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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)工学部 エネルギー化学科の高津 淑人 准教授ら研究チームは、マグネタイト(※1)微粒子の表面に、口径の大きい多孔質層(メソポーラス、※2)を持つ二酸化ケイ素を結集させた新材料を開発しました。
同材料は、サイズの大きい分子(7nm程度まで)を収容し、マグネタイトの磁力を生かして特定の場所に正確に輸送することができるため、薬を効率的に患部へ届け、投薬量の減少や副作用を抑制するドラッグ・デリバリー・システム(DDS、※3)へ用いることが期待されます。
なお、本成果は、(一社)粉体工学会「2019年度春期研究発表会」(会期:5月9日~10日)で発表する予定です。
本研究のポイント
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マグネタイト微粒子の表面に、多孔質層を持つ二酸化ケイ素を結集させた新材料を開発した。
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タンパク質のようなサイズの大きい分子(7nm程度まで)を多孔質層の内部に収容できる。
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マグネタイトの磁力を生かし、多孔質層に収容された分子を特定の場所へ正確に運搬できる。
概要
二酸化ケイ素には、分子同士が自ら規則性をもって結集する特性があります。
一般的に、マグネタイト微粒子と二酸化ケイ素を組み合わせる場合、アルカリ性水溶液の中で生成され、多孔質層の口径の大きさは1nm以下です。これ以上口径を大きくする場合、二酸化ケイ素の規則性を変えるため、酸性水溶液の中で生成する必要がある一方で、イオン化傾向(※4)に伴ってマグネタイト微粒子が溶けるという難点があります。
そこで、高津准教授は、鉄イオンが飽和した酸性水溶液を使うことで、マグネタイト微粒子を溶かすことなく、表面に口径の大きい多孔質層を持つ二酸化ケイ素を結集させることに成功しました。
今後は、特定の分子を選択して輸送するための口径制御や、ウイルス(30nm程度)の除去を目的とした吸着剤への適用も視野に、さらなる口径の拡大に取り組みます。
用語解説
※1 マグネタイト
酸化鉄の一種で磁力を持ち、磁石などに用いられる。化学式はFe3O4または4酸化3鉄。天然産のマグネタイトは磁鉄鉱と呼ばれる。
※2 メソポーラス
直径2~50nmの細孔を多く持つ多孔質構造。細孔の小さい構造「マイクロポーラス(直径2nm未満)」では細孔内へ大きい分子が入りづらく、細孔の大きい構造「マクロポーラス(直径50nm超)」では強度に難点があるため、両方の難点を解消しているのが、メソポーラス構造を持つ多孔性物質の利点である。
※3 ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)
治療のために服用した薬剤が、無駄なく効率的に患部へ作用することを目指した産業技術。投薬量の減少や副作用の抑制が期待される。具体例は体内で徐々に放出される「徐放性製剤」。本研究の新材料で使われる二酸化ケイ素は生体適合性が認められ、徐放性製剤の可能性を秘めている。
※4 イオン化傾向
水溶液中で金属元素が電子を奪われ、陽イオンになって溶け出す傾向。