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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)環境学部 環境創生学科の咸 泳植(ハム・ヨンシク)准教授らは、地下水の化学組成を調査することにより、顕生代における海と陸の境界線を解明する方法を開発しました。
同研究は、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向け、深刻化が懸念される気候変動への取り組みが一層求められるなか、地球史的な観点から、陸海域の境界や生息生物の変化を推定する手段となるものです。
今回考案した方法では、浅層地下水、深層地下水、化石水と区別される地下水のイオン濃度等を分析し、過去の海域と現在の陸域を分類することで、数千万年以上前の海と陸の境界線を解明することができ、これにより、現在よりも海面が2~3メートル高かったとされる縄文時代の海岸線予想図と比較しても、顕生代の海域がより広かったことが判明しました。
本研究成果は、地球史における海と陸の変動や生物の生息状況を推定する手段として活用することが期待されます。なお、これらの研究成果は、日本水環境学会(第55回 年会)にて発表しました。
本研究のポイント
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地下水の化学組成(※1)を用いて浅層地下水、深層地下水、化石水(過去海域・現陸域)などに分類し、地理的な歴史を解明する。
概要
東京都市大学 環境学部 環境創生学科の咸 泳植(ハム・ヨンシク)准教授らは、数千万年以上前の海と陸の境界線を見つけ出す新しい手法を提案しました。新たな手法では、浅層地下水、深層地下水、化石水などと区分される地下水(※2)を化学的に分析することで、その場所が陸だったか海だったかを評価します。図1の中で過去海域井戸と分類された場所は、数千万年~数億年前の顕生代に海域と推定された位置です。横浜市都筑区の地下水を分析して、今から数千万年~数億年前の顕生代(※3)における陸と海の境界線を推定した結果、縄文時代の海岸線予想図と比較して顕生代の海域がより広かったことが分かりました(図1)。

図1 過去(数千万年~数億年前の顕生代)海域地下水の評価
(青線:縄文時代の海岸線予想図:神奈川県生命の星、横浜市HP、新横浜歴史を参照、GoogleMap改変)
研究の背景
咸准教授らは、もともと施肥や排水による地中の水質汚染を研究しており、今回、その一環で地下水の化学分析を行ったところ、その由来が淡水か海水かを区別すれば、長い歴史で海や陸がどのように変化したか、またどのような生物が生息したかを推定する手段の一つとしても活用できることを見いだしました。今回の成果は、今年3月に開催された日本水環境学会の第55回 年会で発表しました。
研究の社会的貢献および今後の展開
今から数千万年~数億年前の顕生代の海岸線予想図として社会へ発信することで、一般の方々や学生が環境へ興味を持つきっかけとなり、考古学などの研究や環境問題の解決に向けた地理学的な観点からの一助となることを期待しています。
用語解説
※1 地下水の化学組成:
各地下水が持つ化学的な性質のこと。具体的には、各地下水にそれぞれ含まれている各イオン(硝酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオンなど)の濃度が異なる原理を活かす。
※2 地下水:
明確な定義は無いが、地表からおおむね30メートルほどの深さまでに含まれる水を浅層地下水、50メートル以上深い場所の水を深層地下水と呼ぶ。また現在は陸地でも、過去には海で、地中に残存した地下水を化石水と呼ぶ。
※3 顕生代:
地質時代で現在から5億4200万年前のカンブリア紀から現在までを指す。地球上に多くの生物が生存していた時代を言う。
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)