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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)メディア情報学部 情報システム学科の市野 順子教授ら研究チームは、会議の場で、椅子の振動を用いたメッセージを参加者へ送ることにより意見交換が活発になることを明らかにしました。
このたび、会議参加者の発言の促進や抑制を図るためのメッセージをシステムが参加者に送る際、会議室の天井照明の点滅(視覚)と参加者の椅子の振動(触覚)の2つを用いてメッセージを送る方法を比較する実験を行いました。その結果、照明の点滅に比べて椅子の振動の方が、意見交換(発言者の交替)の活発化に約1.5倍の効果があることが定量的に示されました。
本年4月より「働き方改革関連法」が順次施行され、効率的な働き方が求められています。本成果は、参加型会議支援システムへの適用が見込まれるとともに、今後は、人工知能(AI)等を用いて会議の様子を自動モニタリングし、振動によって円滑に会議を進めながら、多様な意見を引き出すことができる技術の実現を目指します。
本研究のポイント
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会議の場で、システムが会議の参加者の積極的な発言を促すには、会議参加者の椅子に振動を与える方が会議室の天井の照明を点滅させるよりも、約1.5倍の効果があることが実験によって明らかになりました。
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特に、椅子の振動を、「発言に消極的な人」に与えるよりも、「発言中の人」や「参加者全員」に与える方が、その効果が高いことがわかりました。
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本研究は、「企業に勤めるオフィスワーカーが普段利用する会議室で業務に沿った議題で行う会議」を用いて実験を行いました。実験室環境で行った実験から得られた知見は人工的で日常生活への適用性に欠ける場合が多いのに対して、本研究で得られた知見は日常性を反映したものと言え、研究成果の実用的な活用が見込まれます。
概要
会議参加者の発言の促進や抑制を図るためのメッセージをシステムが参加者に送ったときの、参加者の反応を調べる実験を、オズの魔法使い法(※1)を用いて行いました。その結果、2つのことが明らかになりました。
第一に、視覚(天井の照明の点滅)と触覚(椅子の座面の振動)という2つのモダリティ(※2)を用いてメッセージを送り、統計的な方法を使って両者を比較したところ、視覚よりも触覚を用いる方が、発言者の交替が約1.5倍活発になりました(メッセージを送ってから10秒後に発言者の交替が発生した確率は、触覚が64%、視覚が40%)。
第二に、触覚モダリティ(振動)を用いてメッセージを送る相手を、「発言に消極的な人」・「発言中の人」・「参加者全員」の3つで比較したところ、「発言中の人」と「参加者全員」に送る方が、発言者の交替がより活発になりました。
普段私たちは人と話すとき、相手の話している内容だけでなく話し方や表情や身振りによって相手への反応を変えますが、本実験結果から、システム(コンピュータ)に対しても似たような反応をしている様子が伺えます。これはとても興味深いことです。
研究の背景
オフィスワーカーが会議に費やす時間は膨大で、会議が生産的かつ円滑に進むことは現場の常なる要望です。また、会議では、特定の参加者だけが意見を出し続け、控えめな参加者はなかなか発言できないといった状況がしばしば生じます。
人工知能(AI)を中心とするコンピュータ技術の進歩は目覚ましいものがあり、将来、知的なコンピュータが会議の場で人間にアドバイスするほどの存在になったとき、コンピュータから人間にアドバイスをどのように伝えれば、会議が円滑に進むかという疑問から本研究がはじまりました。そして、モダリティの違いが人間の反応に異なる影響を与えるのではないかという仮説をもとに検証を進め、人間の感覚のうち、制御しやすくかつ会議の妨げにならない感覚として、まず視覚と触覚に注目しました。
応用と課題
参加型会議を支援するシステムに適用することで、より効果的な会議進行の支援が可能になると期待されます。
共同研究者
株式会社イトーキ 八木 佳子氏、西野 哲生氏、小澤 照氏
本成果の実績
【論文掲載】情報処理学会論文誌(2019年4月15日付)
URL : http://id.nii.ac.jp/1001/00195424/
補足
実験方法に関する動画を以下「都市大公式You Tubeチャンネル」よりご覧いただけます。
用語解説
※1オズの魔法使い法:現時点では実現が困難なシステムに対する人間の反応を知りたいときに、コンピュータの代わりに陰から人が操作してあたかもコンピュータが動作しているように見せかける手法
※2モダリティ:人間の視覚、聴覚、触覚などの感覚に働きかける情報伝達の方法
<取材申し込み・お問い合わせ先>
企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)