自然科学専攻 Natural Sciences
専攻の教育目標
専攻の教育目標
科学技術が高度に専門化し細分化された現代社会においては、自然科学全般を俯瞰し、自然界の普遍的な真理を探求できる人材が求められている。本専攻では自然科学の基礎研究に従事する研究者養成に重点を置く。
本専攻では、物理学、化学、生物学、地球科学、天文学、数学等の領域の基礎的な諸問題を研究対象とする。本専攻の研究展開において主軸とするのは、宇宙が誕生して太陽系や地球が形成され、地球上に生命が誕生して生物がさまざまに進化してきた130億年におよぶ時間の流れであり、素粒子から宇宙空間までの空間の広がりである。このため、本専攻において研究対象とする中心的な学問分野は次のとおりとする。
物理学領域(量子力学、原子核物理学、溶液科学、高分子科学、生物物理学)
生物学・化学領域(進化生物学、分子生物学、天然物化学)
地球科学・天文学領域(惑星科学、地質学、古生物学)
数学(代数学、幾何学、解析学)
育成すべき人材
育成すべき人材
物理学、化学、生物学、地球科学、天文学、数学などの学問分野における深い専門的知識と高度な研究能力を活用して自然科学における本質的な諸問題を理学的視点から探求し、自然科学の学術的進歩に貢献するとともに、学術研究を通して涵養された自然科学に関する総合的な見識と健全な判断力を活用して複雑化し多様化した現代社会において科学と社会の架け橋となり、社会の発展と人類の福祉に貢献する人材を育成することを目的とする。
修士課程のポリシー
修士課程のポリシー
ディプロマポリシー |
||
自然科学の基礎研究に関する専門知識と研究手法を活用し、自然界の普遍的な真理を探求する能力を修得している。 |
他分野の研究者と交流して学際的研究に貢献する能力、複雑な自然現象を論理的に分析し正確に説明する能力などを習得している。 |
国際化と多様化が進展する現在社会において、他者と円滑に意思疎通ができる普遍 的な教養と社会人としての高い倫理観と健全な判断力を有し、社会の発展と人類の福祉に貢献する能力を修得している。 |
カリキュラムポリシー |
||
物理学、化学、生物学、地球科学、天文学、数学等の領域における専門知識と研究手法が習得できるように教育課程を編成する。 |
自然科学全般を体系的に理解して俯瞰する能力、複雑な自然現象を論理的に分析し正確に説明する能力などが習得できるように編成する。 |
文化的・社会的背景を異にする他者と意思疎通できる普遍的な教養、理解力、思考力、表現力、語学力を習得させ、国際化と多様化が進展する現代社会における社会人としての倫理観と判断力が涵養できるように教育課程を編成する。 |
教育課程表
教育課程表
指導教授別研究内容
指導教授別研究内容
【自然科学専攻 自然科学領域】
【自然科学専攻 自然科学領域】
飯島 正徳
食品や化粧品を初めとするソフトマテリアル(柔らかいもの)は、我々に身近なものとして多く利用されている。このようなソフトマテリアルは複雑な階層構造を持ち、それ故の不思議な性質を示す。その性質の発現機構について主に力学測定や熱測定を中心として研究している。具体的には、口紅の物性に関係する①オイルーワックス系オルガノゲルにおけるカードハウス構造、②デンプン糊化反応における水分量と高次構造、バイオミミクリーまたはミメッティクスに応用可能な③蜘蛛の糸の熱測定、などがある。いずれのテーマも物理的な視点で研究を行っている。
門多 顕司
地球には宇宙空間から宇宙線と呼ばれる高エネルギーの放射線が降り注いでいる。宇宙線の発見からすでに100年以上が経過しているが、その発生源や発生機構は未だにわかっていない。本研究室では、宇宙線が大気に入射した際に生じる空気シャワー現象(多数の2次粒子が大気中に発生する現象)を観測することによって、宇宙線の起源を解明する研究を行っている。
須藤 誠一
地球上で最も豊富な分子種の一つである水は様々な物質中にも存在する。近年の研究では、物質のマクロスコピックな物性や機能性発現には、その物質内部で水が形成している動的な分子集団(液体構造)の状態が関係していることが分ってきた。本研究では、物質内部の水の液体構造と物性発現の関係を明らかにするために、オリジナルの広帯域誘電分光法と自己光混合レーザー計測法を開発してきた。これらの手法を用いて、コンクリートや、木材・樹木、生体、細胞等の様々な機能性物質内部の水の研究を行っている。
中島 保寿
生物は約40億年の歴史の中で姿を変えながら、地球とともに現在の生態系を作り上げてきた。私たち人類の起源を知りたい、と思ったとき、過去にどのような生物がいたのか、彼らはどのような生活をしていたのか、生物の進化・絶滅と地球環境の変化にはどのような関係があるのか、といった疑問にぶつかる。本研究室は、地層に残された生命の痕跡である「化石」を発掘し、分析し、現在の生物と比較することで、生命進化の謎に取り組んでいる。主に、わたしたち人間に近い「脊椎動物」(恐竜、その他爬虫類、哺乳類、両生類、魚類など)を扱っている。
西村 太樹
不安定原子核を生成して利用する加速器実験を通して、原子核構造や原子核反応のメカニズムを解明する研究を行う。重イオンビームや放射線を計測する検出器を開発し、電子回路やデータ収集システムを改良して、原子核反応の断面積やベータ崩壊の半減期や崩壊様式などをより高い精度で系統的に測定する。これらの実験データを解析し、理論計算で予想される結果と比較することで原子核や核力に対する新たな知見を得る。
畑上 到
物理学、生物学、工学の様々な分野に現れる非線型現象を記述する非線型偏微分方程式の解の構造解析を、力学系としての数学及び数値計算の両面から行っている。特に、多数の解が共存するパラメータ領域において、ランダム項を強制的に付加した場合の数値実験によるアプローチを開発し、相対的な解の安定性や遷移過程における障壁の高さ等、現象に内在する本質的な構造を明らかにする研究に取り組んでいる。
服部 新
整数論、特に、様々な整数論的対象の間の合同関係について研究している。例えば、代数体の整数論において、代数群上の保型形式のHecke固有値系を統制する固有値多様体と呼ばれるp進解析多様体に対し、その幾何学的分析を通して保型形式のp進的合同の性質を調べている。また、楕円保型形式の関数体類似であるDrinfeld保型形式についても、そのv進的合同や変動の理論を構築し、Drinfeld保型形式のv進的性質を明らかにする研究を行っている。
福田 達哉
生物の多様化の歴史を明らかにするために、海岸地、渓流沿い、蛇紋岩地といった特殊環境を例に、そこへの生物の適応に関して形態学的手法、生態学的手法、解剖学的手法を用いて研究を行っている。またこれらに加えて、地球環境変動の歴史と生物多様化のプロセスをつなぎ合わせるために、分子遺伝学的手法を用いて生物地理学的観点や系統学的観点からの研究を行っている。
堀越 篤史
自然科学が対象とする自然界は、電子やニュートリノといった素粒子から、原子、分子、生物、地球、そして広大な宇宙にいたるまで、幅広いスケールの階層構造を形成している。電子の運動とサッカーボールの運動が異なるように、異なる階層では異なる物理法則がはたらくため、どのスケールでものを見るかによって自然界の風景はまるで違ってくる。本研究室では、それぞれの階層において自然がどのように振る舞うか、そしてスケールを変えたとき自然の振る舞いがどのように変化するか、の2点について、量子力学を中心として、理論物理学や計算化学を用いた研究を行っている。
吉田 真史
分析化学的な見方・考え方は、現在社会のさまざまな局面で必要不可欠なものである。高機能材料の開発、食品の安全性の保障、薬効成分の選択抽出、環境汚染物質の同定などに、分子構造の解明や微量成分の検出などの分析化学的手法が用いられている。本研究室では、実験と計算機シミュレーションの2つの手法により、物質中の化学成分の分析、物質中の分子運動の解析、機能性分子のデザインなどの研究をおこなっている。