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共同原子力専攻 Cooperative Major in Nuclear Energy
専門分野の紹介
将来のエネルギー安全保障問題の中で、原子力発電と新たなエネルギー利用に携わる人材の育成と放射線利用としての加速器・放射線応用に従事する人材の育成は極めて重要性が高く、特に、福島第1原子力発電所事故を踏まえて、さらなる原子力安全の確保と放射線関連技術の進展を切り開く人材の育成は急務となっている。こうした背景のもと、早稲田大学との共同教育課程を編成し、時代に即した関連分野知識の習得や他分野との融合にも必要な基礎知識を身に着けるための多彩なカリキュラムを提供(下図参照)して、技術面のみならず、安全面、倫理面、リスク管理の指導の下に、技術的にも人間的にも高い能力を有する人材を育成する。工学部の原子力安全工学科には、原子力工学、放射線工学及び原子力リスク・耐震の3つのコースを設けて、原子力システム、原子力安全、放射線工学、放射線応用の基礎的な分野に加えて原子力耐震、リスク評価学といった原子力安全に特化したプログラムも用意されている。共同大学院では、高度で専門的な教育研究を行うが、原子力と放射線の基幹技術及び耐震技術・リスク評価学を三大支柱とする大学院専攻は世界でも他に類をみない。
共同原子力専攻におけるカリキュラム体系
学習・教育目標と育成する人材目標
学習・教育目標
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各学科目に所属して関連テーマの研究を推進するとともに、関連する多くの授業を履修することで幅広い知識と素養を持った学生を養成する。
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原子力分野で社会的に求められている安全技術のみならず技術者倫理やリスク管理などの面からの十分な教育・研究をめざす。
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研究室内での発表会や、学会での研究発表をとおしてコミュニケーション能力を有する学生を養成する。
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企業や研究機関と堅密な連携のもと実際の原子力施設における実習やインターンシップなどにより優秀な即戦力として活躍できる人材をめざす。
育成する人材目標
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原子力安全に強い東京都市大学と原子力工学の基礎基盤となる工学系に強い早稲田大学との共同大学院により次世代の原子力利用・技術の展開を支える人材を育成する。
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早稲田大学の有する知的資源と経験により東京都市大の三大支柱の間隙を補完することで、福島事故後の日本のおかれた特別な状況に対処できる優秀な研究者、技術者の育成をめざす。
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原子力、放射線はもとより、機械、物理、電気、化学、材料及び耐震・リスクマネジメントあるいは原子力行政のあらゆる分野で活躍できる基本的素養を身に着けた人材を育成する。
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自ら問題点や課題を発見する能力を身につけ、自らの力で計画的に解決する能力をもつ技術者を育成する。
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秋入学制度により海外留学生にも道が開けており、グローバルな人材育成が可能であり、国際人として通用するコミュニケーション能力を持つ人材を育成する。
学位授与の方針
博士前期課程においては、次のような資質を持った人材に対して修士(工学)または、修士(理学)の学位を授与する。
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原子力及び放射線分野における専門分野の高度な知識と技術を習得し、実際的な応用を考慮した深い専門技術を身につけていること。
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原子力放射線分野において、習得した高度な専門知識と研究能力を用いて問題点や課題を発見し、課題の具体的な解決方法を見出すことができる能力を有すること。
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技術者として高い倫理観を持ち、環境変化にも対応できる幅広い応用力を身につけ、グローバル化する社会においても社会に貢献できること。
学科目 研究内容
原子力システム工学 Nuclear System Engineering
核分裂炉及び核融合炉とは、原子核に内包される核子間の結合エネルギーを安全かつ安定的に取り出す装置である。そこで得られるエネルギーの密度と量は膨大である一方、反応の過程で放射性物質が生成されるため、炉システム概念を考える上では、安全性・環境適合性・資源性・核不拡散性・社会受容性といった総合的視点を持つことが重要である。こうした基本理念の下、当研究室では(1)核分裂、(2)核融合及び(3)医療の3分野に関わる研究を行う。(1)核分裂分野では、固有安全炉、濃縮・再処理を不要とする革新的原子炉(進行波炉)、トリウム増殖炉等の新型原子炉の設計の他、廃棄物消滅や有用元素生成のための核変換技術、さらには原子力の経済性、将来の電源構成及び福島原発事故で溶融した核燃料の撤去技術開発等を行う。(2)の核融合炉分野では、磁場型及び慣性型を見据えたブランケットの核熱設計や核変換への応用、(3)の医療分野では、ホウ素中性子捕捉療法などの医療への実用化に向けた研究を行い、社会経済活動を支える工学技術としての原子炉や放射線応用の発展に貢献する。研究実施にあたっては、民間企業、研究機関、他大学等、外部との研究交流を行うとともに、学会・国際会議で活発な成果報告を行い、社会が望む誠実かつ活力ある原子力技術者を育成する。
原子力安全工学 Nuclear Safety Engineering
わが国エネルギー供給の中核を担う原子力発電システムが一層安全なものとなるよう、関連技術の基礎研究を推進し、原子力を含むエネルギー全般の安全を技術的に論じられる人材育成を目的とする。とくに炉心からタービンまで、発電システムを循環する水と蒸気のふるまいに注目して研究テーマに取り上げる。熱および流体工学の学問基盤を通して、発電システムの安全設計の考え方、評価のしかた、工学的安全設備のしくみ、設備保全などの革新的な技術を追求する。
放射線計測工学 Radiation Detection and Measurement Engineering
「放射線可視化技術の開発」:放射線透過像取得用システムや画像処理法の開発。および、北大、京大、JAEA、および理研で稼働しているパルス中性子源のための高性能カメラ検出器の開発。「加速器制御」:KEKで稼働しているデジタル加速器の制御法の開発。「原子炉シミュレータ」:原子炉制御実験実習用の実体験型原子炉シミュレータの開発。「高性能放射線検出システムの開発」:可動式放射線線量測定用ロボットの開発。
放射線応用工学 Applied Radiation Engineering
中性子線、γ線、α線等を利用して原子力をはじめ種々の分野で使われている材料中の微量・超微量元素を分析・評価する計測技術の開発やその応用を行っている。また、原子力に関わる安全環境の解明として、高レベル放射性廃棄物の超深地層処分における核種移行研究、原子炉事故や核実験による人や地球環境への影響評価、さらに、環境物質の超微量放射化分析法や放射年代測定法に関する教育・研究を行う。
原子力社会学 Nuclear Sosio-Engineering
我が国を含む東アジアは世界有数の地震地帯であり、不確かさの大きい自然現象である地震により生じる地震動、津波等に対する安全性確保が最重要課題である。建屋、機器、配管などの健全性確保のための耐震・制震・免震構造、耐水構造等の高度化、複合災害も対象とした原子力施設をシステムとしてとらえた確率論的リスク評価、安全対策とセキュリティ対策を統合的にとらえた防災対策を含めた危機管理に関する研究を行い、原子力エネルギーの社会への定着を図る。
進路/職業
博士前期課程を修了した学生は、国の原子力研究開発機関、原子力規制側の諸機関、電気・機械メーカー、コンサルタント会社、実際に原子力発電所を所有する電力会社に主に就職している。また、広い裾野をもつ放射線利用分野での活躍も著しい。博士前期課程修了後、博士後期課程に進学し、さらに専門性を深め、研究を継続することも可能である。
原子力システム工学、原子力安全工学:
国(官庁、省庁)や地方行政機関(県庁)、独立行政法人研究機関、電力会社(原 子力発電所)、
プラントメーカー、核燃料・放射線取扱い事業に係る企業
放射線計測工学、放射線応用工学:
国(官庁、省庁)や地方行政機関(県庁)、独立行政法人研究機関、電力会社(原子力発電所)、
放射線機器メーカー、プラントメーカー、医療機器関連会社、非破壊検査会社
原子力社会学:
国(官庁、省庁)や地方行政機関(県庁)、独立行政法人研究機関、電力会社(原子力発電所)、
プラントメーカー、機械系メーカー