情報専攻 Informatics
人材の養成及び教育研究上の目的
博士前期課程
高い専門学力と語学力、コミュニケーション力、プレゼンテーション力なども習得し、情報工学およびシステム情報工学に関する技術・能力を身に着け、様々なシステムに内在する技術課題を発見し、解決方法を見出す問題解決能力を有する技術者の養成を目的とする。
博士後期課程
高度情報化社会を支える技術である情報工学およびシステム情報工学に関する技術・能力を身に着け、情報を分析・モデル化し、そのモデルを活用して新たなシステムを創出し効率的に運用できる能力を有する技術者の養成を目的とする。
専攻のポリシー
入学者受入れの方針(アドミッションポリシー)
博士前期課程
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情報分野の専門知識を学ぶための基礎知識を有し、それに基づいた論理的思考力を具備している。
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未知の情報分野に果敢に挑む研究意欲を有し、多面的観点から客観的に評価できる実践的な問題解決力を具備している。
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高い倫理観及び国際的な視野から研究・技術開発を進めるために必要な語学力・文章化能力を具備している。
博士後期課程
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論理的思考力と知的好奇心を持ち、自ら進んで専門分野とその関連する分野を学ぶ探究心を具備している。
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専門分野とその関連する分野について、博士前期課程修了程度より優れた研究能力を持ち、さらに、自ら研究を立案・計画・遂行できる能力を具備している。
教育課程の編成方針(カリキュラムポリシー)
博士前期課程
高い専門知識とその応用能力,語学力,コミュニケーション力,プレゼンテーション力なども修得し,情報工学およびシステム情報工学に関する技術・能力を身に付け,様々なシステムに内在する技術課題を発見し,解決方法を見出す問題解決能力を有する技術者を養成するため、次のように教育課程を編成する。
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高度な専門知識と応用能力を修得するため、専門基礎科目群及び専門科目群を編成する。
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複雑な課題に対して広い視野から、課題への挑戦・解決能力を修得するため、専門科目群に情報実習を配置する。
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研究成果をまとめ、ディスカッション、分析、プレゼンテーションできる能力を修得するため、専門科目群に情報特別研究を配置する。
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グローバル化する社会において国際人としての専門性と倫理性を修得するため、総合教養科目群及び総合基礎科目群を編成する。
博士後期課程
高度情報化社会を支える技術である情報工学およびシステム情報工学に関する技術・能力を身に付け,情報を分析・モデル化し,そのモデルを活用して新たなシステムを創出し効率的に運用できる能力を有する国際的にリーダーシップを発揮できる技術者を養成するため、次のように教育課程を編成する。
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高度な専門知識を持ち、自ら課題を発見し、自主的・総合的に学習・研究して解決する能力を修得するため、講究科目群を編成する。
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情報社会における諸課題の探求・解決へ自主的・持続的に応用できる能力を身に付けるため、特殊研究科目群を編成する。
学位授与に関する方針(ディプロマポリシー)
博士前期課程
所定の年限在学し、以下の知識と能力とともに所定の単位数を修得し、必要な研究指導を受けた上で修士論文又は特定の課題についての研究成果等の審査及び最終試験に合格した者に、修士(工学)の学位を与える。
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専門分野の高度な知識と技術を有し、問題点や課題を発見する能力や、具体的解決方法を見出す問題解決能力を身に付けている。
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専門知識や技術、問題発見・解決能力を用いて、実社会の具体的な課題や問題に対して活用・応用できる能力を身に付けている。
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グローバル化する社会において技術者として高い倫理観を持ち自律的に行動できる能力を身に付けている。
博士後期課程
所定の年限在学し、以下の知識と能力とともに所定の単位数を修得し、必要な研究指導を受けた上で博士論文の審査及び最終試験に合格した者に、博士(工学)の学位を与える。
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情報工学に関する専門分野において自立した研究活動を行い、新しい領域を開拓して社会に貢献できる能力を身に付けている。
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柔軟な発想と多角的視点を持ち、社会の多様なニーズに対応するための専門技術応用能力を身に付けている。
指導教員別研究内容
【情報専攻 情報工学領域】
相原 研輔
様々な科学技術計算で現れる行列に関する諸問題を、コンピュータにより高速かつ高精度に解くための数値計算アルゴリズムの研究を行っている。特に、自然現象や物理現象の数値シミュレーションで頻出する大規模な連立一次方程式や悪条件な最小二乗問題に対する反復解法について、収束性の改善や計算コストの削減、近似解精度の向上などを達成する新しい効果的な手法の確立を目指し、理論と実験の両面からアプローチしている。また、これらの行列計算を基盤として、データ解析などにも応用されるリーマン多様体上の最適化アルゴリズムの開発・改良にも取り組んでいる。
荒井 秀一
人のコミュニケーション媒体としての音声・画像・言語情報に関し、人工知能、パターン認識等の知的情報処理技術を用いた解析、学習、認識、理解に関する研究を行う。音声・画像情報に関しては、これらを介した人間の言語概念獲得過程の研究や、その応用としての学習・認識システムに関する研究を行う。また、楽曲を対象とした楽曲構成の推定に関する研究や、Big Dataからの知識発見に関する研究も行う。さらに、これらの研究に用いる特徴分析法に関する研究や、深層学習についての研究を行う。
大屋 英稔
未知なパラメータ変動などの不確定性を有する動的システムに対するロバスト制御系、適応制御系の構成法、非線形システムに対する最適制御系の設計法、大規模複合システムに対する分散・階層制御システムの構築など、先端制御理論に関する基礎的研究とその応用に関する研究に取り組んでいる。また、心肺停止患者の心電図波形を高精度、かつ早期に識別するシステムの開発、電気的除細動適用後の効果の予測に関する研究など、制御理論・計測信号処理論を核とした幅広い研究を行っている。
岡野 好伸
今や、情報を伝送するのみに留まらず、エネルギー伝送にも電波が利用されており、理論の理解や、挙動の解析手法の習得は、次代イノベーションの必須となりつつある。本研究室においては、電波の効率的放射や受信のためのデバイス開発・研究を数値解析手法と、充実した実験施設による実測検討の双方により実行している。また、人間中心の無線システム開発を目指し、人体と電波との相互影響に関して、細密な解析と測定に立脚した検証を行い、生体安全を考慮した無線システムの開発や、電磁波防護技術の研究も行っている。
河合 孝純
コンピュータシミュレーションや機械学習などのデータ分析技術を用いて、新材料の開発・物性予測を行っている。特に次世代の半導体材料やエネルギー材料として注目を集めている原子層薄膜材料の物性予測や最適な材料設計について実験グループに提案し、実際の材料開発につなげる。また、これらの計算から得られた大量のデータや実験データをもとに新規材料の早期開発を目指すマテリアルズインフォマティクスの研究も推進している。
佐和橋 衛
本研究室においては、第4世代(4G)移動通信方式の高度化、及び第5世代(5G)移動通信方式の超高速・大容量化、周波数利用効率の向上を目的として、無線アクセス技術、無線リソース制御技術、無線バックホール技術などの研究を行っている。また、膨大な数のInternet-of-Things (IoT)端末トラヒックとアクセスポイント間のトラヒックを低遅延で高効率に多重する機械型通信(MTC: Machine Type Communications)の研究も行っている。
傘 昊
IoTと情報通信、車載制御システムや電子機器などの情報エレクトロニクス分野において基盤技術であるシステムLSIに代表される集積化システムに関する研究を行う。その中で特にシステムや機器の性能のカギを握る集積化アナログ回路の高性能化に関する研究を行う。具体的には、高性能アナログ信号処理技術やアナログ-デジタル変換技術、デジタル信号処理技術の全般を駆使したアナログ回路の高性能化技術及びアナログ・デジタル混載LSI設計技術などの研究を行うとともに、IoTや人工知能など新分野への応用に関する研究も行う。
柴田 随道
各種センサーネットワークを利用した実世界情報の収集・分析、そして予測シミュレーション技術による行動支援や安心、安全、社会的課題解決のための取り組みが期待されている。本研究室では、そのためのシステム集積化技術とネットワーク運用技術に関する研究開発に取り組んでいる。マイクロ波通信や光通信用回路の研究、センシングシステムの高性能化に関する研究、センサーネットワークの運用、収集データの分析技術の研究を計算機シミュレーションと試作実験の両面から進める。
髙橋 弘毅
大型低温重力波望遠鏡(KAGRA)と連携して、重力波物理学・天文学を展開するためのデータ解析手法の研究・開発を進める。新しい信号処理、人工知能や機械学習などの情報技術を応用し独創的なデータ解析手法を開発して、重力波を用いた宇宙の理解を進めていく。また、データ解析の知識を、地震観測、安全運転支援、スポーツ、意思決定、教育や社会問題などへ応用する研究も展開していく。
田口 亮
各種信号に対する処理手法・認識手法の開発を行っている。対象とする信号の中心は画像信号であり、特にカラー画像信号処理に関して処理手法を開発している。カラー画像信号は濃淡(モノクロ)画像信号と異なり、多次元信号になっていることから、色空間で信号を扱うことになる。濃淡画像信号と大きく異なった形態の信号でありながら、カラー画像信号独自の研究が少ないのも現実であり、その研究価値は高い。さらに、脳波や心電図といった生体信号に対する認識に対する研究や音声・音響信号の雑音抑圧処理に対する研究も展開している。
陳 オリビア
人工知能の急速な発展に伴う情報量が爆発的増大し、莫大な電力が消費されてしまう。一方、半導体の微細化が終焉を迎え、「ポストムーア時代(ムーアの法則が成り立たない時代)」の到来が予測されている。このような背景から、我々は半導体回路に対して5桁以上消費電力効率を有する断熱超伝導回路を基盤技術とする上、アルゴリズム(ニューラルネットワーク)、ソフトウェア(自動化設計)、及びハードウェア(超伝導デバイス)の連携を通じて、革新的な超低電力コンピューティングについて研究を行う。
張 英夏
人間は多くの情報を視覚より取り入れている。人間の目に入る刺激は光の波長であり、視神経を経て脳で処理を行っていくことで色として認識することができる。しかしながらその認識過程は未だ明らかになっていない部分が多い。これらの一部を解明するため、色差や色カテゴリなど、色に関する基礎的な研究を行っている。また、画像に対して色彩的な加工を加え、新たな画像を生成する手法についても研究を行っている。
中野 秀洋
工学システムにおける様々な最適化問題を効率的に解く手法に関する研究を行う。具体的には、多数の設計すべき変数が存在する問題(高次元最適化問題)、複数の最適化すべき目的が存在する問題(多目的最適化問題)等に対する効率的な解法の開発を行う。また、これらの解法の並列分散ネットワーク化やハードウェア実装による高速処理の実現、無線ネットワーク等の工学システムへの応用等に関する研究も行っている。
新家 稔央
符号理論および情報理論に関する基礎から応用までの研究を行っている。特に、線形符号を用いた判定帰還方式(ARQ方式)における符号化定理の研究、LDPC符号や空間結合符号を対象とした復号アルゴリズムに関する研究、ARQ方式に用いる判定基準と復号アルゴリズムの整合性に関する研究、線形符号を用いた分散ストレージの信頼性向上に関する研究などに力を入れている。
林 正博
現在、大規模システムにおける故障が多発しており、その対策に注目が集まっている。本研究室では、大規模な通信ネットワークを対象に、故障の発生を抑制するシステマティックな方法を研究している。具体的には、故障の発生を確率現象として捉え、その分析のための尺度の開発、分析手法の高度化、分析に基づく対策の最適化の研究を行っている。また、カスケード故障と呼ばれる、一部の小さな故障が全体に波及するような現象への対策や、セキュリティの観点からの安全なデータ配置問題の研究も行っている。
平野 拓一
本研究室では次世代の無線通信技術を担う高速/高信頼な無線システムをシミュレーションおよび実験の両面から行う。数ミリ角の高速・小型無線機のミリ波帯無線機の実現を目指し、電波伝搬特性や変調方式による通信品質の違いを明らかにして、実用化に供する基礎理論の構築とデータの蓄積を行う。また、高速通信だけでなく、低速であっても高信頼な無線通信も渇望されている。深宇宙探査の技術を応用し、変調を工夫することによって、現在は標準化されていないが、渇望されている高信頼無線通信技術の実用化に向けて研究を行う。
向井 信彦
画像処理/認識とコンピュータグラフィックス(CG)を中心とした画像工学の研究を行っている。画像処理/認識では画質の向上や画像の3次元化、動植物の識別などがある。一方、CGでは物理法則に基づいて自然現象を解明するモデルを構築し、シミュレーション結果を可視化している。さらに、画像とCGの発展形としての仮想現実や拡張現実なども扱っている。具体的には、人間や動物の顔認識、滝や泡などのニュートン流体や納豆などの粘弾性流体の挙動解析、生け花練習シミュレータ、手話認識や手術シミュレーションなどの医療福祉応用などがある。
山口 敦子
多様かつ巨大なデータを柔軟に組合せ、様々な切り口から知識抽出を行う手法の研究を行う。特に、非常に多様性が高く、計測機器の発展に伴い巨大化する生命科学分野のデータを対象とし、知識グラフとよばれる構造を用いたデータ表現手法および解析手法の研究を行っている。手法の研究成果は、実用上の有効性を評価し、課題を明らかにするために、医療や農業などの具体的な生命科学の実問題に適用していく。対象データは生命科学に必ずしも限定しないが、データ表現手法や解析手法の研究と実問題への応用を両輪として研究を進めていく。
兪 明連
オペレーティングシステムに関する研究を行う。特に、リアルタイムシステムにおけるタスクのデッドラインを守ることができるアルゴリズムを提案し、それが保証できることの検証と組み込みシステムへの実装を行う。また、最適化アルゴリズムに関する研究を行う。最適化アルゴリズムの性能向上を図り、タスクスケジューリング問題に適応する研究を行う。
横山 孝典
計算機システムのソフトウェア技術に関する基礎から応用までの研究を行っている。特に、リアルタイムオペレーティングシステムや分散処理ミドルウェアなどの基本ソフトウェアに関する研究、組み込みソフトウェア開発技法やソフトウェア開発環境などのソフトウェア工学に関する研究、分散制御システムやサイバーフィジカルシステムを対象とした分散システムに関する研究に力を入れている。
【情報専攻 システム情報工学領域】
穴田 一
本研究室では、人工知能と密接な関係にある複雑系と複雑系のダイナミクスを意識した人工知能(AI)の研究を行っている。ここで言う複雑系とは、相互作用によって複雑に絡み合った不可分な系の事で、生物進化、脳、経済や人間関係など、自然界や社会に見られるほとんどは複雑系である。具体的には生物進化、脳、進化的アルゴリズム、群知能アルゴリズム、機械学習アルゴリズム、金融取引AI、推理AI、不完全情報ゲームAIの研究を行っている。
桂 卓成
実環境または仮想空間において、行動計測・生理指標計測・脳機能計測を駆使し、購買行動などの経済活動における人の行動モデルに関する研究を行っている。一般化可能な行動モデルを大量データから推定することや、よりパーソナライズされた行動モデルを、個人の行動や無意識の反応を深堀することにより検討することなど、幅広く研究対象としている。また、人の行動変容のために重要なパラメータを探索し、実社会での応用を目指している。
塩本 公平
あらゆるものがネットワークでつながるInternet of Thingsを見据えて、インターネット、クラウド、モバイルなどのシステムを対象に、アーキテクチャ・プロトコル、アルゴリズム・制御方式、データ測定分析・性能評価などの研究を行っている。手法としては、アルゴリズム、数理計画法・メタヒューリスティック、確率統計、機械学習などを応用して研究を行っている。ネットワーク仮想化によるインターネット・クラウドの革新的なアーキテクチャ、機械学習・人工知能等を用いたデータ分析によるインターネット・クラウドの革新的な保守運用技術に関して、理論検討とプロトタイプ試作による実証に取り組んでいる。
神野 健哉
非線形はカオスなどに代表される非常に興味深い様々な現象を呈する。これら非線形性に起因した多彩な現象に着目し、これらの現象・ダイナミクスを解析し、その結果を効果的に利用した新たな情報処理システムの開発を行っている。具体的には非線形力学系理論に基づいた群知能最適化、勾配法に依らない新たな効率的な機械学習アルゴリズム、メタヒューリスティック技術を用いた組合せ最適化問題の解法、非線形最適化を用いた情報通信システム、変換効率を高めた電力変換装置などの開発に関する研究を行っている。またビッグデータ解析に関する研究も行っている。
田中 宏和
脳を理解するためには、ボトムアップの実験的アプローチとトップダウンの理論的アプローチの相互作用が不可欠化である。理論的アプローチである計算論的神経科学では、脳機能に関する計算論モデルを構築し具体的な仮説を検証することで、計算理論・表現とアルゴリズム・神経実装の観点から脳の理解に挑戦する。具体的には、神経活動・行動データのモデル化を通して脳の情報処理原理を理解し、脳機能イメージング・神経活動データの信号解析を通して脳の情報表現・アルゴリズムを解明する研究を行っている。
ニーナ スヴィリドヴァ
生体系は複雑な非線形挙動を示す様々なシグナルを生成する。非線形時系列解析法は、このような信号の複雑な挙動を調べ、信号の中に隠れた情報を抽出することができる。このような解析技術を人から得られる生体信号に適用することで、個別化医療や健康モニタリングシステムを確立させることができる。これらの技術を基に、主に人間の脈波などの生体信号の解析に関する研究を行っている。
包 躍
先端的な3D画像関連及び実用的な視覚情報処理関連が研究対象。前者は、全方位3D映像撮影、CGによる3D映像撮影、カメラ画像に用いた3DCGの作成、ホログラム、インテグラルフォトグラフ、疲れないHMD、3Dゲーム装置、後者は、監視カメラによる知的危険検知、距離や向き変化に対応可能な知的顔認識、ドローンや移動ロボットの知的自動誘導、遠隔地でのAR、フラクタル超解像、車部品のキズ検出、入院患者用錠剤自動識別、織機用糸切れ検出、ゴミの自動分別、センサフュージョン、血管画像による健康診断がテーマ例である。
森 博彦
ヒューマンメディア工学研究室では、大きくわけてヒューマン・コンピュータ・インタラクションと人工知能を用いた知的情報処理の研究を行っている。ヒューマン・コンピュータ・インタラクションでは、人間にとって使いやすいコンピュータを開発している。ここで言うコンピュータとは、単なるコンピュータ単体だけでなく、IoTのようにコンピュータが埋め込まれた生活環境も対象にしている。知的情報処理では、AI技術を用いて、SNSの自然言語処理などを行っている。