教員の海外派遣
長期研修報告書
2020年4月
理工学部 機械システム工学科
准教授 熊谷正芳

大学のシンボル的建物Whitworth Building
2019年4月から2020年3月の約1年間に渡り、英国のマンチェスター大学(The University of Manchester)において、学内の長期研修制度を利用して研究活動を中心とした研修を行った。同大学は英国の国立大学で2004年10月、マンチェスター・ビクトリア大学(Victoria University of Manchester)とマンチェスター工科大学(UMIST:University of Manchester Institute of Science and Technology)が統合して誕生した大学であり、学生数は約4万人と英国の大学の中では最大規模である。都市型大学であるという点に加え、マンチェスターの街の個性とも関連すると思われるが、同大学のキャンパスは伝統的な建物を残しつつも全面がガラス張りなど近代的な作りの建物が多いことも特徴的であった。

所属研究グループの入っているAlan Turing Building内の吹き抜けロビー
受け入れてくださったのはPhilip Withers教授で、Withers教授はDepartment of Materialsの教授であると同時に、マンチェスター大学内に本部機能が置かれる英国の国立研究所Henry Royce InstituteをChief Scientistとして率いている。同研究所は材料科学分野の研究所であり、マンチェスター大学内には材料の3次元解析のためのX線CT装置などが多数置かれ、その研究に関わるスタッフが在籍し、欧州における中心地となっている。この研究グループの対象材料は金属や複合材料といった機械・構造材料が中心であるが、生物や生体材料、文化財の測定・分析なども行っている。グループメンバーはいわゆる材料分野の研究者のみならず、解析手法・ソフトの開発のため数学者など幅広いバックグラウンドを持つ研究者が在籍していることも印象的であった。私はここでX線や電子顕微鏡を用いた金属材料の強化機構に関する研究に取り組んだ。(研究内容の詳細は本報告公開の性質に鑑みてここでは割愛します。)
また、マンチェスター大学には多くの教授・講師陣が在籍しており、学内・学科内において研究についての議論を行うことができる環境はとても魅力的であった。
英国・マンチェスターでの暮らしについても少し触れたい。私はマンチェスターの中心からバスで30分ほど離れた閑静な郊外の町に住んでいた。道には街路樹があり、家々の前には芝生の庭があり、緑豊かであると同時にスーパーやパブ、レストランなども多数あり、生活に不便もなかった。地元マンチェスターのフットボールチームであるユナイテッドやシティの試合のある日のパブは人で溢れ、大いに盛り上がっていた。現地の方々は日本で昨今言われるワークライフバランスの取れた豊かな生活を送っている様に感じた。
今回の研修を通して、研究面はもとより、外国に長期滞在また日本人以外に囲まれて生活・仕事をするという貴重な経験を積むことができた。“日本では”、“海外では”、などと頭ではわかっていても実際に体験するのとは大違いであることも改めて実感した。ビザのトラブルに見舞われたり、コロナウイルス禍の中の帰国となったりと、波乱に富んだ留学経験となったが、その分密度の濃い経験ができ、今後の教育研究および自身の人生において貴重な糧となるものと感じている。
末筆ながら、長期研修の機会をいただいたことに厚くお礼申し上げます。