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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)メディア情報学部 情報システム学科の宮地 英生教授は、人の目が少なくとも約1000分の8秒(8ミリ秒)の変化を認識できることを実験により明らかにしました。
近年、コンピュータゲームを用いて、身体・知的能力を競う「eスポーツ」(エレクトロニック・スポーツ)の普及が進んでおり、将来におけるオリンピック・パラリンピックでの採用が期待されています。同スポーツは、体力に差のある若者と高齢者間での対戦も可能で、幅広い年齢層が一線級の競技者となれる可能性を秘めていますが、人間の反射神経(単純反応速度)は加齢により衰えることから、公平な競技環境を構築するためには、若者に一定のハンデを課する必要があります。
今回、240Hzで動作可能な高速モニターと独自開発したゲームソフトを用いて、人間の反射神経(単純反応速度)を調べた結果、周波数を高く設定したモニターの方が(240Hzと120Hzで比較)反応速度が速くなり、少なくとも人の目が1000分の8秒の画像変化を認識することが明らかになりました。これにより年齢差のある競技者間ではモニターの周波数設定により、容易にハンデを設定できる可能性が示されました。
今後は研究を通じ、eスポーツが人のスキルを高め、健康にも効果があることを示すとともに、専用の機器開発にも役立つことを期待しています。また、この成果は10月28日から鳥取県米子市で開催されたコンピューター技術の国際会議「3PGCIC-2020」で発表しました。
本研究のポイント
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人の目は1000分の8秒の変化を認識できることを実験で確認
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動作周波数が高いモニターの使用で単純反応速度が向上
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モニターの周波数を使い分け、ハンデをつけたeスポーツの対戦が可能に
概要
東京都市大学メディア情報学部情報システム学科の宮地英生教授らは、人の目が少なくとも約1000分の8秒の変化を認識できることを実験で確認しました。反射神経を調べる独自開発したゲームソフトと、約1000分の4秒(動作周波数240Hz)ごとに画像が変わるパソコンモニターを使用し、研究室の学生と教員の6人が、モニターから映し出される画像が変化した瞬間にボタンを押して判断能力(単純反応速度)を測定しました。人の判断能力は老化によって鈍ります。今回の実験は若い学生が中心となって行ったことから、人の平均的な能力を測定したとは言えませんが、年齢が増しても、高速で画像が変化するeスポー(※1)を行うことで判断能力を鍛えられるとみています。
この研究は、eスポーツの普及を促進する電子通信普及財団の助成を受けて実施し、「モニターの色が白から青に変化したらボタンを押す」単純反応時間(※2)を計測するパソコン用ゲームを独自に開発しました。モニターには現在市販される最高性能品(240Hzモニター)(※3)を用い、同教授と5人の学生合わせて6人が、240Hzで動作しているときと120Hzで動作しているとき、それぞれ30回ずつ実験し、ボタンを押す平均時間の遅れを求めました。その結果、遅れ時間は1000分の8秒程度でした。
240Hz以上の高速モニターは実用化していないため、現時点でこれ以上の人の反応速度は測定できませんが、少なくとも1000分の8秒まで人が画像変化を認識していることを確認できました。パソコンゲームの対戦は地域や年齢差を超えて楽しむことができますが、若者と老人がeゲームで対戦する場合、若者が使用するモニターの周波数を下げてハンデをつけることもできます。研究成果は10月28日から鳥取県米子市で開かれるコンピューター技術の国際会議「3PGCIC-2020」(http://voyager.ce.fit.ac.jp/conf/3pgcic/2020/ )で発表しました。
研究の背景
2019年、本学の大学祭(横浜祭)でeスポーツイベントを実施したときにスキルの高いプレイヤーが240Hzのモニターを利用していることが分かりました。インターネットには性能の高いコンピュータシステムがeスポーツの勝負に有効であるという宣伝は掲載されていますが、科学的に示された例は多くありませんでした。
研究の社会的貢献および今後の展開
本研究は、eスポーツを通して高められる人間のスキルを調査する研究の一部として、正確に人のスキル計測を行うために計算機システムの性能の影響を見積もったものです。今回は、初心者でも熟練者でも人は240Hzのモニターを使ってスコアを高める能力があることを示しましたが、今後は経験者のみが持つスキルを明らかにし、eスポーツが人のスキルを高め、健康にも効果があることを示していく予定である。
用語解説
※1 eスポーツ:
エレクトリック・スポーツ(Electric Sports)は将棋や囲碁など戦略を要するカードゲームから反射神経を要する格闘ゲームなど幅広いジャンルを含むコンピュータゲームの総称である。オリンピックへの採用が検討されるほど世界で注目を集めており、高額賞金を懸けた大会も開催されている。
※2 単純反応時間:
あらかじめ動作を決めておき、刺激を感じたらその動作を行うという単純な反応時間をいう。他に、例えば、黒い玉は反応しても良いが、赤い玉は反応しない、とすると黒か赤かを識別する時間がかかり、さらに、出てきた文字をタイプすると識別した結果を正しくキーボードタイプに反映させる能力も必要となる。
※3 240Hzモニター:
日常で使っているモニターは60Hzで動作している。1秒に60回表示を更新するので約15msecで1回の表示を更新する。240Hzは、4倍高速で約4msecで更新する。バーチャルリアリティで立体視を行うとき100~144Hzのモニターを用いる。左右2画面を交互に表示するので片側60Hz程度になる。これでチラつきが無いとされるので、それより速いリフレッシュレートのモニターは通常使われない。
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)