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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)理工学部 電気電子通信工学科江原 由泰教授は、ウイルスサイズの微小粒子まで効率よく捕集する空気洗浄装置を、設置する場所に合わせ、短時間で設計できる技術を開発しました。
現在主流の空気洗浄装置の設計手法では、簡易的なシミュレーションで微小粒子の動きを予測して、繰り返し装置を試作・実験しています。
今回開発した手法は、自動車や航空機の風洞実験で用いる粒子画像流速測定法(PIV)*解析を応用しており、微小粒子にレーザ光を当て、高速度カメラで動きをとらえることにより、仮想シミュレーションの精度を向上させ、試作等の回数を減らすことが可能となります。また、この手法は個別に最適な専用設計が求められる舶用エンジンにおける空気洗浄装置にも応用が可能です。
今後も企業との共同研究により、空気清浄装置の品質向上および開発時間や費用が軽減されることを目指します。なお、この成果の一部は、10月26日から福岡市で開催された「マリンエンジニアリング学術講演会」で発表しました。
本研究のポイント
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放電プラズマを用いて、ウイルスサイズの微小粒子まで効率よく捕集可能
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粒子画像流速測定法(PIV)解析を応用し、設置する場所に応じた迅速な設計が可能
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舶用エンジンにおける空気洗浄装置への応用も期待
概要
東京都市大学理工学部電気電子通信工学科の江原由泰教授らは、大きさが数十ナノ(ナノは10億分の1)メートルとウイルスサイズの微小粒子まで効率よく捕集する空気清浄装置を、設置する場所に合わせて短時間で設計できる技術を開発しました。空気を取り込んだ際に微小粒子を放電プラズマによって帯電し、電気的に集塵する装置に対応します。大手電機メーカーの協力も得て、自動車や航空機ボディーの設計に使われる流体力学的な手法を取り入れ、従来に比べて大幅に設計期間を短縮できるようにしました。定型品でなく、空気清浄装置を設置する場所に応じて最も効果を出す形状に設計できるようになります。
空気清浄装置や最近の新しい家庭用エアコンには、放電プラズマによって花粉や臭気物質などの有害粒子を除去する方式が取り入れられています。放電プラズマによる微小粒子への影響は大きく、本来ならそれぞれの微小粒子における機器内の動きに応じて設計することが望ましいです。しかし、微小粒子の挙動は複雑で、ほとんどが把握せずに製造されています。
これまでは、簡易的なシミュレーションで微小粒子の動きを予測して装置を試作し、実際の効果をフィードバックして何度も試作・実験を繰り返す方法で設計されてきました。新技術は、自動車や航空機の風洞実験で用いる粒子画像流速測定法(PIV)解析を応用し、流体にレーザ光を当てて高速度カメラで動きを捉える手法を組み込みました。これによって粒子挙動シミュレーションの精度を向上させ、試作や装置設計の回数を半分程度に減らせるとみています。大学の実験室では、実用機の設計レベルにおいて理論除去率を導出し、装置の最適形状や稼働条件の決定が可能となることも確認しました。新技術を使えば、設置するスペースによって異なる仕様の空気清浄装置を短時間で設計できるようになります。あるいは従来通りの定型のままでも、最適な設置環境を選定することができます。
密閉した室内に浮遊するハウスダストはアレルギーの原因になるため、空気清浄装置のニーズは高いです。飛沫に含まれるウイルスの殺菌は困難であるが、粒子として浮遊するウイルスを捕集することができます。
一方で、燃料に重油を使う舶用エンジンでも、排出する煤や窒素酸化物は海洋汚染の原因になるため、近年は空気清浄機を取り付ける検討がなされています。江原教授らは、家庭用空気清浄装置と並行して大手電機メーカーと共同で、舶用エンジンの空気清浄装置の設計も研究しています。なお、10月26日から福岡市で開かれる「マリンエンジニアリング学術講演会」(https://www.jime.jp/ conference_top)で、今回開発した空気清浄装置の新しい設計手法について発表しました。

図1:空気清浄装置の早期設計手法の流れ

図2:放電プラズマによる帯電シミュレーションの様子

図3:PIV解析を応用した微小粒子の動き
研究の背景
空気清浄装置の設計に対し、精度の高い効率予測が可能となったことで、企業における装置の品質向上および開発時間や費用が軽減されることを期待します。
用語解説
*粒子画像流速測定法(PIV: Particle Image Velocimetry): 可視化技術にデジタル技術を加え、流れの瞬時・多点の速度情報を抽出かする方法。レーザ光源やハイスピードカメラなどを用いて流れ場を計測する。
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)