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フィジー諸島における自然体験実習
担当教員:知識工学部 リテラシー学群(化学) 講師 萩谷 宏

フィジー諸島における自然体験実習(第5回)は、2007年度で第5回を迎える教育プログラムです。2007年度は、フィジーの首都スバにある南太平洋大学(USP)ラウザラキャンパスを初めて訪問したほか、国立のフィジー博物館で自然や文化の展示を見学するなど、USPの学生・教員との共同実習を含め、充実した実習を行うことができました。2007年度の実習では、化学の高砂子先生が収集した過去3年間にわたる水質調査のデータをもとに、水環境の化学を、測量・植生・地質とならぶ実習のテーマとして初めて取り上げました。
フィジーの水
フィジー諸島は330の島々からなりますが、首都とナンディ国際空港のあるビチレブ島は四国の半分の面積と1000m級の山々をもち、珊瑚礁のリゾートのイメージとはだいぶ異なる姿を持っています。ビチレブ島をはじめとする数個の島に人口は集中していますが、観光の中心はビチレブ島西部や、ママヌザ諸島、ヤサワ諸島といった、貿易風の風下で晴天の多いビチレブ本島から離れたリゾートです。フィジーには1年で雨季と乾季がはっきり分かれているので、特に乾季の水の確保は大きな問題です。都市部では水道用のダムを水源として上水道が整備されていますが、山間部の集落や住居では、雨水をためたり、山の湧き水を利用した簡易水道を引いたりしてまかなっています。
化学の実習では、現地の村が引いている複数の簡易水道の水源を調査し、山から湧きだしてくる水のpHや溶存成分を測定しました。また、鍾乳洞の水や、沢の水、村の前を流れるシンガトカ川の水を現場で分析し、水質や、温度、pHのデータを集め、アルカリ性の沢水の原因について考えました。現地では山野にウコンが自生しているので、そのウコンの根を採取し、用意した布を染めたり、濁った川の水をろ過してきれいな水をつくってもみました。実験には村の人々も参加して喜ばれました。これらは本学の化学実験担当の大町・矢ヶ部・堀田・渡辺の4先生により実施されました。
リゾートの水
フィジーの離島のリゾート施設では、島内の水需要をまかなうのに本島からバージ(はしけ)で水を運んでいる場合も多いのですが、我々が訪問したマナ・アイランドリゾートでは、逆浸透膜法という、塩分を通さない半透膜に海水を通し、圧力をかけて真水を絞り出す方法で、リゾートの宿泊施設とオフィス、従業員村などすべての水需要をまかなっています。この施設を見学し、取り出された真水の分析を行いました。一方、島内の施設から出てくる下水の処理場では、植栽の散水用に使われている処理済みの水をその場で測定し、CODやカルシウムイオンを測定して、真水にはほとんど入っていなかったカルシウムイオンが増加した理由などから、人がつくる水環境の問題を考察しました。
水を住みかにしている生き物について学ぶことも大切な実習の課題です。マナ島での体験ダイビングやシュノーケリングトリップで珊瑚礁の多彩な生物の姿に感動する一方で、海岸の測量実習では漂着するゴミの多さに気づかされるなど、人と自然との関わりについて考えさせられました。
日本にいるとふだん気づかない水の大切さを、フィジーでの村の生活から学ぶことができます。水を通じて、植物や地質がつながり、また測量した遺跡の位置がわき水と関係していたりすることに気づき、自然と人とが密接につながっていることを、この実習を通じて強く感じさせられます。