学長あいさつ

いま世界では、2015年の国連サミットで採択された SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向け「leave no one behind」(誰ひとり取り残さない)を合言葉に、17のグローバル目標と169のターゲットへの取り組みが進められております。 国際社会が共通の目標を設定しなくてはならないということは、裏を返せば、私たち人類の抱える課題がますます高度化、複雑化、グローバル化していることの表れでもあります。
本学では、このSDGsの達成に向けて大学運営の隅々までを見直すとともに、教育面では、入学から卒業までの間にどれくらい能力を高めることができたかを教育効果の尺度とする「Best Value University」(教育付加価値最大の大学)の観点に加え、誰ひとり取り残さない「教育支援体制」を構築するため、一人ひとりの学生と一層真摯に向き合うことを宣言して、優れた専門性と実践力、そして国際性という揺るぎない「価値」を備えた人材の育成に邁進しております。また研究面では、未来都市研究機構を設置して、都市が抱える様々な課題の解決にデジタルテクノロジーの進歩を取り込む「アーバンデジタルトランスフォーメーション(UDX)」の実現に向けた研究を推進するとともに、7学部17学科・2研究科8専攻の全研究室が自ら取り組む目標を学外へ発信してSDGsへのコミットメントを強化しております。
2009年に 武蔵工業大学(1929年創立)と 東横学園女子短期大学(1938年創立)が統合して誕生した本学は、SDGsがその達成を目指す2030年の目前である2029年10月に創立100周年を迎えます。今しばらくはコロナ禍による不自由な日々が続くでしょうが、このような時こそ、SDGsを含む「既存の課題」をイノベーションを通じて解決するチャンスであると考え、本学は教育研究という大学の本分を通じた貢献をはかっていく所存でおります。
引き続き、本学活動へのご理解とご支援を宜しくお願いいたします。
東京都市大学 学長 三木千壽
2023年度 入学式式辞 (2023/4/2)
2023年度 入学式式辞
皆様、おはようございます。本日は、校友会会長の松村様、後援会会長の増田様をはじめとするご来賓、ご家族の皆様をお迎えして、入学式を持てること、東京都市大学学長として、大変うれしく思います。
また、本日はお二人の特別なお客様をお迎えしております。お一人はオーストラリア連邦の駐日大使のジャスティン・ヘイハースト氏です。
His excellency the Australian ambassador to Japan, Justin Hayhurst, Thank you very much for attending today.
本学は2015年よりオーストラリア・パースにありますエディスコーワン大学およびマードック大学との協力により、東京都市大学オーストラリアプログラム、通称TAPを実施しています。TAPにはこれまで1,000名以上(累計)の学生が参加しており、現時点も216名の学生が留学中です。今年度からは英語力の高い学生を対象としてのAdvanced TAPも始めることにしています。
このプログラムに対し、オーストラリア政府、そして同国在日大使館からは様々なご支援をいただいております。本日の入学式には、ヘイハースト大使、ご自身にご出席いただいております。大使は日本に赴任されたばかりですから、おそらく初めての日本の大学への訪問だと思います。また、Pitt参事官にはTAP壮行会に続き、ご参列いただきました。
もうお一方、皆さんの先輩である、丸野 正様にもご出席いただいております。丸野様は1983(S58)年に本学電気工学科を卒業されており、現在は、浜松ホトニクスの代表取締役社長を務められております。浜松ホトニクスは、小柴先生、梶田先生の2件のノーベル賞受賞につながった「カミオカンデ」を支える、光の最先端技術の会社です。多くの卒業生が進まれてお勤めになっております。
お二人には後ほどお話をいただきます。
さて、本年度は大学院博士後期課程では総合理工学研究科に13名、環境情報学研究科に10名の計23名、大学院修士課程には総合理工学研究科に295名、環境情報学研究科に24名の計319名、学部につきましては理工学部に690名、建築都市デザイン学部に261名、情報工学部に203名、環境学部に189名、メディア情報学部に212名、都市生活学部に179名、人間科学部に100名、そしてこの4月よりスタートしたデザイン・データ科学部に110名の合計1,944名の学生をお迎えいたします。学部と大学院の合計で2,286名となります(入学者数はいずれも確定前)。皆さん、改めまして、入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを歓迎いたします。
さて、都市大の理念は「公正、自由、自治」です。都市大の前身の一つである武蔵工業大学は、1929年に武蔵高等工科学校として創立されました。今年で94年を迎えます。この学校は、ある学校に在学していた学生たちが、「学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人をさがし、それを受け止めた3名の創立者の熱意により創立された学校です。きわめて稀な形で創立された学校ともいえます。「公正、自由、自治」の理念は、その時に宣言されました。
東京都市大学は、学校法人五島育英会に所属しております。五島育英会は、東急グループの創立者である五島慶太翁が1939年に設立した東横学園と武蔵工業大学を合併して1955年に設立した学校法人です。2009年には、東横学園女子短期大学と武蔵工業大学を統合し、東京都市大学が誕生しました。
五島慶太翁が好まれた言葉「熱誠」も、都市大の教育研究のバックボーンとなっています。五島慶太翁は「熱誠」について、次のように記されています。「人の成功と失敗との分かれ目は第一に健康である。次は、熱と誠である。体力と熱と誠とがあるならば、必ず成功する」新入生の皆さんもぜひ、この「熱誠」を、大事にしてください。
さて、本日は、都市大は、どのような方針で人材育成にあたっているのか、また、大学で、どのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しします。
都市大では「実践的専門力を有し、世界で活躍できる人材の育成を目標としています」急速に、大きく変化する社会、環境の中で、リーダーとして活躍できる、タフな人材、が目指すところと言えます。そのために、様々な教育プログラムを展開しています。
皆さんに最初にお伝えしたいことは、大学では「知識を学ぶのではなく知識を獲得する方法を学ぶ」ということです。教員から与えられる知識を学ぶのではなく、自分から進んで、能動的に学ぶことです。それが大学生活の成功の秘訣です。今、社会から求められている人材は、自分で問題を発見し、解決できる人材です。少し違った言い方をするならば、現時点での知識はすぐに陳腐化し、役に立たなくなるということです。今は、たいていの知識はインターネットの検索で得られてしまいます。そのような知識は必要になった時にインターネットで検索すればよいのです。
問題の正解がある前提で解く暗記型の学びは、もはや意味がないとも言えます。そもそも、社会にある多くの問題には正解はないし、正しいかどうかなんて誰も教えてくれません。大事なのは答えに至るまでのプロセスです。繰り返しますが「知識を学ぶのではなく知識を獲得する方法を学ぶ」のです。
お伝えしたい2つ目は、「グローバルな人材になってください」ということです。そのための入り口が、世界の人たちとコミュニ―ケーションを取るためのツール、英語力を身につけることです。都市大でTAPを始めた理由はそこにあります。英語は、必須のツールです。
しかし、英語が話せてもグローバル人材とはいえません。グローバル人材とはグローバルに行動を起こせる専門家を指します。私は地球儀を見るのが好きです。私の地球儀は、小学生の時に買ったものですから、国の名前は大きく変わっています。そして、初めての国を訪問するときには、古い地球儀の国名と今の情報を調べます。ワクワクします。様々な文化的バックグラウンドの人々と心をつなげることは楽しいし、異なる文化や人々に好奇心を持って関心を寄せることがグローバルマインドの始まりとなります。
今、世界は大変な状況にあります。激動の時代とも言えます。コロナ禍は、様々な社会活動や経済活動を止めてしまいました。また、現在の科学技術の限界を示し、さらには日本の研究力の低さを露呈しました。地球温暖化問題は将来に向けての厳しい警報であり、我々の責任を示しました。今ウクライナで起きていることは、戦争warというよりは組織的大量虐殺genocideです。
我々は、今何ができるのか、何をすべきかを考え、行動することが求められています。皆さんは、これからの都市大の学生生活を通じて、世界で自分の果たすべき役割は何であるか、どのような貢献ができるのかについての解を出してください。
都市大は、皆さんに対する教育の効果について、IN入学時 と OUT卒業時で、どれくらい価値を高められるか、いわゆる教育付加価値が重要であり、そのような指標でのBest Value Universityでありたいと考えています。皆さんには、今まで経験したことのないほど、勉強をしてもらいます。そのつもりで、毎日を過ごしてください。
最後に、私が好きなアインシュタインの言葉をお伝えします。
Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.
失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ、です。失敗できない、したくないからチャレンジを避ける、では未来は開けません。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込んだ人間、学び続ける人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。
チャレンジする気持ちが重要です。
皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2022年度 学位授与式式辞 (2023/3/19)
2022年度 学位授与式式辞
皆様、おはようございます。本日、校友会会長の松村様、後援会会長の増田様、そして皆さんの先輩である、株式会社絆ジャパン代表取締役の増田様をはじめ、多くの皆様にご出席いただき、この学位授与式を持てること、東京都市大学学長として、大変な喜びであります。この3年間、コロナ禍のために、このような皆さんに集まっていただいての学位授与式を持つことができませんでした。コロナはまだまだ終息したとは言えませんが、ワクチンの接種が進んだこともあり、ぜひ、今年はこのような、対面での学位授与式を実施したいと考えました。しかし、例年に比べると、若干、小規模、かつ簡略化しました。
さて、本日の学位授与ですが、博士につきましては、大学院博士後期課程工学研究科で2名、総合理工学研究科で13名が博士(工学)の、環境情報学研究科で4名が博士(環境情報学)の、計19名が学位を取得しています。
修士につきましては、総合理工学研究科で282名、環境情報学研究科で40名の計322名が修了し、学位を取得しています。
学士につきましては工学部732名、知識工学部238名、環境学部160名、メディア情報学部207名、都市生活学部163名、人間科学部106名、計1606名の学生が卒業いたします。
改めまして、皆さんおめでとうございます。ご両親をはじめとするご家族の皆様には、さぞかしご安心のことと推察いたします。心からお喜び申し上げます。卒業生の皆さんは、今日があるのはご両親やご家族の皆様のおかげであることを、しっかりと胸に刻みつけてください。
さて、コロナ禍は3年を超えました。クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号で、発症者が見つかったのが2020年2月1日ですが、その時にはこれほどのことになるとは予想もしませんでした。ちなみに、2020年3月19日の全国の感染者数は約40名です。昨日の感染者数は全国で3000人レベルで、ピーク時の26万人からは、収束してきたように感じますが、まだまだ安心できる状況にはありません。
大学にとっても、学生の皆さんにとっても、大変な3年間でした。皆さんは大学生活4年間のうちの3年間をコロナ環境で過ごしてしまったことになります。大学としては、皆さんの学びに対して、できるだけマイナスになることを避けるように、オンライン授業、ハイブリッド授業など、いろいろな工夫をしてきました。しかし、それで十分だったとは思っていません。課外活動については厳しい制限を付けざるを得ない状況でした。
大学の活動の中には対面でしかできないことがいろいろとあります。特に、教員と学生の間、学生同士などの人と人とのつながりについては、なかなかオンラインでは難しいところがあります。多くの学生からは、友人が作れなかったという訴えが来ています。これも大きな問題と認識しています。これらの課題について、卒業、修了後について、大学としてどのようにするのか、どのような方法がとれるのかについて、継続的に考えさせていただきます。
さて、今日皆さんは学位を授与されました。多くの方は学生から社会人になります。今までとはまったく異なる生活が始まります。大学院に進学する皆さんについても、今までとは異なる世界に入ります。大学院生は研究者の仲間入りです。ここで、皆さんに提案があります。それは、この時、この転機に、自分が何をやりたいのか、何を実現させたいのか、何ができるのかを、考えてくださいということです。自分の夢をはっきりと描くとも言えます。
夢は、希望に変わり、そして現実になっていきます。今までも、いろいろなときに自分の夢を描いてきたと思いますが、いよいよそれを実現するときが来たとも言えます。夢がなければ前に進みません。そこでは失敗を恐れないことです。
アインシュタインは「Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.」と言っています。「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」という意味です。失敗を恐れずにチャレンジすることです。言い換えれば、「何も失敗していないということは、何もやっていないということ」です。失敗したら、なぜ失敗したかを考えることで、そこから次のステップが見えてきます。
最近は、なんでもインターネットで調べてしまいます。最近のアマゾンやグーグルのソフトでは、課題を入れると、合格点をとれるような答えが返ってくるそうです。あっという間に、簡単に、知識、情報が集まります。その結果、判ったような気持になってしまう、その結果、自分でトライしない、チャレンジしない、これこそ、最悪です。恐ろしいことです。それでは何もわかりません。
もっと心配していることは、そのようなインターネットからは、誰にでも同じ答えが提供されます。みんなが同じ答えを持つと、それが正しいことになり、常識になります。はたして、インターネットからの情報、AIから出てくる答えは正しいのでしょうか。ひょっとしたら、重要なこと、大きなチャンスを逃してしまっているかもしれません。是非、自分でトライすること、チャレンジすることを忘れないでください。
私は、現場主義を通してきました。何事も、自分で現場に聞き、自分の目で見て、触れてみる、試してみる、ことを行動規範としています。自分でやってみることから、いろいろなことがわかってきます。その時に、私は、last one secondのパフォーマンスが重要と思っています。最悪は、自分の力ではこれくらいかな、こんなもんでよいかな、と考えて、努力を終わりにすることです。「もう一息頑張ってみよう、もう少しどうにかなるのでは」、これは私がいつも自分に言い聞かせていることでもあります。そうすれば、もし結果が思わしくなくても、満足感は得られます。自分を信じて、最後の1歩、最後の1秒までチャレンジしよう、です。
今日皆さんが受け取る、学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。世界が皆さんの能動的な行動を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。皆さんの大いなる発展、ご活躍を祈念して本日の式辞とさせていただきます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
学長年頭挨拶(2023/1/1)
創立100周年、その先の未来に向かって
新年明けましておめでとうございます。
平素より、本学の教育研究活動にご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。
いま世界は予測不可能な時代、ゲームチェンジ時代と言われ、大きな激動期に差しかかっています。このような社会情勢の下で、天然資源に乏しい我が国が存在感を示し、成長を遂げていくには、国際社会で活躍できる優秀な人材の育成が不可欠です。
そのような中、本学は2029年の創立100周年に向け、中長期計画「アクションプラン2030」のもと、「Best Value University=教育付加価値最大の大学」を目指して、さまざまな改革に取り組んでいます。
2023年4月には、新たに「デザイン・データ科学部」を横浜キャンパスに開設します。同学部では、分析力を基礎に創造力も鍛え、新たな「もの」と「こと」を具体的にデザイン(構想・設計・構築)することを学びます。全員が本学独自の国際人育成プログラム「東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)」による海外留学を経験して国際感覚も養い、確かな分析力と創造力を兼ね備えたグローバルに活躍できる「イノベーション人材」になることと期待しています。
また本学では、2015年に国連サミットで採択された、持続可能な開発目標である「SDGs (Sustainable Development Goals)」)や、政府が2050年までの達成を目指す「脱炭素社会・カーボンニュートラル」の達成に資する教育研究にも注力しています。SDGsにおいては、全ての研究室で、自ら取り組むべきSDGsのターゲットを学内外に発信し、それぞれが真摯かつ明確に問題解決に向けた取り組みを進めています。また、2050年の脱炭素・カーボンニュートラル社会の構築に必要な人材を育成するため、DXによる実践的な環境・エネルギーマネジメント教育もスタートしました。この取り組みは、文部科学省の「デジタルと専門分野の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」にも採択され、大きな社会的関心を集めています。
研究面では、ディーゼル車並みの高出力を実現する水素燃料エンジントラックの開発など、それぞれの研究室が多彩な研究成果を社会に還元し続けています。総合研究所を中心に、Society 5.0 (超スマート社会)の実現に向けた研究に取り組むとともに、2022年4月には、前述のSDGs に関連した独自性の高い研究活動を分野融合的に発展・推進する「サステナビリティ学連携研究センター」を同研究所内に設置し、持続可能な社会の発展に資する研究に注力しています。
教育研究活動の礎となるキャンパスの環境整備も大きく進展し、2022年の1月には新7号館が、8月には新10号館(第1期工事分)が世田谷キャンパスに誕生しました。ZEB化などで環境面にも配慮しつつ、学生や教職員が自然に交流して学び合うためのスペースも広く設け、キャンパスライフの魅力をより一層高めています。
創立100周年に向けたカウントダウンが進んでいます。しかしその100周年も、あくまで通過点でしかありません。私たちはその先の未来も見据え、真の「Best Value University」を築いていく所存です。「都市大に入学して、卒業してよかった、誇りである」と、全ての学生・卒業生、ご家族の皆様に心からの満足を覚えていただく大学となるため、今後も本学は、進化し続けることをお約束します。
本年も引き続きご支援をたまわりますよう、お願い申し上げます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2022年度 入学式式辞 (2022/4/2)
2022年度 入学式式辞
本日は、校友会会長の松村様、後援会長の土屋様をはじめとしてのご来賓、ご家族の皆様をお迎えして、入学式を持てること、東京都市大学学長として、大変うれしく思います。サクラガーデンの桜も皆さんの入学を待ってくれました。
コロナ禍のために、この2年間は、対面での入学式は実施できませんでしたが、少し落ち着いてきましたので、今年は、対面での入学式を持つことにいたしました。しかし、感染予防対策として、これまでより、小規模かつ短縮しての実施といたしました。また、4月1日にオープンした7号館のTCUホールでは、ご家族の皆様にもLive中継をご覧いただいております。
本日はゲストに、オーストラリア大使館より、教育研究担当参事官のJanine Pitt様にご臨席いただいています。東京都市大学はオーストラリアプログラムTAPとして、毎年300名を超える学生を、オーストラリアのパースにあるEdith Cowan 大学とMurdoch大学に派遣しています。今年からは東海岸のSouthern Cross大学ともプログラムを開始しました。これらのプログラムに対して、オーストラリア大使館には全面的なご支援を頂いております。
さて、本年度は大学院博士後期課程では総合理工学研究科に20名、環境情報研究科に7名の計27名、大学院博士前期課程には総合理工学研究科で320名、環境情報研究科で34名の計354名、学士課程につきましては理工学部679名、建築都市デザイン学部254名、情報工学部187名、環境学部189名、メディア情報学部198名、都市生活学部168名、人間科学部102名の計1,777名が入学します。皆さん、改めまして、入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを歓迎いたします。(※入学者数は 4月2日 10:00時点)
本学の理念は「公正、自由、自治」です。都市大の前身の一つである武蔵工業大学は、1929年に武蔵高等工科学校として創立されました。この学校は、ある学校に在学していた学生たちが、「もっと学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人をさがし、それを受け止めた3名の創立者の熱意により誕生しました。きわめて稀な形で創立された学校といえます。「公正、自由、自治」の理念は、その時に宣言されました。
東京都市大学は学校法人五島育英会に所属します。五島育英会は東急グループの創立者である五島慶太翁が1939年に設立した東横商業女学校に始まります。それがのちの東横学園女子短期大学であり、2009年に武蔵工業大学と統合して東京都市大学となりました。
五島慶太翁については、新入生の皆さんのお手元に伝記をお渡ししています。ぜひ、読んでください。五島慶太翁は実業家として有名ですが、小学校の代用教員や商業学校の教員も務められており、人材育成にも大変な熱意をお持ちでした。
五島慶太翁が好まれた言葉「熱誠」も、都市大の教育研究のバックボーンとなっています。五島慶太翁は熱誠について、次のように記されています。「人の成功と失敗の分かれ目は第一に健康である。次には、熱と誠である。体力があって熱と誠とがあるならば、必ず成功する。」素晴らしいお言葉です。
さて、都市大は、どのような方針で人材育成にあたっているのか、また、大学で、どのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しします。
まず第1に、皆さんは、今日から、生徒ではなく学生となります。生徒と学生の違いについては自分で確認してください。端的に言えば「生徒は受動的に学ぶ」「学生は能動的に学ぶ」です。大学では、何かを教えてくれるだろうといった「待ち」の姿勢では、何も手に入れられないでしょう。また、どこまでで合格というラインもありません。自分から進んで、能動的に学ぶことが、大学で成功することの秘訣です。今、社会から求められている人材も、自分で問題を発見し、解決できる人材です。能動的に行動できることです。
都市大では、育成する人間像を「世界で活躍できる、実践的な専門力を有する人材」として、教育プログラムを組み立てています。大学で学ぶのは、専門力と考えているかもしれませんが、人間力をつけることも重要です。人間力とはいわゆる教養です。日本の若者の弱点とされている、自分に自信が持てない、リーダーシップに欠ける、協調力が低い、コミュニケーション力が低い、なども人間力ですが、それらについても、大学で学び、身につけることであり、人間的な魅力とも言えます。
大学院についてお話しさせていただきます。最近、人材に対する期待は、幅が広がり、しかもより高いレベルへと変わってきています。産業界での雇用や人材活用も、メンバーシップ型雇用から、ジョブ型に移行しつつあります。そのような状況に対して、大学での4年間124単位の学びでは、不十分となってきました。大学院では、通常のコースワークに加えて、研究室に所属しての研究が大きなウエイトを占めており、専門力と人間力を高めるうえで極めて有効となります。今日、大学院に入られた皆さんは、どこまで自分を磨き上げられるか、高められるか、にチャレンジしてください。
実は多くの大学で、大学院進学が当たり前になってきています。大学院への進学率が90%、80%という大学が増えています。また、学部と大学院を合わせて6年あるいは5年のプログラム教育を提供する大学も増えています。都市大でも、そのようなプログラムも検討中です。学部入学の皆さんも、大学院進学を視野に入れて学部での学びを計画してください。
さて、先ほど都市大の育成する人材像として「世界で活躍できる、実践的な専門力を有する人材」とお話ししましたが、その入り口が英語によるコミュニケーション能力です。英語は中高で6年間も勉強したのですから、今更大学でという気持ちもあります。しかし、皆さんの将来にとって英語によるコミュニケーション能力は必須であり、英語を話さなければ、国際的に活躍することはできません。
都市大では、専門の勉強が始まる前にこの問題を解決してもらおうと考え、オーストラリアプログラムTAPを実施しています。定員は472名です。このプログラムは、入学直後の準備教育から始まり、ネイティブの講師による英語力強化プログラムを1年間、100時間受けたのち、4か月間、オーストラリアの大学に留学します。これだけやると多くの学生は英語によるコミュニケーションには問題が無くなります。少なくとも外国人がいると、こそこそ隠れる、目を合わさないようにするようなことはなくなります。TAP以外にも、様々な留学プログラムを用意していますから。学生の間に、ぜひ、留学してください。それもできるだけ長期滞在を勧めます。
今、世界は大変な状況にあります。激動の時代とも言えます。コロナ禍は、様々な社会活動や経済活動を止めてしまいました。また、現在の科学技術の限界を示し、さらには日本の研究力の低さを露呈しました。地球温暖化問題は将来に向けての厳しい警告であり、我々の責任を示しました。今、ウクライナで起きていることは、戦争というよりは一方的虐殺であり、すぐに止めなければなりません。我々は、今何ができるのか、何をすべきかを考え、行動することが求められています。皆さんは、これからの都市大の学生生活を通じて、世界で自分の果たすべき役割は何であるか、どのような貢献ができるのかについての解を出してください。安全で安心に暮らせる社会の構築は、ベースラインです。目指すことは、全世界の人々がWell being 、持続的な幸福を実現することです。
東京都市大学グループの学園歌は「夢に翼を」です。まず、夢を見つけてください。そしてそれを実現するための翼をつけてください。皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2021年度 学位授与式式辞 (2022/3/19)
2021年度 学位授与式式辞
本日、校友会会長の松村様、後援会長の土屋様にご出席いただき、この学位授与式を持てること、東京都市大学学長として、大変な喜びであります。この2年間、コロナ禍のために、皆さんに集まっていただいての学位授与式を持つことができませんでした。コロナはまだまだ終息したとは言えませんが、ワクチンの接種が進んだこともあり、ぜひ、今年は学位授与式を対面で実施したいと考えました。例年に比べると、小規模であり、また、ご家族の皆様には、この会場への来場をご遠慮いただきました。このあたりのこと、ご理解いいただきたく、お願い申し上げます。
本日の学位授与ですが、大学院博士後期課程の総合理工学研究科で5名が博士(工学)の学位を、環境情報学研究科で4名が博士(環境情報学)の学位を、また、1名が論文を提出し博士(工学)の学位を取得しています。修士課程と博士前期課程は、総合理工学研究科で229名、環境情報学研究科で16名、の計245名が修了し、修士の学位を取得しています。学士につきましては工学部697名、知識工学部302名、環境学部148名、メディア情報学部179名、都市生活学部155名、人間科学部96名、計1577名の学生が東京都市大学を卒業いたします。
改めまして、皆さんおめでとうございます。ご家族の皆様には、さぞかしご安心のことと推察いたします。心からお喜び申し上げます。卒業生の皆さんは、今日があるのはご両親やご家族の皆様のおかげであることを、しっかりと胸に刻み付けてください。
さて、コロナ禍は2年を越えました。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号で、発症者が見つかったのが2020年2月1日 ですから、2年を超えたことになります。その時にはこれほどのことになるとは予想もしませんでした。ちなみに、2020年3月19日の全国の感染者数は約40人です。最近の感染者数は全国で5万人レベルであり、2月頃で10万人の印象が強いため、収束してきたように感じますが、まだまだ安心できる状況にはありません。大学にとっても、学生の皆さんにとっても、大変な2年間でした。
大学としては、皆さんの学びに対して、できるだけマイナスになることを避けるように、オンライン授業、ハイブリッド授業など、いろいろな工夫をしてきました。しかし、対面でしかできないことがいろいろとあります。特に、教員と学生の間、学生同士など、人と人とのつながりについては、なかなかオンラインでは難しいところがあります。十分ではないこと、足りなかったことについては、心よりお詫び申し上げます。大学として、卒業、修了後について、継続的な対応ができるようなプログラムなどを、考えさせていただきます。
学位を授与するにあたって、卒業生・修了生の皆さんへ私の思い、期待を伝えさせていただきます。それは「失敗を恐れず、チャレンジすること」の重要性です。チャレンジの無いところからは何も生まれてきません。アインシュタインはAnyone who has never made a mistake has never tried anything new.「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」と言っています。これは私の座右の銘です。
もう少し、言葉を足すならば、「決してあきらめるな、自分を信じて、最後の1歩、最後の1秒までチャレンジせよ」です。私は、何事にもLast one step, last one secondのパフォーマンスが重要と思っています。最悪は、自分の力ではこれくらいかな、こんなもんでよいかな、と考えて、努力を終わりにすることです。もう一息頑張ってみよう、もう少しどうにかなるのでは、これは私がいつも自分に言い聞かせていることでもあります。
日本は停滞した状態が続いています。このような状況の時にこそ、現状に満足するのではなく、どうにか変えてやろう、何ができるのか、といったチャレンジが必要です。例えば、日本ではこの30年間、給料がほとんど変わっていません。皆さんが受け取る初任給はご父母の世代が30年前に受け取られた初任給と変わらないでしょう。この停滞した社会を、1990年代のバブル崩壊 からの失われた20年と呼びましたが、30年になり、さらに続いているということです。そのような国は日本だけです。これで良しとはできません。
アメリカの社会学者であるエズラ・ボーゲルがJapan as number one、lessons for Americaという本を書いたのが1979年です。半年後に翻訳本がでましたが、日本だけでも75万部が売れたという本です。私も読みました。私は1981年に米国に行ったのですが、その時の日本とアメリカをくらべて、どこがJapan as No.1 lessons for Americaかと、強く感じたことを思い出します。日本が「科学技術立国、世界第2位の経済大国」ともてはやされたのは1980年代後半から1990年代前半です。エズラ・ボーゲルは、1979年に、日本の成長を予言していたとも言えます。Japan as No.1では日本人の強みは学習意欲と、読書習慣であるとしています。また、日本人は数学で世界No.1、科学分野でも2-3位であるとされています。
世界は大きく成長しています。立ち止まって足踏みをしているのは日本だけであり、世界的にはどんどん抜き去られ、置いて行かれることを意味します。早くこの停滞した状況から抜け出さなければなりません。困ったところは、皆さんは、日本が元気な時代を知らないところにあります。日本人は世界的に優れた能力を持ってることを自覚してください。この停滞した日本で再び目を覚まさせるためには、Challengeの気持ちをもって行動するしかありません。
今日、皆さんが受け取る、学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。世界が皆さんの能動的な行動を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。
皆さんの大いなる発展、ご活躍を祈念して本日の式辞とさせていただきます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
学長年頭挨拶(2022/1/1)
「Best Value University」に向かって
新年明けましておめでとうございます。
平素より、本学の教育・研究活動にご理解とご支援を賜り誠にありがとうございます。
昨年は新型コロナウイルス感染症の蔓延により、キャンパスへの入構制限や授業形態の変更等、学生の皆さんをはじめとする関係の皆様に大変なご不便をおかけいたしました。皆様のご理解とご協力のおかげで、これまで大きな混乱もなく活動を継続できておりますことに厚く御礼申し上げます。
さて現在、本学は創立100周年(2029年)に向けた中長期計画「アクションプラン2030」のもと、ますます改革を加速しております。
教育面においては、入学(in)から卒業・修了(out)の間に学生一人ひとりの「個の力」を最大限に引き出し、優れた専門性と実践力、国際性という揺らぐことのない価値を身につけてもらうべく、「Best Value University=教育付加価値最大の大学」の実現に向け邁進しています。
この具体的な施策としては、「文部科学省 令和2年度 大学教育再生戦略推進費 知識集約型社会を支える人材育成事業」に採択された「ひらめき・こと・もの・ひと」づくりプログラムが2021年度にスタートしています。同プログラムは、これまでにない大胆な文理融合と分野横断を実践しながら激動の「ゲームチェンジ時代」をリードできる、幅広い教養と深い専門性を修得するカリキュラムです。現在は理工学部の一部学科でのみ取り組んでいますが、今後は順次、全学に展開する予定です。
研究面においては、総合研究所・未来都市研究機構を中心にサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society 5.0」の実現に向けた研究に取り組むとともに、超高効率な水素エンジンや太陽電池の研究など、カーボンニュートラルの達成に資する先進的な技術開発にも注力しています。
さらに、教育と研究の舞台となるキャンパス再整備も着々と進行しており、1月中には、世田谷キャンパスに新7号館が竣工し、4月には、等々力キャンパスの2学部(都市生活学部、人間科学部)が移転する予定です。大きく生まれ変わる世田谷キャンパスは、様々な専門分野とバックグラウンドを持つ多様な学生・教職員の出会いと対話の場となり、そのシナジーがさらなる学びの充実と研究の発展をもたらすものと確信しています。また、本学 理工学系の教育・研究活動における最重要拠点となる世田谷キャンパス新10号館の工事も、第1期が2022年度、第2期が2024年度中に完了の予定で、これにより世田谷キャンパスの約3分の1におよぶ再整備事業もその大部分が完成することとなります。
くわえて、「Best Value University」の実現には、大学院教育のさらなる充実が必要だと考えています。
2021年度からは、優秀な人材の大学院進学へのモチベーションを高めるため、「研究プレゼンコンテスト」の参加対象を学部生にも拡げました。学生の皆さんには、機会を逃さず、是非チャレンジして頂きたいと思います。また、博士後期課程の学生の研究環境を整備する科学技術振興機構(JST)の新しい事業、「次世代研究者挑戦的研究プログラム」に、本学の提案する「アジア大洋州地域の発展をリードする次世代グローバル研究者」プログラムが採択され、現在10名の学生がこの支援を受けて勉学に励んでいます。
資源の乏しい日本において、唯一にして、最大の資源は人材です。これまで優れた人材に支えられてきた日本の国力は、近年、周辺のアジア諸国や欧米に比して、低下傾向にあるという指摘があります。再び日本が科学技術により世界に確固たる地位を得ることができるよう、本学は卓越した人材の育成を通して貢献したいと思っています。学生の皆さんもどうか、日本の、ひいては世界の持続的発展に貢献するリーダーを目指し、日々の活動に取り組んでください。東京都市大学は「学びたい」「究めたい」というその気持ちを、引き続き最大限に支援しながら、「Best Value University」への道をひたすらに歩んでまいります。
本年も、引き続きご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2021年度 入学式式辞(2021/4/2)
2021年度 入学式式辞
本日は、コロナ禍のため、変則的な形で令和3年度の入学式を実施させていただきます。 本来ならば、世田谷キャンパスの体育館をメイン会場として、新入生の皆さん、ご家族の皆様、来賓の方々をお迎えし、入学式を挙行するところですが、残念ながらこのような形式となってしまいました。しかしながら、教職員全員が皆さんを歓迎していることに違いはありません。昨年度はこのような形の入学式もできませんでした。そのために、本日は、昨年度の新入生、今の2年生の皆さんにも、この入学式を案内しました。ウェブ上で出席していただいているものと思います。
昨年度は各学科に分かれての、しかも人数を抑えながらの学生証の交付と、オリエンテーションから、スタートしましたので、新入生には、本学に入学したことの実感がわき難かったことでしょう。第1クォーター、第2クォーターはオンライン授業でしたが、第3クォーターでは、コロナ禍の状況が好転しましたのでハイブリッド型授業として、キャンパスに来ていただきました。先の1年間は、満足感に乏しい大学生活であったことと推察します。
大学生活はキャンパスにあると考えています。いくらICT技術が進み、遠隔授業が進化したとしても、キャンパス生活なしの大学は考えられません。昨年は、このようなコロナ環境下での、教育のやり方などについて、いろいろと工夫しました。しかし、あくまで緊急対応であり、本来の大学の姿ではありません。新学期については、昨年の経験を踏まえて、講義やキャンパス生活に工夫をしていく所存です。ぜひ、皆さんからのinputもいただきながら、より良い大学を目指して参りたいと考えます。よろしくお願いいたします。
さて、東京都市大学の建学の精神は「公正」「自由」「自治」です。本学の前身の一つである武蔵工業大学は、1929年に武蔵高等工科学校として創立されました。この学校は、ある学校に在学していた学生たちが、「学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人をさがし、それを受け止めた3名の創立者の熱意により創立された学校です。きわめて稀な形で創立された学校といえます。「公正」「自由」「自治」の建学の精神は、その時に定められました。
本学は学校法人五島育英会に所属しています。五島育英会は東急グループの礎を築いた五島慶太翁が初代理事長であり、この慶太翁が1939年に創立した東横商業女学校を源流とする東横学園女子短期大学と、武蔵工業大学とが2009年に統合して東京都市大学となりました。五島慶太翁が好まれた言葉「熱誠」(熱と誠)も、本学の教育研究のバックボーンとなっています。慶太翁は熱誠について、次のように記されています。「人の成功と失敗との分かれ目は第1に健康である。次には熱と誠である。体力と熱と誠とがあるならば、必ず成功する。」新入生の皆さんもぜひ、心の中にしまっておいてください。
さて、本日は、本学が、どのような方針で人材育成にあたっているのか、また、大学では、どのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しします。皆さんに最初にお伝えしたいことは、自分から進んで、能動的に学ぶこと、それが大学生活成功の秘訣ということです。
本学では教育面でのBest Value Universityでありたいと考えています。これは、米国の大学等では、大切にする指標です。皆さんに対する教育の効果について、入学時(IN)と卒業時(OUT)で、どれくらい価値を高められるか、との観点での評価であり、いわゆる教育付加価値が最大の大学という意味です。
大学として、様々なプログラムを用意していますが、皆さんには、今まで経験したことのないほど、勉強をしてもらいます。そのつもりで、毎日を過ごしてください。今までの高校までの学びは、先生から与えられる、知識を伝達する形の教育でした。そのために必要なことは先生から与えられる、だったと思います。言ってみれば、受動的な学びで済んでいました。また、入試は、あるラインに到達すれば合格します。それに対して、大学では、何かを教えてくれるだろうといった「待ち」の姿勢では、何も手に入れられないことでしょう。また、どこまでやれば合格というラインもありません。
今、社会から求められている人材は、自分で問題を発見し、解決できる人材です。自分はどのようなことをやりたいのかをはっきりさせることです。まずは、皆さんの将来に対する夢を描いてください。そして、それをより具体的な目標にしてください。今日の入学式の記念として、自分はどうしたいのか、それをどのように実現するのかを考え、それを書いて保存することを提案します。目標を明確にすることです。
本日、この式には学部への入学者とともに大学院博士前期課程と、博士後期課程への入学者も出席しています。博士後期課程には社会人コースとして、仕事を持ちながら博士を目指す学生が含まれています。社会はより高いレベルの能力、知識を有する人材を必要としています。社会に出た後も、学び続けることが重要です。学部に入学した皆さんも、最初から大学院へ進学することを考えて学んでください。昔は大学4年間で十分な学びが出来ましたが今は違います。昔の大学4年間は今の博士前期課程までの6年間と考えて、自分の学びを組み立てる、設計することをお勧めします。本学では、学部、大学院を通して、世界で活躍できる、実践的な専門力を有する人材の育成を目的としています。急速に、大きく変化する社会、環境の中で、リーダーとして活躍できる、タフな人材が目指すところといえます。また、それを実現できるようなプログラムを用意しています。
皆さんへの2つ目のメッセージは、国際人になってほしいということです。本学が育成を目指す人材像は、実践的な専門力を持ち、世界中で活躍できる人材です。本学における国際人育成の入り口が、東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)です。このTAPは2015年からスタートしていますから、今年で6年目になります。駐日オーストラリア大使のアダムス様より、皆さんにビデオメッセージをいただいていますので、私の式辞の後、お聞きください。
TAPにつきましては、初年次200名、2年目230名、3年目250名、4年目、5年目は300人を超える学生が参加しています。近い将来には500名まで増やし、入学者の1/3が参加できるようにしたいと考えています。都市大生は英語が苦手、英語が苦手だから都市大に来たという人が多いのですが、これは自慢にはなりません。社会に出てから、英語を話さなければならない状況で、前の人の陰に隠れる、できるだけ眼をあわさないようにするというのは、最悪です。皆さんのこれからのキャリアで、大きなハンディキャップとなります。専門を学ぶ前に解消しましょう。本学は英語学校ではありません。しかし英語でのコミュニケーション能力は、国際人としての必須アイテムであり、高度な専門教育を生かすためにどうしても身に付けてもらう必要があると考えてのプログラムです。
3つ目のメッセージは、失敗を恐れずに、チャレンジしてほしいということです。私が常に心においているアインシュタインの言葉があります。それは Anyone who has never made a mistake has never tried anything new. 「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」です。失敗できない、したくないからチャレンジを避ける、ではこれからの激動の世界ではサバイブできません。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込んだ人間、学び続ける人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。チャレンジする気持ちが重要です。この都市大で、失敗を恐れずチャレンジしてください。
皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2020年度 学位授与式式辞(2021/3/19)
2020年度 学位授与式式辞
本日は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、変則的な形で学位授与式を実施させていただきます。コロナ禍がなければ、世田谷キャンパスの体育館をメイン会場として、皆さんのご家族の皆様にも参加いただき、また、多くのご来賓を迎えて挙行するところですが、残念ながらこのような形式にせざるをえませんでした。皆さんとは、コロナ禍が収まった後に、何らかの形でこのキャンパスでお会いしたいと考えています。
本日は、大学院博士後期課程の総合理工学研究科にて12名が博士(工学)の学位を、環境情報学研究科にて6名が博士(環境情報学)の学位を取得しています。また、修士の学位取得者につきましては、総合理工学研究科212名、環境情報学研究科16名の計228名となっております。さらに学士につきましては工学部698名、知識工学部303名、環境学部162名、メディア情報学部183名、都市生活学部164名、人間科学部101名の計1,611名の学生が東京都市大学を卒業いたします。
改めまして、皆さんおめでとうございます。ご家族の皆様には、お目に掛かることはかないませんでしたが、さぞかしご安心のことと推察し、心からお喜び申し上げます。卒業生、修了生の皆さんには、ぜひ、その旨をご家族の皆様にお伝えいただきたいと思います。皆さんの今日があるのは、ご両親をはじめとするご家族の皆様のおかげであることを、しっかりと胸に刻み付けてください。
さて、皆さんはいよいよ社会人です。小学校から始まった16年間、あるいはそれ以上の長かった「学ぶ」世界から、自分自身で道を切り開きながら進む世界への船出です。まずは社会人としての自覚を持ち、責任のある行動をすることです。自分に自信をもち、思いっきりの力を発揮して、ご活躍ください。学部卒業生の多くは大学院に進学されます。社会では、大学院生は、社会人として扱われます。その自覚をもって、自分を高める努力をしてください。
でも、大変な状況の中での船出です。これから先、どうなるのかは見えません。このコロナ禍は、あと数か月で収まってくれるのか、さらに続くのか、わかりません。ワクチンが全世界に行き届くまで、様々な制約を受けることは確かでしょう。これから先、早い時期にAfter Coronaと言えるとHappyであり、これから長くWith Coronaでやっていかなければならない可能性もあります。
コロナ禍は、我々に、いろいろなことを気付かせてくれました。私がもっともショックだったのは、日本の科学技術の世界的なポジションの低下です。コロナに関する研究論文の数が、世界第17位であるとのデータに愕然としました。また、ワクチンの開発についても日本の存在感がありません。今までも、大学の世界ランキングや、トップ10%論文集などで、日本のポジションはどんどん落ちていることが示されてきましたが、ここまでとは思いませんでした。
日本は、かつて、科学技術立国と評価され、科学技術の多くの分野で、米国に次ぐ第2位を続けてきました。その結果として世界第2位の経済大国を誇ってきました。そしてアジアやアフリカなどこれから発展しようとしている多くの国からお手本にされてきました。しかし、2000年代に入ったころから、そのポジションは低下を続けています。そして中国にあっという間に抜きさられました。そのほかの国も日本より早い速度で成長し続けています。なぜ、このようなことになってしまったのか、それは、豊かになるにつれてハングリー精神を失い、今もっているものを失うことを恐れ始めたのではないかと思います。そうなると、行動が、コンサバティブになり、新しいことにチャレンジしなくなります。このままで行くと、今の日本の将来は暗いし、今のレベルを保つことすら難しいでしょう。
でも、日本にはまだまだ国際的な競争力を持つ分野はあります。日本が果さなければいけない役割もたくさん有るし、期待もされています。皆さんは、是非、世界中の人たちが幸福を感じる世界、未来社会の実現にチャレンジしてください。
今日、皆さんに2つのことをお伝えしたいと思います。その第一は、「失敗を恐れず、チャレンジすること」の重要性です。チャレンジの無いところからは何も生まれてきません。アインシュタインは、Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.(失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ)と言っています。大学の卒業や大学院の修了は決して「ゴール」では無く、次のレベルへの「スタート」です。これからの新しい環境でも、失敗を恐れず、チャレンジする心構えを持ってください。
もう一つの伝えたいことは、人との出会い、つながりを大事にしてほしいということです。どのような社会になっても、基本は人とのつながりです。それも、生身でのお付き合いが大切です。日本経済新聞 朝刊の最後のページには、『交遊抄』という小さなコラムがあり、いろいろな分野の人が、自分の印象に残っている「人とのつながり」について、書いています。私自身のことを振り返ってみても、人とのつながりで様々なチャンスをいただいてきています。人とのつながり、そこから出来上がる人脈は最大の財産です。あの出会いが無ければ、今の自分は無いなと思うことがしばしばです。
私は3回ほど大学を動いていますが、すべて、いろいろな方とのつながりの中で声をかけていただき、チャンスをいただいてきています。出会いを大事にすると、その中で人生のメンターと思えるような人、生涯の友人と出会うこともできます。そのためには、世界中の、たくさんの人と出会い、自分から進んでお付き合いすることを心がけてください。
今日皆さんが受け取る、学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。世界が皆さんの能動的な行動を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。
これからの、皆さんの大いなる発展、ご活躍を祈念して本日の式辞とさせていただきます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
学長年頭挨拶(2021/1/1)
「学びたい」という想いに全力で応える
平素より、本学の教育研究活動にご理解とご支援を賜り誠にありがとうございます。2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、授業開始時期の繰り下げや施設の使用制限など、学生をはじめとする関係の皆様には大変なご不便をおかけしました。今もって終息が見通せない中ではありますが、ワクチンの開発や接種といった明るい展望も見えて参りました。先ずは、この間のご理解とご支援、ご協力に厚く御礼を申し上げます。
さて本学では現在、創立100周年(2029年)に向けた中長期計画「アクションプラン2030」のもと一大改革を進めています。まず教育面では、入学から卒業までの間に、学生一人ひとりの「個の力」を最大限に引きあげることを目標としています。そのために、1年間を4期に分ける短期集中型の「クォーター制」や、履修単位数に上限を設けて習熟度を高める「CAP制」、海外で多く採用される国際標準の成績評価「GPA(Grade Point Average)」のほか、各科目の成績評価、取得資格、留学、課外活動など一人ひとりの実績を可視化する独自のキャリア デザイン システムも導入しました。
このコロナ禍においても、オンキャンパスの教育を重視する本学では、学生と教職員の健康を守ることを大前提に、9月の第3クォーターからは、適切な感染症対策を講じた上で対面とオンラインとを組み合わせた「ハイブリッド型授業」を実施しました。残念ながら、第4クォーターの途中から新型コロナが再拡大し、卒業研究と実験・実習・実技等の科目以外は、原則オンライン授業となりました。今後も感染状況を注視しつつ、ウィズコロナ、アフターコロナにおいても「教育の質」に徹底してこだわり、一層効果的な学びを追求して参ります。
さらに、本学が目指す「専門力を有し世界で活躍する人材」を育成するためには、大学院教育の拡充が必須と考えています。今、わが国ではこれまで多くの企業が採用してきた職能型(メンバーシップ型)の人事制度が職務型(ジョブ型)に移行しつつあり、修士号や博士号を持つ人材の活用・待遇も大きく変わっていくことと思います。今の学生たちが社会のリーダーとなる20年後を見据え、その時代に活躍できる人材をどのように育成するかを長期的な展望に基づいて考えています。
昨年の11月には、文部科学省の令和2年度大学教育再生戦略推進費「知識集約型社会を支える人材育成事業」に採択されました。本学提案の事業は、今後の社会や学術の新たな変化や展開に対して柔軟に対応する能力を有する、幅広い教養と深い専門性を備えた人材を育成することを目的としていますが、このような形での国からの支援や競争的資金の獲得は、持続可能な教育・研究を推進していくためにも、極めて重要だと考えています。
研究面では、総合研究所・未来都市研究機構の推進する「都市研究の都市大」事業が、第2フェーズへ移行し、DX(デジタル トランスフォーメーション)視点からの研究活動を一層加速しています。また昨年の9月には、同研究所内へ新たに「宇宙科学研究センター」を開設し、宇宙の進化や地球生命の起源といった深遠な謎の答えを理工連携、文理融合で探求する取り組みを始めました。こちらもすでに東京大学宇宙線研究所との学術連携など、さまざまな活動がスタートしており、この方面も着実に充実しています。
また、ソフト面だけでなくハード面においても、脱炭素や省エネルギー、地域の防災拠点化など、SDGsの達成を強く意識しながら、学修環境の一層の拡充を図るべくキャンパスの再整備に注力しています。現在、世田谷キャンパスに建設中の新棟は、大学として唯一、経済産業省の「令和2年度ZEB(Net Zero Energy Building)実証事業」に採択されました。
私たちは、1929年に学生たちの「学びたい」という強い想いが結実して誕生したという、本学創立の由来を忘れずに、これからも学生の「学びたい」という想いに全力で応えるべく、進化し続けて参ります。
本年も引き続き皆様のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
東京都市大学
学長 三木 千壽
2020年度 入学式 式辞に代えて(2020/4/2)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、本日予定していた「令和2(2020)年度入学式」は式典を中止いたしました。以下は、本来であれば、式典にてお伝えする予定であった 学長 からのメッセージです。
2020年度 入学式 式辞に代えて
新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。
新型コロナウイルス感染症の影響拡大により、例年、世田谷キャンパス体育館で開催している入学式を取りやめました。
新入生の皆さんはもちろん、ご家族の皆様もきっとこの日を楽しみにされてきたことと思いますが、式典参加者の健康と安全の確保に加え、感染の拡大を防ぐという社会的責任を考慮してのことですから、どうぞご理解ください。
皆さんのご入学にあたり、本学を代表して、お祝いと期待の言葉を記します。
本学の建学の精神は、「公正、自由、自治」です。本学の前身の一つである武蔵工業大学は、今から91年を遡る1929年、武蔵高等工科学校として創立されました。ある学校に在籍していた学生たちが、「学びたい」という一心のもとに、自らが支援者、教えてくれる人と校地・校舎を探し、その思いを受け止めた3名の篤志により建学された、きわめて稀な学校です。
そして本学が属する学校法人五島育英会の初代理事長は、東急グループを築いた五島慶太翁です。五島育英会は、慶太翁が1939年に設立した東横商業女学校(後に東横学園女子短期大学を擁する「東横学園」の源流」)と、当時、財政的に困窮していた武蔵工業大学の両法人を合併して1955年に成立しました。2009年に武蔵工業大学と東横学園女子短期大学が統合して東京都市大学となる原点がここにあります。
慶太翁の「人の成功と失敗のわかれ目は第一に健康である。次には熱と誠である。体力があって熱と誠とがあるならば、必ず成功する。」というお言葉は、いま「熱誠」として、本学の教育研究のバックボーンとなっています。
さて、ここで、本学がどのような方針で人材育成にあたっているのか、そして大学では、どのようにすれば有意義な時間を過ごせるのかについてお伝えします。
高校までは「受験」という極めてわかりやすい目標があり、学習方法もこれを意識した「知識伝達」を中心とする受動的なものだったことと思います。入試では、あるラインに到達すれば合格します。それに対し大学では、誰かが何かを教えてくれるだろうといった「待ち」の姿勢では何も手に入りません。また、どこまでやれば合格というラインもありません。自ら進んで能動的に学ぶことが成功の秘訣です。
そして、社会で求められる人材は、自ら課題を見つけ、それを解決できる人材です。皆さんは、本学入学にあたり先ずは、自分はどのようなことを成し遂げたいのかを明確にしてください。自分はどうしたいのか、そしてそれをどのように実現するのかを考え、書き出して保存してください。目標を明確にし、それに向かうプランがはっきりすれば、やる気も湧いてきますし、さらなる先も見えてきます。時が経つのは早いものです。後からあの時間がもったいなかった、あのようにしておけばよかったなどと思わぬよう、まさに、慶太翁の言葉「熱誠」の世界を目指し、いま始めましょう。
さらに、本学では「世界で活躍できる専門的な実践力を有する人材」の育成を目標としています。巷に言うグローバル化とは、時間と距離を超えて世界が一つになることですが、皆さんが生きる社会はすでに、グローバル化には興味がない、などと言って逃れられる状況にはありません。
本学では皆さんに、この時代をリードする人材になってほしいと考え、グローバル人材育成の入り口として「東京都市大学オーストラリアプログラム」(以下、TAP)を用意しています。6年前に始め、今では年間定員が471名となったこのプログラムは、入学直後の準備教育に始まり、本格的な専門教育を受ける前に、英語によるコミュニケーション能力を身に付けてしまうことを狙いとしています。
TAPでは、1年時に1日2時間のネイティブ講師による英語力強化講義を100日間受け、その後の2年時に、オーストラリア パースのEdith Cowan UniversityあるいはMurdoch Universityに1学期間留学します。TAPの効果をTOEICのスコアで表すと平均で約150点アップ、中には250点以上アップさせた学生もいます。少し前の日経の調査によれば、社会人の取得したい資格の1番がTOEIC®Aレベル、2番が同Bレベル、3番が同Cレベルと、いかに社会人が英語で悩まされているかが分かります。ぜひ、新入生の皆さんはTAPに参加して、本格的に専門分野を学ぶ前に英語問題を解決してしまいましょう。
さて、新聞紙上にAIとIoTの文字を見ない日はありません。第4次産業革命の進展により、我が国はSociety5.0の時代に入ったとも言われ、世の中はものすごい勢いで変化しています。ここで言いたいことは、今、皆さんが持っている知識はすぐに時代遅れになるということ。そして、その時に大事なことは、常に学ぶこと・学び続けること・チャレンジすることだということです。
失敗できない・したくないからチャレンジを避ける、では未来社会ではサバイブできません。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込む人間、学び続ける人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。ぜひ、失敗を恐れずにチャレンジし続けてください。
皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念し、入学にあたってのメッセージといたします。
東京都市大学
学長 三木千壽
2019年度 学位授与式 式辞に代えて(2020/3/19)
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、本日予定されていた「令和元(2019)年度学位授与式」は式典を中止し、学科・専攻別に学位記の交付を行いました。以下は、本来であれば、式典にてお伝えする予定であった 学長 からのメッセージです。
2019年度 学位授与式 式辞に代えて
本学は、新型コロナウイルス感染症が急速に拡大している現状を鑑み、例年のような学位授与式の開催を取り止めました。学位授与式は人生における大きな節目であり、学生の皆さんはもちろん、特にご家族の皆様は、この日を心待ちにされて来られたことと拝察いたします。保護者の皆様やゲストをお招きし、皆さんの晴れ姿を見ていただき、一緒にお祝いをしたかったのですが、大変残念です。この新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、式典に参加される皆さんの健康と安全を最優先に考え、各学科・専攻別に学位記の交付を行い、卒業生・修了生と教職員のみの出席での開催と決定させていただきました。変則的な学位授与になりましたが、皆さんと、皆さんをここまで育て上げた保護者の皆様に、心からのお祝いを申し上げます。
さて、本年度は、大学院博士後期課程では、工学研究科で4名、総合理工学研究科で4名が修了し、博士(工学)の学位を取得しました。また、博士後期課程環境情報学研究科では3名が博士(環境情報学)の学位を取得し、合わせて11名が博士となりました。
修士課程では、工学研究科で4名、総合理工学研究科で228名、環境情報学研究科で17名の計249名が修士の学位を取得しました。
学士課程につきましては、工学部612名、知識工学部236名、環境学部142名、メディア情報学部191名、都市生活学部164名、人間科学部105名、計1,450名が学士の学位を取得し、東京都市大学を卒業いたします。
改めて、皆さんおめでとうございます。
皆さんはいよいよ社会人です。小学校から始まった、16年間あるいはそれ以上の長かった「学ぶ」世界から、自分自身で道を切り開きながら進む世界への船出です。まずは社会人としての自覚を持ち、責任のある行動をとることです。自分の力に自信を持ち、思いっきり力を発揮して、ご活躍ください。
これから先、皆さんにお話しするチャンスはあまり無いと思いますので、卒業生・修了生の皆さんへ私の思いを3つほど伝えさせていただきます。
その1つ目は「学び続けることの大切さ」です。もう卒業だ、修了だ、勉強は終わった、ではないということです。今、皆さんが持っている知識は、それほど長続きするとは思えません。例えば、1990年代に登場したインターネット、それに続くスマートフォンがもたらした社会の変化や経済効果は、その10年前には誰も予測していなかったでしょうし、当然、その知識なども存在しませんでした。
また、今までは、問題には正解がある前提で解く暗記型の学びが中心になっていたと思います。しかし、暗記したものはすぐに忘れてしまいます。真の学びはそうではありません。物事の本質を知ること、追求することが真の学びです。
これから直面するであろう、社会にある問題では、全てに正解があるとは限りませんし、正しいかどうかを誰も教えてくれません。大事なことは、物事の本質にどこまで迫れるかであり、そしてそこに至るまでのプロセスです。
2つ目は、「チャレンジが大切」ということです。私の好きなアインシュタインの言葉「Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.」
日本語にすれば、「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」となります。失敗を恐れず、チャレンジしてください。
出る杭は打たれる、と言われていますが、皆さんには、出る杭になり、打たれ、それに打ち勝って、伸び上がっていただきたいし、そこに新しい道が開かれます。チャレンジを続けることが大切です。
最後の3つ目にお伝えしたいのは、「人とのつながりを大切にする」ことです。AI、IoTの社会でも基本は人とのつながりです。決して、すぐ隣の人とインターネットを通してコミュニケーションを取るなどしないでください。生身でのお付き合いが大事です。出会いを大事にすること、その中で人生のメンターと思えるような人、生涯の友人と出会うこともあります。そのためには、世界中のたくさんの人と出会い、自分から進んでお付き合いすることを心がけてください。
日本経済新聞 朝刊の最後のページに「交遊抄」というコーナーがありますが読んでいるでしょうか。私は、毎朝、楽しみにして読んでいますが、いろいろな人がいろいろな出会いについて語っています。皆さんもぜひ読んでください。
皆さんが受け取る学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができるといった意味です。
世界が皆さんの活躍を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を訪ねてください。教職員はそれを待っています。
皆さんの人生が幸多いものであることを祈念して、皆さんを送り出すに当たってのメッセージとさせていただきます。
東京都市大学
学長 三木千壽
学長年頭挨拶(2020/1/1)
Best Value University(教育付加価値最大の大学)を目指して
本年もよろしくお願い申し上げます。
1929年、学生たちの「学びたい」という強い思いが結実して誕生した本学は、昨年、創立90周年を迎えました。創立以来、建学の精神である「公正・自由・自治」に基づく教育研究を継続し、学部増設にともなって総合大学となった現在も、常に新しい時代と社会の要請に応える、多くの優れた人材を輩出し続けていることは、我々の誇りとするところです。
来たるべき100周年に向け、現在本学では、中長期計画「アクションプラン2030」に基づく改革を加速しています。目指す大学像は「都市をキーワードに時代の要請に取り組み、国際都市東京で存在感を示す有数の大学」であり、教育、研究などあらゆる面で「国際標準」を体現しようとしています。
教育面では「Best Value University(教育付加価値最大の大学)」を標榜しています。卒業するまでに一人ひとりの学生の力を最大限に高め「世界で活躍できる、専門的実践力を有する人材」に育てることが主眼です。このため、短期集中型で学修効果の高い「クォーター制」や、海外の多くで採用される成績評価GPA(Grade Point Average)、学年ごとの学修到達目標を可視化する独自の「ディプロマ・サプリメント」などを導入し、教育制度改革に全力をあげています。ディプロマ・サプリメントを含む本学の学修支援モデルは、文部科学省による「大学教育再生加速プログラム(AP)」でも「卒業時における質保証の取組強化」に採択されています。また、昨年3月には、同じ文部科学省の「私立大学等改革総合支援事業」にて、全国に603校ある私立大学で唯一、全5タイプ(1. 教育の質的転換、2. 産業界との連携、3. 他大学等との広域・分野連携、4. グローバル化、5. プラットフォーム形成)に選定されました。
研究面では、総合研究所内に「未来都市研究機構」を設置し、インフラや環境、生活、健康など都市が抱える様々な課題の解決を図る「都市研究の都市大」事業に全学をあげて取組み、ブランド力の強化に努めています。もちろん機械や電気、建築・土木など伝統的に強みを持つ研究分野においても、それぞれ優れた成果をあげています。
国際面では「東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)」や「東京都市大学&カンタベリー大学留学プログラム(TUCP)」、海外インターンシップなどが順調に進展しており、入学時から卒業時まで一気通貫しているところが本学の国際人育成プログラムの特色です。また本学が中心となって「アジア・大洋州5大学連合」を設立し、学生交流や教職員の相互派遣なども開始しています。さらに世田谷キャンパス近くに日本人学生も入居可能な国際学生寮を開設するなど、キャンパス内の国際化にも注力しているところです。
20年度の新たな改革としては、学部学科再編があります。既存の建築学科と都市工学科を融合した「建築都市デザイン学部」を新設、また、本学草創期よりその名を変えることのなかった「工学部」を「理工学部」に、「知識工学部」は「情報工学部」へとその名を改めます。社会の要請にも応えて、学部・学科名称と教育・研究内容を合致したものにいたします。
「キャンパス再整備事業」も着々と進展中です。これは、世田谷キャンパスの約3分の1をリニューアル(新棟2棟を順次建設、等々力キャンパスと総合研究所を移設)するという大規模なもので、これにより、教育・研究環境のさらなる向上に加え、教職員、学生を結集することによるシナジー効果などが期待されます。
アクションプランで掲げた目標は、着実に現実のものとなっています。10年後の100周年、さらに20年先、30年先を見据えながら、東京都市大学は、たとえ社会がどのように変わろうとも、時代の変化に即応しながら進化し続け、優れた実践力、専門力、そして国際性という揺るぎない“価値”を備えた学生たちを、これからも育ててまいります。
最後になりましたが、19年10月には台風19号による大雨で、世田谷キャンパスでは一部が浸水し、約2週の休校を余儀なくされました。被災よりこの間、皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。教育・研究活動への影響は最小限となるよう、復旧作業を進めておりますので、引き続きのご理解ご支援を宜しくお願いいたします。
東京都市大学
学長 三木千壽
2019年度 入学式式辞(2019/4/2)
2019年度 入学式式辞
本日は、校友会会長の原口兼正様、後援会長の佐々木勝久様をはじめとするご来賓、保護者の皆様をお迎えして、入学式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変嬉しく思います。サクラガーデンの桜も、皆さんの入学を待つように満開になりました。
また、本日はお二人の特別なお客様をお迎えしております。お一人は駐日豪州大使のRichard Court氏です。His excellency the Australian ambassador to Japan, Richard Court,Thank you very much for attending today.
本学は4年前よりオーストラリアのパースにありますエディスコーワン大学およびマードック大学の協力により、東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)を実施していますが、Court大使より様々なご支援をいただいています。そのようなご縁から、本日の入学式へ大使にご出席いただくことが出来ました。もうお一方、皆さんの先輩の挽野元様にご出席いただいております。挽野様は平成4年に本学大学院電気工学専攻(当時)を修了されており、現在は、アイロボットジャパン合同会社の社長を務められています。お二人には後ほどお話しをいただきます。
さて、本年度は大学院博士後期課程総合理工学研究科に17名、環境情報学研究科に5名の計22名、大学院修士課程総合理工学研究科に222名、環境情報学研究科に17名の計239名、学士につきましては工学部に804名、知識工学部に242名、環境学部に167名、メディア情報学部に213名、都市生活学部に166名、人間科学部に108名、合計1,700名の学生を迎えます。
皆さん、改めまして、入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを歓迎いたします。昨日、新しい年号「令和」が発表されました。その翌日の入学式です。記憶に残る日になるでしょう。本学の建学の精神は「公正、自由、自治」です。本学の前身の1つである武蔵工業大学は1929年に武蔵高等工科学校として創立され、今年で90周年を迎えます。この学校は、ある学校に在学していた学生たちが、「学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人をさがし、それを受け止めた3名の創立者の熱意により設立された学校です。きわめて稀な形で設立された学校ともいえます。「公正、自由、自治」の建学の精神は、その時に宣言されました。
本学は学校法人五島育英会に所属します。五島育英会は東急グループの設立者である五島慶太翁が1939年に創立した東横商業女学校に始まります。それが後の東横学園女子短期大学であり、2009年に武蔵工業大学と統合して東京都市大学となります。
五島慶太翁が好まれた言葉「熱誠」も、本学の教育研究のバックボーンとなっています。五島慶太翁は熱誠について、次のように語られています。「人の成功と失敗との分かれ目は第1に健康である。次には熱と誠である。体力と熱と誠があるならば、必ず成功する。」新入生の皆さんもぜひ、心の中に「熱誠」をしまっておいてください。
本日は、本学はどのような方針で人材育成にあったっているのか、また、大学でどのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しします。高校までの勉強は、良い大学に入ろうという、極めてわかりやすい目標があり、高校の勉強も受験を意識しての、知識を伝達する形の教育でした。そのために、必要なことは先生から与えられていたと思います。言ってみれば、受動的な学びで済んでいたと言えます。また、入試はあるラインに到達すれば合格します。それに対して、大学では何かを教えてくれるだろうといった「待ち」の姿勢では、何も手に入れられないでしょう。また、どこまでやれば合格というラインもありません。皆さんへ最初にお伝えしたいことは、自ら進んで能動的に学ぶこと、それが大学生活の成功の秘訣です。今、社会から求められている人材は、自分で問題を発見し、解決できる人材です。
先ずは、自分はどのようなことをやりたいのかをはっきりさせることです。皆さんの将来に対する夢を描いてください。そして、それをより具体的な目標にしてください。本日の入学式の記念として、自分はどうしたいのか、それをどのように実現するのかを考え、書いて保存することを提案します。重要なのは目標を明確にすることです。もちろん、私自身を振り返ってみても、大学に入学した時の目標は計画通りには行きませんでしたが、目標とそれに向かってのプランがはっきりすれば、やる気も湧いてきますし、前も見えてきます。まさに、五島慶太翁のお言葉、「熱誠」の世界です。時間が経つのは早いものです。後から、あの時間がもったいなかった、と思わないようにすることです。
次にお伝えしたいことは、学び続けることの大切さです。今、社会は、より高いレベルの能力と知識を有する人材を必要としています。社会に出た後も学びつづけることが重要です。学部に入学した皆さんも、最初から大学院へ進学することを考えて学んでください。昔は大学4年間で十分な学びが出来ましたが今は違います。昔の大学4年間は今の修士課程までの6年間と考えて、自分の学び、キャリアパスを設計することをお勧めします。
多くの大学で、学士と修士を一体化した6年間のプログラムを組み始めています。さらに高度人材を目指して博士課程に行くことも考えてください。本学では、学部と大学院を通して、世界で活躍できる、実践的な専門力を有する人材の育成を目的としています。急速に、大きく変化する社会と環境の中で、リーダーとして活躍できる、タフな人材育成が目指すところです。そのために本学では様々なプログラムを用意しています。
東京都市大学は、2029年の100周年を目標として、様々な大学改革を進めています。そしてその成果が出つつあります。文部科学省が私立大学の教育研究プログラムを評価し、補助金を交付するプログラムとして、私立大学等改革総合支援事業があります。タイプ1に教育、タイプ2に産学連携、タイプ3に社会連携、タイプ4にグローバル、タイプ5に地域のプラットフォームに分けて審査されますが、本学はこのすべてに採択されました。5タイプすべての採択は全国で本学だけです。本学の積極的な取り組み、先進的なプログラムが評価された結果と受け止めています。
本学は、皆さんに対する教育の効果について、IN入学時とOUT卒業時で、どれくらい価値を高められるか、いわゆる教育付加価値を重要と考えており、そのような指標での「Best Value University」でありたいと考えています。そのためには、今まで経験したことのないほど、勉強をしてもらいます。そのつもりで、毎日を過ごしてください。
今、世界は急激にグローバル化しています。自分は興味が無いなどと言って、逃げられる状況にはありません。グローバル化社会とは、時間と距離を超えて、世界が1つの社会になることです。グローバル化は、これからも加速度的に進みます。皆さんにはグローバル化時代をリードする人材、すなわち国際人になってほしいと考えています。本学での国際人育成の入り口が、4年前から始めましたTAPです。このTAPは5年目になりますが、初年度200名、2年目230名、3年目250名、4年目300名の募集に対して、希望者は毎年定員を大幅に上回ってきました。
今年も、予備調査の段階で、希望者の数は400名近くになっています。大変良いことと思います。できるだけ多くの皆さんが参加できるようにしたいと考えています。本学は英語学校ではありません。しかし英語でのコミュニケーション能力は、国際人としての必須アイテムであり、高度な専門教育の成果を生かすために、どうしても身に付けてもらいたいと考えています。都市大生は英語が苦手、英語が苦手だから本学に来たという人が多いのですが、これは自慢にはなりません。皆さんのこれからの展開で、大きなハンディキャップになります。大学での専門を学ぶ前に解消しましょう。
この4月で平成の時代が終わります。平成の30年間は、日本にとっては平和な、戦争のない良い時代だったと総括されています。一方ではバブル崩壊とそれに続く沈滞した時代だったといえます。かつての、科学技術で世界をリードし、世界第2位の経済大国の時代は遥か昔のことになってしまいました。少子高齢化、老朽化の進むインフラ、時代遅れになった社会システムなど、暗い話題が多いのですが、どの国もやがては迎えることになります。元東大総長の小宮山先生はこのような日本の状況を「課題先進国」と表現しましたが、課題先進国としてこれらの難題を解決することにより、日本は再び世界中から尊敬され、模範とされる国になります。これらの課題解決は皆さんの双肩にかかっています。そこで重要なのがチャレンジする気持ちです。
最後に、私が好きな言葉を送ります。アインシュタインの言葉です。Anyonewho has never made a mistake has never tried anything new.「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」失敗できない、したくないからチャレンジを避けるのでは、これからの激動の世界ではサバイブできません。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込んだ人間、学び続ける人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。チャレンジする気持ちが重要です。東京都市大学で、失敗を恐れずチャレンジしてください。皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木千壽
2018年度 学位授与式式辞(2019/3/19)
2018年度 学位授与式式辞
本日、校友会会長の原口兼正様、後援会長の佐々木勝久様はじめ、多くのご来賓の皆様、保護者の皆様にご出席いただき、学位授与式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変な喜びであります。また、本日の式には皆さんの先輩である西尾繁子様にご出席いただいております。西尾様は株式会社エス・ジー・イーの代表取締役を務められています。皆さんの門出に際し、さまざまな事業を展開され、成功されている西尾様にお話をお願いしました。
本日の学位授与ですが、大学院博士後期課程工学研究科では7名が修了し博士(工学)の学位を、環境情報学研究科では3名が修了し博士(環境情報学)の学位を取得しています。修士の学位取得者につきましては、工学研究科240名、環境情報学研究科13名の計253名です。学士につきましては工学部693名、知識工学部257名、環境情報学部4名、環境学部154名、メディア情報学部166名、都市生活学部161名、人間科学部100名、計1,535名の学生が東京都市大学を卒業いたします。
改めまして、皆さんおめでとうございます。保護者の皆様は、さぞかしご安心のことと推察いたします。心からお喜び申し上げます。卒業生の皆さんは、今日があるのはご両親や保護者の皆様のおかげであることを、しっかりと胸に刻み付けてください。
さて、皆さんはいよいよ社会人です。小学校から始まった16年間、あるいはそれ以上の長かった「学ぶ」世界から、自分自身で道を切り開きながら進む世界への船出です。まずは社会人としての自覚を持ち、責任のある行動をすることです。自分の力に自信をもち、思いっきりの力を発揮して、ご活躍ください。
学位を授与するにあたって、卒業生・修了生の皆さんへ私の思い、期待を伝えさせていただきます。それは3つほどあります。
その1つ目は「失敗を恐れず、チャレンジすること」です。チャレンジの無いところからは何も生まれてきません。アインシュタインはAnyone who has never madea mistake has never tried anything new.「失敗を経験した事がない者は、何も新しい事に挑戦したことが無いということだ」といっています。
この4月には平成の時代が終わります。平成が終わるにあたり、いろいろなレビューがされています。平成の日本では戦争が無かった時代、平和な時代でした。これはすばらしいことです。しかし、この30年間、すなわち平成の時代は1990年初頭に起きたバブル崩壊からの沈滞が続いた時代ともいえます。皆さんが受け取る初任給と、保護者の皆様が30年前に受け取られた初任給は多分変わらないでしょう。早くこの停滞した状況から抜け出さなければなりません。卒業生の皆さんの双肩にかかっています。
私は1970年に大学を卒業しました。そして、1972年に大学の助手になりました。私は徳島の出身ですが、当時、本州と四国の間に橋を架けるプロジェクトが始まっており、吊橋を研究したい、そして四国を本州に橋でつなげたいと考えました。その頃の日本の科学技術は欧米からはるかに遅れていました。橋を架ける技術も同じです。アメリカにはゴールデン・ゲート・ブリッジなど、1,000mを越える吊り橋は3橋もありましたが、日本では367mの若戸大橋が唯一の近大吊り橋でした。当時、私の回りでは、何か世界を驚かせることをやろう、何か新しいことをやってやろうといった強い気持ちを持つ者が多く、チャレンジ精神があふれていたように思います。これが日本の1970年代から80年代の飛躍的発展の原動力だったと思います。気がついたら世界第2位の経済大国になっていました。一方で、日本の急速な発展は他国に危機感を抱かせ、経済摩擦が生じました。私は1982年に米国にいたのですが、デトロイトではトヨタカローラがボコボコにされ、ワシントンでは東芝のラジカセが叩き潰されたことを覚えています。まるで今の中国とアメリカの関係のようです。
そのような日本の栄光の時代がバブル崩壊という言葉とともに消え去り、失われた10年が30年まで続き、未だに目覚めていません。諸外国からは、警戒もされない存在になってしまいました。気がついたら、IoT、 AIが牽引する第4次産業革命が巻き起こり、その世界でも、日本は米国や中国に大きく差をつけられています。その様な急速な展開の中で、日本はどうすればよいのでしょうか。日本が元気いっぱいだった20世紀の後半と21世紀では、求められる人材が大きく異なることは確かです。如何すればよいのか、自分で考えてください。それが卒業した瞬間に背負う宿題ともいえます。
なぜ、このようなことになってしまったのか、それは、豊かになるにつれてハングリー精神を失い、今もっているものを失うことを恐れ始めたのではないかと思います。そうなると、行動がコンサバティブになり、新しいことにチャレンジしなくなります。このままで行くと、今の日本の将来は暗く、今のレベルを保つことすら難しいでしょう。でも、日本にはまだまだ国際的な競争力を持つ分野はあります。日本が果さなければいけない役割もたくさん有ります。皆さんには、ぜひ、世界中の人たちが幸福を感じる世界、未来社会の実現にチャレンジしてください。
2つ目は、「学び続けることの重要性」です。大学の卒業と就職は決して「ゴール」では無く、次のレベルへの「スタート」です。社会はものすごい速度で変わっています。産業界の動きを見ても、その変革の速度はどんどん速くなっています。1700年代後半の蒸気機関の出現による第1次産業革命、1800年代後半の電気を用いた大量生産の第2次産業革命、1900年代後半のコンピュータと機械の組み合わせによる第3次産業革命、そして現在進行中の第4次産業革命です。このような歴史からすると、AIが人の能力を超えると予測される2045年頃には今予期できないような新しい流れが出現する可能性があります。ちょうど皆さんが社会をリードする時代です。今大学で学んだ知識、能力だけでこれからの長い時代を勝負できるとは到底思えません。10年経つと時代遅れになるでしょう。それにはどうすればよいのか、それは、学び続けることです。
大学院への入学年齢を見てみますと、米国30歳、イギリス29歳のようにOECD先進国での平均は30歳前後です。彼らは一度社会に出てから、大学院に入り、学びなおしをしているということです。私は、ここに日本再建のキー、潜在力が残されていると考えています。皆さんも、しばらくしたら本学の大学院に戻って学びなおしをしてください。本学としては、皆さんの学びなおしをサポートするためのさまざまなプログラムを用意しています。
伝えたいことの3つ目は、人との出会い、つながりを大事にしてほしいということです。どのような社会になっても、基本は人とのつながりです。それも、生身でのお付き合いが大切です。決して、すぐ隣の人とインターネットを通してコミュニケーションをとるなどしないでください。
私自身のことを振り返ってみても、人とのつながりでさまざまなチャンスをいただいてきています。人とのつながり、そこから出来上がる人脈は最大の財産です。あの出会いが無ければ、今の自分は無いなと思うことがしばしばです。私は3回ほど大学を動いていますが、すべて、いろいろな方とのつながりの中で声をかけていただき、チャンスをいただいてきています。出会いを大事にすること、その中で人生のメンターと思えるような人、生涯の友人と出会うこともあります。そのためには、世界中の、たくさんの人と出会い、自分から進んでお付き合いすることを心がけてください。
今日の卒業生の中には東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)の第1期生201名が含まれています。海外インターンシップの経験者も含まれています。皆さんは、英語を使うことにより開かれる世界、世界中の人とのコミュニケーションの楽しさと重要性を実感していると思います。その様な経験をしていない皆さんは、出来るだけ早く、国、文化、言葉、宗教を超えた、人と人のつながりを作ることの楽しさ、重要さを体験することをお勧めします。もしも英語に自信が無いなら、それもできるだけ早く解決すること、すぐに取り組むことです。これは、チャレンジというほどのことではありません。今日皆さんが受け取る、学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を1つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。
世界が皆さんの能動的な行動を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、本学を訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。皆さんの大いなる発展、ご活躍を祈念して本日の式辞とさせていただきます。
東京都市大学
学長 三木千壽
学長年頭挨拶(2019/1/1)
「教育付加価値最大の大学」を目指して
新年明けましておめでとうございます
東京都市大学は、今年90周年を迎えます。本学の前身校の一つである武蔵高等工科学校が、学問への意欲を燃やす学生たちによって誕生したのは、1929年。日本が世界の先進国に並ぶ道を懸命に歩んでいた昭和のはじめでした。それから社会も技術も大きく変化しましたが、本学が「技術立国 日本」の一翼を担ってきたこと、そして、学校創設の源流には自主の精神があることを、在学生の皆さんにも誇りにしてほしいと思います。
さて、大学時代に目指すべきことは何でしょう。それは、学生自身が成長すること。そしてそれを自覚し、かつ社会で認められることではないでしょうか。本学は、学生の成長を最大限とするために全力をつくす「教育付加価値最大の大学」を目指しています。そのために本学の中長期計画「アクションプラン2030」では、「教育の質保証」「キャンパス教育環境向上」「ブランド力向上」「大学運営向上」の4つのプロジェクトによる改革を進めています。
この改革で私たちが標榜するのは「国際標準」です。目まぐるしく変化する世界にあって、日本の地位を維持・向上させるには、従来の大学教育を変えていく必要があると考えています。カリキュラムを再編し、GPA(グレード・ポイント・アベレージ)による成績評価、自学自習時間の確保など、基礎学力を身につける体制を徹底し、海外の有力大学にも負けない教育環境を整備しました。また、2016年からは、「ディプロマ・サプリメント」による取り組みも進めています。個々の課題を克服し長所をさらに伸ばして、卒業時には社会に向けて学修成果をアピールできるようになるでしょう。
さらに、国際人育成については、語学教育と留学を組み合わせた東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)の参加枠をさらに増やし、より多くの学生が英語で学び、考え、議論できるようにしていきます。海外インターンシップへの派遣者数も、増やしていきます。また、本学が中心となってデラサール大学(フィリピン)、エディスコーワン大学(オーストラリア)、タマサート大学シリントーン 国際工学部(タイ)、マレーシア 日本国際工科院(マレーシア)と「アジア・大洋州5大学連合(AOFUA)」を設立し、選抜された学生が自国以外の2カ国の大学へ留学できる仕組みをつくり、次世代のグローバル・リーダー育成を目指した取り組みも始めました。
また、ブランド力強化に向けては、「都市研究の都市大」事業を、全学をあげて推進しています。都市研究とは、技術や制度、人々やその営みが複雑に絡み合った都市の課題を解決し、より魅力的な都市を創るための研究です。本学は、「東京」という都市のエイジングに起因する諸問題の解決を通じて、魅力ある未来都市を創り、また、その研究成果を世界に発信していきたいと考えています。
実践的な専門力を有する国際人の育成へ、学生の意欲を結実させる場は整っています。あとは、一人ひとりの自主的な行動次第です。今年もたくさんの学生が、成長の笑顔を見せてくれることを楽しみにしています。
東京都市大学
学長 三木千壽
2018年度 入学式式辞(2018/4/2)
2018年度 入学式式辞
本日は、校友会会長の吉田様、後援会会長の佐々木様をはじめとしてのご来賓、保護者の皆様をお迎えして、入学式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変嬉しく思います。桜ガーデンの桜も、皆さんの入学を待ち、持ちこたえてくれたようです。
本日はニュージーランドから特別なお客様をお迎えしております。今年から始まります東京都市大学ニュージーランド留学プログラムのパー トナーでありますカンタベリー大学のカー学長です。また、もうお一方、皆さんの先輩であり、元富士通総研 代表取締役社長の佐藤正春様にもご出席いただいております。お二人には後ほどお言葉をいただきます。
さて、本年度は大学院博士後期課程では総合理工学研究科に13 名、環境情報学研究科に5名の計18名、大学院修士課程には総合理工学研究科に246名、環境情報学研究科に22名の計268名、学士につきましては工学部に760名、知識工学部に347名、環境学部に162名、メディア情報学部に191名、都市生活学部に170名、人間科学部に102名、合計1,732名の学生、および編入生8名を迎えます。皆さん、改めまして、入学おめでとうございます。教職員一同、皆さんを歓迎いたします。
都市大の理念は「公正、自由、自治」です。都市大の前身の一つであ る武蔵工業大学は、1929年に武蔵高等工科学校として設立されました。ある学校に在学していた学生たちが、「学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人をさがし、それを受け止めた3名の創立者 の熱意により設立された学校です。きわめて稀な形で設立された学校と もいえます。「公正、自由、自治」の理念は、その時に宣言されました。
都市大は学校法人五島育英会に所属します。五島育英会は東急グループの創立者である五島慶太翁が1939年に設立した東横商業女学校に始まります。それがのちの東横学園女子短期大学であり、2009 年に武蔵工業大学と統合して東京都市大学となります。
五島慶太翁が好まれた言葉「熱誠」も、都市大の教育研究のバックボーンとなっています。五島慶太翁は熱誠について、次のように記されています。「人の成功と失敗との分かれ目は第1に健康である。次には熱と誠である。体力と熱と誠とがあるならば、必ず成功する。」素晴らしいお言葉です。
さて、今日は、都市大は、どのような方針で人材育成にあたっているのか。また、大学ではどのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しします。高校までの勉強は、良い大学に入ろうという、極めてわかりやすい目標があり、高校の勉強も受験を意識しての、知識を伝達する形の教育であり、必要なことは与えられていたと思います。言い換えれば、受動的な学びで済んでいたといえます。さらに、入試はあるラインに到達すれば合格します。
それに対して、大学では、何かを教えてくれるだろうといった「待ち」の姿勢では、何も手に入れられないでしょう。また、どこまでやれば合格というラインもありません。自分から進んで、能動的に学ぶことが成功の秘訣です。
今、社会から求められている人材は、自分で問題を発見し、解決でき る人材です。先ずは、自分はどのようなことをやりたいのかをはっきりさせることです。今日の入学式の記念として、自分はどうしたいのか、それをどのように実現するのかを考え、それを書いて保存することを提案します。目標を明確にすることが重要です。
目標とそれに向かってのプランがはっきりすれば、やる気も湧いてきますし、前も見えてきます。まさに、五島慶太翁のお言葉、「熱誠」の世界です。時間が経つのは早いものです。後から、あの時間がもったいなかった、と思わないようにすることです。
今、80年前に書かれた吉野源三郎さんの「君たちはどう生きるのか」がヒットしています。大変良い本です。ぜひ、皆さんにも読んでほしいと思います。今日は皆さんに『君たちはどう生きるのか』と問いかけるだけにします。
さて、都市大では、世界で活躍できる実践的専門力を有する人材 の育成を目標としています。今、世界は急激にグローバル化しています。自分は興味が無い、などといって、逃げられる状況にはありません。グ ローバル化社会とは情報通信技術、交通手段の発達、市場の国際的 な開放等により、時間と距離を超えて、世界が一つの社会になることで す。グローバル化は、これからも加速度的に進むでしょう。
都市大では「世界で活躍できる、実践的専門力を有する人材」の育成を目標としています。グローバル化時代をリードする人材とは、すなわち国際人を意味します。皆さんには、国際人になってほしいと考えています。
都市大での国際人育成の入り口が、4年前から始めました、東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)です。このプログラムは、入学直後の準備教育から始まります。1年生では1日2時間、週5日間、ネーティブの講師による英語力強化講義を1年間続けます。2年生で、西オーストラリア州 パースのエディスコーワン大学に1学期間の留学をします。
このTAPは皆さんが4年目になりますが、初年度200名、2年目232 名、3年目253名の募集に対して、希望者が毎年定員を大幅に上回りました。そのため、皆さんのクラスは定員を303名にします。近い将来には500名まで増やし、入学者の1/3が参加できるようにしたいと考えて います。
TAPの効果ですが、TOEIC®のスコアで見れば、平均的には150点程度アップさせています。帰国時点で250点以上スコアを伸ばす学生もいます。日本経済新聞の調べによる社会人の取りたい資格の1番がTOEIC® A、2番がTOEIC® B、3番がTOEIC® Cであり、いかに社会人が英語で悩まされているかを示しています。本格的な専門の勉強を始める前に、この英語の問題を一気に解決してしまおうとするのがこのプログラムです。
今日の入学式にはニュージーランドのカンタベリー大学カー学長にお いでいただいています。皆さんもご存知だと思いますが、カンタベリー大 学は大学世界ランキングでも常にトップクラスにいる大学です。今年か ら英語能力の高い学生を対象として、国際感覚を高めるプログラムを カンタベリー大学と始めます。英語能力の目安はTOEIC®600点です。当然ですが、新入生も参加できます。このプログラムは、最初は45名程度から初め、ゆくゆくは100名規模にしたいと考えています。
東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)およびカンタベリー大学留学プログラム(TUCP)も、1学期間パートナー大学に滞在し、講義を受けて単位を取得する、しかも寮で現地の学生や留学生と一緒に生活するところが、他の大学が行っている留学プログラムとの違いともいえます。ぜひ、皆さん、参加してください。特にTAPは現時点での英語能力は関係ありません。やる気のみです。
都市大生は英語が苦手、英語が苦手だから都市大に来たという人が多いのですが、これは自慢にはなりません。社会に出てから、英語を話さなければならない状況で、前の人の陰に隠れる、できるだけ目を合わさないようにすることは最悪です。皆さんのこれからの展開で、大きなハンディキャップになります。今すぐ、解消しましょう。
都市大ではTAPの他にもいろいろなプログラムを用意しています。今日の日本経済新聞の朝刊に、都市大の国際人育成プログラムの一つである海外インターンシップの記事が登載されましたので、コピーを配らしていただきました。後で読んでください。この海外インターンシップも国際人育成にすばらしい効果を挙げています。
今年からもう一つ新しいプログラムを始めます。それは、都市大からの提案で、フィリピンのデラサール大学(DLSU)、タイのタマサート大学(SIIT)、マレーシアのマレーシア日本国際工科院(MJIIT)、オーストラリアのエディスコーワン大学(ECU)の5大学が共同して、真の国際人育成をしようとするものです。そこにはいろいろなプログラムを計画していますが、そのうちの一つは、学生は自分の大学プラス2大学で学ぶことです。例えば、都市大生はオーストラリアとマレーシア、フィリピンとタイ、タイとマレーシアなどです。真の国際人になるには、できるだけ広い経験をすることです。このプログラムにもぜひチャレンジしてください。
さて、今、社会は大きな変革期を迎えています。新聞紙上にはAIとIoTの文字が躍っています。第4次産業革命が始まった、とも言われています。2045年にはAIの能力が人間の能力を上回るとの予測もありま す。AIの発展により、人が従事する仕事は変わり、雇用環境も大きく変 化するでしょう。すでに多くの仕事はコンピュータに変わりつつあります。
2045年には、今の雇用の40%は消え去るとの予測もあります。2045 年は皆さんが40代になり、まさに社会をリードするようになる時代です。グローバル化と第4次産業革命が進んだ世界が皆さんの未来社会です。
失敗できない、したくないからチャレンジを避ける、ではその様な未来社会の中でサバイブできません。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込んだ人間、学び続ける人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。チャレンジする気持ちが重要です。
都市大は、皆さんに対する教育の効果について、IN入学時とOUT 卒業時で、どれくらい価値を高められるか、いわゆる教育付加価値が重要であり、そのような指標でのBest Value Universityでありたいと考えています。そのためには、今まで経験したことのないほど、勉強をしてもらいます。そのつもりで、毎日を過ごしてください。
最後に東京都市大学グループの学園歌は「夢に翼を」です。まず、夢を見つけてください。そして、それを実現するための翼をつけてください。
皆さんが充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木千壽
2017年度 学位授与式式辞(2018/3/19)
2017年度 学位授与式式辞
おはようございます。本日、校友会会長の吉田様、後援会会長の佐々木様はじめ、多くのご来賓の皆様、保護者の皆様にご出席いただき、学位授与式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変な喜びであります。今日は皆さんの門出を祝って、素晴らしい晴天になりました。桜も例年より早く、開花しました。
本日の式には皆さんの先輩であるoakキャピタル株式会社 執行役員の磯村康典様もご出席いただいております。皆さんの門出に、起業精神とベンチャーマインドをお持ちであり、実践されている先輩にお話いただきたいと考え、磯村様にお願いしました。私は皆さんの今後の展開において、起業精神とベンチャーマインドがきわめて大切と考えております。
さて、本日、大学院博士後期課程工学研究科では、3名が修了し博士〔工学〕の学位を取得しています。修士の学位取得者につきましては、工学研究科253名、環境情報学研究科16名、計269名です。学士につきましては工学部676名、知識工学部271名、環境情報学部5名、 環境学部152名、メディア情報学部187名、都市生活学部153名、人間科学部91名、計1,535名の学生が東京都市大学を卒業いたします 。
改めて、皆さんおめでとうございます。保護者の皆様におかれましては、今日はさぞかしご安心のことと推察いたします。心からお喜び申し上げます。卒業生の皆さんは、今日があるのはご両親や保護者の皆様のおかげであることを、しっかりと胸に刻み付けてください。
皆さんはいよいよ社会人です。小学校から始まった、16年間あるいはそれ以上の長かった「学ぶ」世界から、自分自身で道を切り開きながら進む世界への船出です。まずは社会人としての自覚を持ち、責任のある行動をすることです。自分の力に自信をもち、思いっきり力を発揮して、ご活躍ください。
これから先、皆さんにお話しするチャンスはあまり無いと思いますので、卒業生・修了生の皆さんへ私の思いを伝えさせていただきます。それは3つあります。
その第1はグローバル化社会、第2は第4次産業革命時代、第3は人との出会いです。グローバル化社会と第4次産業革命時代は、皆さんが飛び込む社会で、大変厳しい状況であることを伝えたいと考えました。
第1のグローバル化社会についてですが、世界は大きく動いていま す。激動ともいえます。自分が国際的な仕事をする、しないに係わらず、外国が好きか嫌いかに係わらず、グローバル化社会の中に身を置かれています。また、世界の中での日本であり、日本という穴だけに閉じこもることは出来ないともいえます。グローバル化社会とは、一つの国の中 だけでは物事を解決できない、物事は見えてこない時代であると考え ます。グローバル化は、加速度的に進みます。世界というと、すぐに欧 米に眼が向きます。未だに欧米先進国などという言葉を使う人もいま す。しかし、今、意識すべきは、今まで発展途上国と呼ばれてきたアジ ア、アラブ、アフリカなどの国々です。圧倒的な人口を有し、しかも圧倒 的に若い世代の多い、発展途上国と呼ばれてきた国が途上国ではなく なる日は近いでしょう。
国としては若い世代が多いことは圧倒的に有利になります。日本は少子高齢化時代を迎えています。私は1947年生まれですが、240万人世代です。皆さんは120万人世代であり、私の世代の半分です。これは大変な状況です。グローバル化時代を生き抜くことは、日本が世界の中でどのような状況にあるのかを意識することから始まります。
ところで、グローバル化社会の入り口は英語によるコミュニケーションです。英語については、中学、高校、大学で計8年間も勉強したのですから、「英語も問題ない」と言ってほしいのです。もしも、現時点で英語によるコミュニケーションに自信が無いようでしたら、できるだけ速やかに自分で解決してください。これは皆さんのこれからの活動の中で致命的な弱点になりかねません。
決して逃げてはいけません。英語をしゃべらなくてはいけなくなると、人の陰に隠れて目を合せないようにする人が多いのですが、これは最悪 です。どんどん前に出て行きましょう。都市大生の強みは実践的専門力 です。しかし、英語でコミュニケーションできなければ、何も伝えられない、舞台に上がれない、自分の力を発揮できないことになります。
都市大は世界に通用する人材の育成を目指しています。嬉しいことに、都市大の国際人材育成教育は、社会でもかなり認知されるようになりました。皆さんはその一員です。都市大卒業と聞くと、グローバル人材と見られます。少し無理をしてでも、その流れに乗ってください。
今日の2つめのメッセージは「第4次産業革命」時代をどのように生きるかです。第4次産業革命とは、人工知能AIやIoTがリードする世界です。2045年にはAIが人間の知能を上回る、その結果、現在の雇用の半分は無くなるなど、なんとなく暗くなる予測が出ています。この通りになるとも思えませんが、社会が大きく変わることは確かです。AIを使うのは人間であり、うまく使うことにより、今からは想像できないような、素 晴らしい社会を創りだすことが出来るのではないかと期待しています。2045年には皆さんは40代半ば、まさに皆さんが社会のリーダーとなる年代です。
歴史をたどってみますと、産業革命とは18世紀後半に起こった、機械が登場した事による産業の変化と、社会制度の変化をまとめた現象です。蒸気機関の出現などの時代です。それを今では第1次産業革命と呼んでいます。19世紀末に始まった第2次産業革命では、機械で大量の製品を作れるようになりました。1970年代に始まった第3次産業革命では、機械とコンピュータの組み合わせが自動的に動いてものを作るようになりました。その時代には、いかにミス無く、大量生産を行うかが勝負であり、マニュアルを覚えて正確に再現できる能力を持つ人材が求められました。従って、暗記力と反復力を身に付けた人間の育成が重視されました。このことは、小学校から大学までの教育に強い影響を与え、今でも継続しているといえます。今まさに進められている教育改革の原点です。
私の世代はその中で生きてきましたが、今から思えば楽であったと思います。なぜならば、お手本は欧米であり、それを良く見ればどうにかなる、それを改善すれば勝てる時代だったといえます。日本はこの第3次産業革命に成功して、世界の経済大国になりました。ジャパン アズ ナンバーワンと呼ばれるような世界です。私は、この成功体験がその後の展開に障害となっていると感じています。その結果として失われた20年を迎えます。
安倍内閣総理大臣は空前の景気といっていますが、大卒の初任給などを見る限り、この25年間、ほとんど変化は無く、今も失われた20年から抜け出せていないような気がします。日本は世界に先駆けて少子高齢化に入りましたが、起死回生の戦略をとらないと大変な事態を迎えます。今の生活、社会を維持するなど出来ないでしょう。私たちの世代が通過してきた第3次産業革命時代よりはるかに厳しい時代です。お手本が無い、自分で切り拓いていかないと進めない時代、しかも私たちの世代の人口の半分で、高齢化社会を抱えての勝負です。
ところでこの産業革命の進み方を見てみますと、その間隔がどんどん短くなっています。第1次と第2次の間は100年、第2次と第3時の間は75年、第3次と第4次の間は40年くらい、この時間的な流れからすると、AIが人の能力を超えると予測される、そして皆さんが社会をリードする立場になる2045年頃には第5次産業革命が来る可能性があります。それはどのような技術が牽引する社会なのでしょうか。
伝えたいことの3つめで最後は、人との出会いとつながりを大事にしてほしいということです。今お話したグローバル社会・AI・IoTの社会の中でも、基本は人とのつながりです。決して、すぐそばの人とインターネットを通してコミュニケーションをとるなどしないでください。生身でのお付き合いが大事です。
私自身のことを振り返ってみても、人とのつながりで様々なチャンスを いただいてきています。あの出会いが無ければ、今の自分は無いなと思 うことがしばしばあります。私は3回ほど大学を動いていますが、すべて、 いろいろな方とのつながりでチャンスをいただいてきています。今ここで 都市大学長として皆さんにお話しているのも、2代前の中村学長との 出会いがあったからです。
出会いを大事にすること、その中で人生のメンターと思えるような人、生涯の友人と出会うこともあります。そのためには、世界中の、たくさんの人と出会い、自分から進んでお付き合いすることを心がけてください。今日皆さんが受け取る、学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。
世界が皆さんの能動的な行動を待っています。思いっきり自分を燃焼させてください。そして、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。
皆さんの人生が幸多いものであることを祈念して本日の式辞をさせていただきます。
東京都市大学学長
三木千壽
学長年頭挨拶(2018/1/1)
真の「国際標準の大学」へと進化を果たす
新年おめでとうございます。
東京都市大学は、2019(平成31)年に創立90周年、29年には記念すべき100周年を迎えます。これらを見据え、私たちは大学改革のための中長期計画「アクションプラン2030」をスタートし、教育、研究、学修環境等の総合的で強力な改革に取り組んでいます。
本学の教育は、実践力と専門性を育むことに特色がありますが、近年はこれに加えとくにグローバル人材の育成に注力しています。この分野での具体的な成果に、1年次からの準備教育と2年次の約5ヶ月間にわたる豪州留学を柱とする、本学独自の国際人育成プログラム「東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)」があります。参加学生数は今年度が約300名、2020年度以降は、1学年の3分の1にあたる約500名を予定しています。本格的な長期留学を、これだけの規模で為し得ている大学はほとんどないでしょう。
研究面では、全学を横断する形で総合研究所内に設置した「未来都市研究機構」にて、「都市研究の都市大:魅力ある未来都市創生に貢献するエイジングシティ研究および実用化の国際フロンティア」事業に着手。「都市研究と言えば都市大」という評価を定着させるべく学内外への発信を強化しています。なお、本事業は今年度、文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業(タイプB:世界展開型)」に選定されました。
学修環境の改善については、今年3月、世田谷キャンパスに総合研究所の一部機能を包含する新しい研究・実験棟(仮称C1棟)を完成させるほか、全学的なリニューアルも予定しています。
学長就任から3年。本学は「国際標準の大学」、「国際都市東京で存在感を示す有数の大学」という、目指す理想の礎を固めつつあり、再任されて後の3年間には、その真価が発揮されると考えます。
国内だけでなく海外の学生が「都市大で学びたい」と願い、海外の大学人が「都市大で教育・研究したい」と思う大学へと進化させるべく、「アジア・豪州5大学連合」の計画もあります。TAPの留学先である西豪州のエディスコーワン大学に加え、フィリピンやタイに所在するアジアのトップクラス3大学と本学が緊密なパートナーシップを構築し、単位の相互認定はもちろん、ICTを活用した遠隔授業や、1学期ごとに学生が大学間を移動する留学制度なども実現する予定です。グローバルな人的交流が、教育面はもとより、研究面の充実にもつながるものと確信しています。
日本だけでなく、世界から見て優れた存在感のある大学へ。未来の都市大を、みなさんと一緒に創り上げていきたいと思います。
本年がみなさんにとって素晴らしいものとなるよう祈念し、年頭の挨拶といたします。
東京都市大学学長
三木千壽
2017年度 入学式式辞(2017/4/2)
2017年度 入学式式辞
本日は、後援会会長の伊藤様、校友会会長の吉田様をはじめとするご来賓、保護者の皆様をお迎えし、入学式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変うれしく思います。少し遅れ気味でした桜の開花もどうにか間に合ったようです。
さて、本日はお二人の特別ゲストをお迎えしています。お一人は、東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)のパートナーであります、エディスコーワン大学のチャップマン学長です。工学部長の ハビビ教授と一緒に本日の入学にご出席のため、来日頂いております。
『Prof. Chapman, Vice-Chancellor of Edith Cowan University, and Prof. Habib, Dean of Engineering school, Thank you very much for your attendance today,』
もうお一方は、皆さんの先輩であるウシオ電機株式会社代表取締役社長の浜島様です。お二人からは後ほどお言葉をいただきます。
本年度は、大学院博士後期課程では工学研究科12名、環境情報学研究科9名の計21名、大学院修士課程には工学研究科で241名、環境情報学研究科で13名の計254名、学士につきましては工学部775名、知識工学部348名、環境学部 188名、メディア情報学部201名、都市生活学部186名、人間科学部102名、合計1800名の学生を迎えました。皆さん、入学おめでとうございます。今日から東京都市大学のメンバーです。教職員一同、皆さんを歓迎いたします。
都市大の理念は「公正、自由、自治」です。都市大の前身の一つである武蔵工業大学は、1929年に武蔵高等工科学校として創立されました。ある学校に在学していた学生たちが、「学びたい」と思う一心のもとに、自らが、支援者、教えてくれる人を探し、それを受け止めた3名の熱意により創立された学校です。「公正、自由、自治」の理念は、その時に宣言されました。
東京都市大学は、学校法人五島育英会に所属しますが、五島育英会は東急グループの創業者である慶太翁が1939年に創立した東横商業女学校に始まります。慶太翁については、入学後にさまざまな形で学んでいただきますが、慶太翁が好まれた言葉「熱誠」も、都市大の教育研究のバックボーンとなっています。
慶太翁は、熱誠について、次のように記されています。「人の成功と失敗との分かれ目は第1に健康である。次には熱と誠である。体力と熱と誠とがあるならば、必ず成功する。」
さて、皆さんは、東京都市大学で学ぼうとの意欲に燃えていると思いますので、これから大学で、どのようにすれば有意義に過ごせるのかについてお話しをします。
皆さんは、今までの生徒から、学生と呼ばれるようになります。生徒と学生とでは大きく異なります。生徒とは学校などで教育を受けるもの、学生とは、学業を修めるもの、と説明されています。この違いは重要です。生徒は受動的、学生は能動的に学ぶこと、とも言えます。まず、大学では「能動的に学ぶこと」をきっちりと頭に入れてください。
高校までの勉強は、良い大学に入学したいとの極めてわかりやすい目標がありましたし、高校の勉強は、どうしても受験を意識しての知識を伝達する形の教育、学生から見れば受動的と言えます。そのような状況は、これからはありえません。大学に入学すれば、何かを教えてくれるだろうといった、「待ち」の姿勢では、何も手に入れられないでしょう。都市大においてはアクティブ・ラーニングなど、学生参加型の講義も導入しつつありますが、自分から学ぶ姿勢、「能動的な学び」こそ、大学での学びのコツです。
大学に入学すると、その先の受験などありません。目的を失った学生は迷走状態に入ります。これは、都市大の学生だけではありません。日本の大学での共通した問題です。できるだけ早く、自分の目標を設定してください。大学は、これからの社会に出て行くための自分を高める最後のチャンスです。今は70歳くらいまでは働きますから、これから50年間位の自分の方向を決める場であり、最も重要な時期です。
作家の堺屋太一さんは、最近の若者は「夢と欲とやる気の3Yがかけている」と話されています。私は皆さんに3Yがかけているとは思いませんが、確かにこの「夢と欲とやる気」の3Yは自分を高めるための必要条件です。まずは大きな夢を持つ、そしてそれを実現するぞ、とやる気を持ってください。
さて、君たちは、どのような未来社会を生きることになるのでしょうか。この機会に考えてみてください。新聞紙上には毎日のようにAIとIoTの文字が躍っています。すべてのページに現れるといえるくらいです。第4次産業革命の時代とも呼ばれています。
AIとはArtificial Intelligence人工知能であり、人が実現するさまざまな知覚や知性を人工的に再現するものと言われています。IoTはInternet of Thingsであり、すべてのものがインターネットにつながることで、皆さんのビジネスや生活が根底から変わるといわれています。
2040年には、AIの能力が人間の能力を上回るとの予測もあります。昨日は将棋の佐藤名人が、コンピューターソフトの「PONANZA」と対戦しました。今日の朝刊の記事は「AI佐藤名人破る」です。囲碁の世界ではすでに「アルファ囲碁」というコンピューターソフトが、日本、韓国、中国の名人を破っています。近い将来、AIが人間の能力を超えるとの予想は正しいのだと思います。
AIの発展により人間の能力、知識力がコンピューターや機械に代わるものになるとき、人はどのような能力を社会に還元していけるのでしょうか。人が従事する仕事は変わり、雇用環境も大きく変化するでしょう。知識を記憶すること、それを引き出して使うことは、コンピューターが得意ですから、すでに多くの仕事はコンピューターに変わりつつあります。その結果、2040年には今の雇用の40%は消え去るとの予測もあります。2011年にニューヨークの小学校に入学した子どもたちの65%は今存在していない仕事に就くとの予測もあります。
18世紀の第1次産業革命、19世紀の第2次産業革命そして20世紀の第3次産業革命では、ものづくりの現場だけではなく、社会の仕組みや価値観も変えてきました。第4次産業革命により、今は想像できないような、すばらしい社会が実現していると思います。その時の皆さんの立ち位置が重要です。
もう一つは、グローバル化の流れです。グローバル化とは情報通信技術、交通手段の発達、市場の国際的な開放等により、人、物材、情報の国際的移動が活性化する、その結果として「国境」の意義があいまいになることです。グローバル社会とは、時間と距離を超えて、世界が一つの社会になることです。このようなグローバル化は、これからも加速度的に進みます。
第4次産業革命とグローバル化の世界、これが今見えてきている未来社会です。そこで求められるのが、未知の課題、正解の無い課題に、積極的にチャレンジしていく人材だと思います。失敗できない、したくない、からチャレンジを避ける風潮が大変気になります。リスクを恐れず、未知の世界に飛び込んだ人間だけが、新しい発想を生み出し、未来を開くと考えます。
それでは大学ではどうすればよいのか、と質問が出ると思います。私は、知識を学ぶのではなく、「学び方を知る」ことが重要と考えています。
少し難しい話をしましたが、一つ、きわめて判りやすい、すぐにでも解決すべき、短期的な課題についてお話します。それは英語力です。都市大生は英語が苦手と言って、笑って済ます人が多いのですが、それは大変な間違いです。もしも今、自分は英語がダメと思っているのであればすぐに、克服してください。大げさに言えば、英語が使えないことは一生の不覚になります。
日経新聞の社会人を対象とした取りたい資格の1番はTOEIC A, 2番はTOEIC B, 3番はTOEIC Cです。いかに社会に出た後に英語で悩まされているかを示しています。英語が話せなくても中身があれば、などという人もいますが、私は賛成しません。そのような甘いことを言っている時代ではありません。
国際語である英語でコミュニケーションができなければ、中身も伝えられません。私は、米国の大学でポスドク(博士研究員)を経験しました。そこでは、研究パートナーである大学院生、実験を手伝う作業員、秘書とのコミュニケーションが全く取れず、仕事になりませんでした。学生や作業員からは、「あなたの指示が悪いから仕事が進まない」と抗議されるほどでした。
遂には、秘書に「私は3重苦のヘレンケラー」だと言ったのですが、それさえ通じません。皆さんには、そのような事にはならないでほしいと考えています。また、そうならないようにお手伝いします。
都市大での国際人育成の入り口が、東京都市大学オーストラリアプログラム(TAP)です。このプログラムは、入学直後から始まります。1年生では1日2時間、週5日間、ネーティブによる小人数による英語力強化講義を1年間続けます。2年生で、オーストラリア、パースのエディスコーワン大学への5か月間の留学をします。エディスコーワン大学では前半を英語、後半はリベラルアーツ科目を学びます。帰国後も様々なプログラムが用意されています。
初年度の学生のパフォーマンスを見ますと、都市大での準備教育の終了時点で約半分の学生がTOEICを100点以上アップさせています。帰国時点で200点以上スコアを伸ばす学生もいます。何よりも、オーストラリア人学生や他の国からの留学生と自然に交じり合うようになっています。
都市大としては、卒業するときの皆さんを第1級の人材に仕上げて社会に送り出すつもりです。そのためには、今まで経験したことのないほど、勉強をしてもらいます。そのつもりで、大学の4年間を過ごしてください。
大学には、いろいろな評価の仕方がありますが、IN入学時 とOUT卒業時で、どれくらい価値を高められるか、いわゆる教育付加価値が重要であり、都市大はそのような指標でのBest Value Universityでありたいと考えています。
東京都市大学グループの学園歌は「夢に翼を」です。まず、夢を見つけましょう。そしてそれに翼をつけましょう。
皆さんが、充実した大学生活を送られることを祈念いたしまして、式辞といたします。
東京都市大学
学長 三木千壽
2016年度 学位授与式式辞(2017/3/19)
2016年度 学位授与式式辞
本日、校友会会長の吉田勝様、後援会長の伊藤秀樹様はじめ多くのご来賓の皆様、保護者の皆様にご出席いただき、学位授与式を挙行できること、東京都市大学学長として、大変な喜びであります。本日は皆さんの門出を祝って、素晴らしい晴天になりました。
本日の式には皆さんの先輩であり、証券アナリストとして、また、ベンチャーの育成分野でご活躍の株式会社産業創成アドバイザリー代表取締役佐藤文昭様にもご出席いただいております。この門出に、起業精神をお持ちの先輩に、お話いただきたいと考え、佐藤様にお願いしました。
さて、本日、大学院博士後期課程工学研究科では1名が修了し、博士の学位を取得しています。また、工学研究科1名、環境情報学研究科1名が論文を提出し、博士の学位を取得しています。修士の学位取得者につきましては、工学研究科223名、環境情報学研究科19名、計242名です。学士につきましては、工学部715名、知識工学部290名、環境学部223名、メディア情報学部229名、都市生活学部176名、人間科学部109名、計1742名の学生が東京都市大学を卒業いたします。
改めて、皆さんおめでとうございます。保護者の皆様には、本日はさぞかしご安心のことと推察いたします。心からお喜び申し上げます。卒業生の皆さんも、今日があるのはご両親や保護者の皆様のおかげであることをしっかりと胸に刻み付けてください。
皆さんはいよいよ社会人となります。小学校から始まった、16年間あるいはそれ以上の長かった学ぶ世界から、自分で道を切り開きながら進む世界への船出です。まずは社会人としての自覚を持ち、責任のある行動をすることです。自分の力に自信を持ち、思いっきりの力を発揮して、ご活躍ください。
これから先、皆さんにお話しするチャンスはあまりありませんので、都市大修了生・卒業生の皆さんへの私の思いを伝えさせていただきます。
その1つ目は世界に目を向けることです。世界は大きく動いています。グローバル化といった言葉では表現できないほどの激動とも言えます。国際的な仕事をする、しないに係わらず、世界のグローバル化の実態を、しっかりと認識することが必要です。それには自分の目で見るのが一番です。
昨年もこの場でグローバル化の話をしました。その例として、スーパーマーケットの野菜や果物の国産割合、日本ブランドの車の国内生産割合、さらにはシャープが台湾の会社に買収されるなどに触れました。あれから、この1年の動きはさらに激しさを増しました。このひと月でも「米国大統領がトヨタに米国に工場を作れと発言した」とか、「東芝が米国で買収していたWHの業務が理由で経営危機」などがあります。いまさら、世界の動きとは縁を切って、日本だけの世界を作ることなど出来ません。
グローバル化は、加速度的に進みます。圧倒的な人口を有する、アジア、アラブ、アフリカなどの、今は発展途上国と呼ばれている国が途上国ではなくなる日は近いでしょう。その際に、人口の構成を考えてください。日本は少子高齢化のトップランナーです。例えば、私の世代は君たちの2倍の人口です。一方、アジア、アラブ、アフリカ諸国、では若い人があふれかえっています。
ところで皆さんは、グローバル社会への準備はできているでしょうか。その入り口は英語によるコミュニケーションです。英語については、中学、高校、大学で計8年間も勉強したのですから、「英語でのコミュニケーションは当たり前です、問題ない」と言ってほしいのですが、もしも、現時点で英語によるコミュニケーションに自信が無いようでしたら、できるだけ速やかに自分で解決してください。これは皆さんのこれからの活動での致命的な弱点になりかねません。都市大生の強みは実践的専門力です。しかし、英語でコミュニケーションできなければ、何も伝えられない、舞台に上がれないことになります。
本日2つ目のメッセージは「第4次産業革命」と呼ばれる、人工知能(AI)やIoTの世界についてです。将棋や囲碁でロボットがプロに勝利する、自動運転の社会実装実験が始まるなど、具体的な姿が見え始めています。昨日からAIの囲碁世界大会が開催されており、予想では決勝戦で、日本と中国のソフトが対決するそうです。日本のソフトは先日名人に勝ったものです。
AIに倫理教育をし、ロボットに税金をかけることが議論されています。この先、どのような世界が、開けるのでしょうか。まったく予測がつきません。楽しみでもあります。
歴史をたどってみますと、産業革命とは18世紀後半に起こった機械が登場した事による産業の変化と、社会制度の変化をまとめた現象です。それを今では第1次産業革命と呼んでいます。
19世紀末に始まった第2次産業革命では、機械で大量の製品を作れるようになりました。皆さん、チャップリンの映画、モダンタイムスを見たことがあると思いますが、あの世界です。モダンタイムスでは、人が機械の一部分のようになり、機械に使われるようになっていく世界を風刺したものです。チャップリンが自動給食マシーンの実験台にされるシーンや、歯車に組み込まれたシーンなどが有名です。
1970年代に始まった第3次産業革命では、機械とコンピュータの組み合わせが自動的に動いてものを作るようになりました。日本はこの第3次産業革命に成功して、世界の経済大国になります。その時代には、いかにミス無く、大量生産を行うかが勝負であり、マニュアルを覚えて正確に再現できる能力を持つ人材が求められました。したがって、暗記力と反復力を身に付けた人間の育成が重視されました。このことは、小学校から大学までの教育に強い影響を与え、現在でも継続しているといえます。
AIとIoTが開く、第4次産業革命時代では、機械が自分で考えて動くようになっていくと予想されています。この第4次産業革命によって、今よりも格段に住みやすい、しかもサステイナブルな社会が実現してほしいと思います。しかし、そのような状況の下で、我々は、人間は何をするのか、人間らしさは、そして多様性や価値観はなどを考えなければなりません。2040年には人工知能が人間の知能を超えるとの予測もあります。あと20年先です。それは、まさに皆さんが40代となり、働き盛りの時代です。
グローバル化と第4次産業革命、これが、皆さんが出て行こうとしている社会です。私は都市大卒業の皆さんには、そのような状況で、豊かで住みやすい、しかもサステイナブルな社会を実現していただきたい、リードしていただきたい、と思っています。
3つ目のメッセージですが、皆さんには、何年か働いたのちに大学院に戻ってくることを勧めます。実は、大学および大学院への進学について、日本は先進国の中では極めて特殊な国となっています。日本では大学進学者の平均年齢は18歳です。高校から直接大学に進学します。大学院への進学は、学部卒業後直接がほとんどです。それに対して、米国での大学への進学の平均年齢は27歳です。そして、大学院へ入学する人の平均年齢は32歳であり、
一度職業に就いた人の割合は87%です。多くの学生が社会人を経験してから高いモチベーションを持ち、大学や大学院に入学してくる言うことです。また、大学院に入ると博士を目指します。
モチベーションを持って学ぶこと、これがタフな人材を作る秘訣のように感じます。都市大では社会人の方の大学院への入学を応援するために、昨年度より、博士課程については授業料の90%を、修士課程については50%を減免していますので、大いにチャレンジしていただきたいと思います。
最後に、私が今でも時々読み返す本からの言葉を紹介します。その本は、学生時代に大きな影響を受けた川喜田二郎先生が1967年に書かれた「可能性の探検」であり、地球学入門、との副題がついています。その「可能性の探検」の中で、「仕事と作業の違い」についてです。「人の能力をどう開発するのか」について論じている中で、「人は仕事をしなければいけない、作業だけでは人をダメにする」という言葉です。言われたこと、すなわち作業だけをこなす癖がついた人間、仕事的にやったことが無い人間は、これはやがて企業が起こせないことに通じる、物事を仕事的にやりぬく訓練がいかに大事か、と述べられています。また、「客車は100両連結しても走らない。1台でも機関車なら走る。自分の中にエンジンを備え、自分で発火できる人間でなければ困る。それが仕事を創造的に成し遂げる力だ」とも書かれています。
皆さんはどのようにお考えでしょうか。川喜田先生がこの「可能性の探検」を書かれた1967年から50年経っていますが、グローバル化と第4次産業革命の社会でも、通じるメッセージであると思います。
学位記のフォルダーに「一心」と書かせていただきました。禅語ですが、私の大好きな言葉です。すべてのことは心が原動力、自分の心を一つにして物事に立ち向かえば、必ずや相手を動かすことができる、といった意味です。
世界が皆さんの能動的な行動を待っています。まずは思いっきり自分を燃焼させてください。その中で、困ったこと、迷うことがあれば、東京都市大学を思い出し、訪ねてください。大学そして教員はそれを待っています。
皆さんの人生が、幸多いものであることを祈念して本日の式辞とさせていただきます。
東京都市大学学長
三木千壽