニアとして活躍している。
学習・教育目標と育成する人材目標
学習・教育目標
機械工学はものづくりの基盤技術であり、先進的技術の多くは機械工学に負うところが大きい。そのため本専攻では、機械工学に関する高度な理論や専門知識と技術を体系的に修得させるとともに、実践となる研究活動を通して、次にあげる目標のもとで教育を行う。
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工業製品やその生産が自然や人間社会に及ぼす影響について考えることができ、また負っている責任に関して理解しながらものづくりができる能力を育成する。
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自己の知性を磨き、技術者としてのあるべき姿を模索しながら専門領域を深めるための持続可能な自律的学習能力を育成する。
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論理的に物事を考え、記述し、説明できる能力、またグローバルな世界で活躍できるコミュニケーション能力を育成する。
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選択した学科目に関連する専門知識を修得し、問題解決への応用ができる能力を育成する。
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選択した学科目における研究を遂行することにより、自ら問題を発見し、それを解決するためのプロセスを計画的に進め、結果を工学的に考察できる能力を育成する。
育成する人材目標
学習・教育目標に掲げた教育を行うことによって、次にあげる人材の育成を目標としている。
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機械工学の高度な知識を持ち、社会の発展に貢献できる技術者・研究者
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科学技術と社会の接点を理解し、社会に対する責任を理解できる技術者・研究者
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自分の考えを論理的にまとめ、記述し、説明できる技術者・研究者
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専門知識を獲得するための自律的学習能力を持つ技術者・研究者
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制約がある条件のもとで着実に課題を遂行できる技術者・研究者
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自ら問題を発見し、それを解決するためのプロセスを計画的に進め、結果を工学的に考察できる技術者・研究者
学位授与の方針
修士課程においては、次のような資質を持った人材に対して修士(工学)の学位を授与する方針である。
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機械工学分野において修得した高度な専門知識と研究能力を用いて問題点や課題を発見し、その具体的な解決方法を見出すことができる能力を有すること。
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制約がある条件のもとで着実に課題を遂行できる能力を有すること。
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自分の考えをまとめ、論理的に説明できるコミュニケーション能力を有すること。
学科目 研究内容
機械材料学 Engineering Materials
現代の高度化・複雑化した、広義の「機械」に求められる、多様な特性・機能性を発揮する材料の創製および評価手法の開発等を中心に研究を行っている。具体的には、粉末冶金法を用いた高硬度耐摩耗材料の創成や特性評価、構造部材の疲労強度・破壊靱性評価および機能性表面改質材料の評価法、さらには、熱電エネルギー変換材料やナノ構造を持つ無機有機ハイブリット材料などを扱い、現代の産業において広く求められている重要な材料特性から、今後の産業界に対するシーズ技術となるトピックスまで幅広い視点から研究を推進している。
流体工学 Fluid Mechanics
流体の性質とその運動に関する諸問題を研究する。研究の対象は、流体の運動に伴う種々の現象の解析と、それらを応用した機械・装置の開発に分けられる。特に、研究手法として流れの可視化技術を用いた流路内流れや容器内流れ等の解析、微小流路内流れ等を応用したマイクロ流体デバイスの開発、噴流を利用した流体制御技術の開発に特化した研究を行う。
内燃機関工学 Internal Combustion Engines
内燃機関は自動車、船舶の原動機など多方面で活用されており、人類にとって不可欠な存在であるが、燃費の低減、有害排出ガスの低減、耐久性の向上、騒音の低減などの要求も厳しい。当研究室では、エンジンの熱効率向上・CO2削減を主な目的として研究を進めており、世界に先駆けた特殊な計測装置を独自に開発し、内燃機関に組み込んで実験検証やその解析モデルの開発を推進している。エンジンの主要部品であるピストン、ピストンリング、滑り軸受などのしゅう動面の潤滑の研究では、薄膜型センサーや浮動ライナー法及びレーザー誘起蛍光法などの特殊計測法により、摩擦損失・摩耗・オイル消費のメカニズムの解明とこれらの低減研究に取り組んでいる。また、特殊な薄膜温度センサーの開発により、エンジン燃焼と熱損失のメカニズム解明及びその低減研究を推進しており、これらの研究により、世界で推進される地球環境を守るための更なる高熱効率エンジンの開発に大きく寄与する研究を常に推進している。
材料力学 Elastic Analysis and Strength of Materials
各種の機械や航空・宇宙関係構造物の性能向上のために、複合材料やハニカム・サンドイッチパネルのような複合構造が積極的に用いられている。ここでは、その力学的特性や疲労・強度に関する研究を行っており、手法としては静的強度実験や衝撃・疲労等の実験を行っている。また、航空機や自動車等に負荷される実働荷重下の疲労寿命予測を簡便かつ精確に行う方法の提案、逆問題解析技術を応用した材料特性・内部欠陥の非破壊同定や最適化設計に関する研究も行っている。
機械力学 Machine Dynamics
機械構造物や人体に対する衝撃応答の例として、自動車衝突時の車両と乗員の挙動や車体内を伝達する荷重経路を解析する。これにより乗員や車体の安全条件を求めることを目標とする。また、衝突時の乗員の安全保護装置への油圧制御手法の適用、ITSに関する研究および機械振動制御に関する研究なども行っている。解析手法としては数学、物理学をはじめ、電算機シミュレーションと模型シミュレーションを主に用いるが、人間の臓器に代えて豚の内臓などを利用した生体力学的実験も考えている。
精密加工学 Precision Machining
生産加工技術の高度化に伴い、機械材料に対する超精密かつ高能率加工はもちろんのこと、材料表面の改質による高機能性表面の創製も要求されている。したがって、これまでの精密機械加工技術と、材料表面の改質技術や各種機能性の付与技術を複合させるような、新しい加工技術の開発が強く望まれている。
そこで、本学科目においては、砥粒加工といった機械的除去加工を始めとし、金属材料の電気化学的加工、各種表面処理、表面改質、腐食・防食に関連する研究を行っている。また、これらの加工には環境負荷の大きな薬剤も使用するため、これに関連して廃棄物の無害化・リサイクリングの研究にも重点をおいている。