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トピックス詳細(プレスリリース)
東京都市大学
東京都市大学(東京都世田谷区、学長:三木 千壽)環境学部 環境創生学科の室田 昌子教授は、東京駅から50㎞圏域に位置する「遠郊外住宅地」における住宅建物・庭の環境状態と居住者の管理力について調査・分析し、「居住環境マネジメントビジネス」の実施を提案しました。
近年では、首都圏の空き家総数も増加傾向にあり、特に遠郊外住宅地における長期不在・取り壊し予定の空き家の割合は5~11%と高い傾向にあります。
一方で、新型コロナウイルスによるテレワークの浸透により、住まいへの意識にも変化が見られ、今後、郊外や地方への移住希望者が増えるとの見方もあります。
今回、遠郊外住宅地における建物・庭の環境状態と居住者の管理力について、2017年度より2本立てで調査・分析した結果、築年数や居住者の属性によって特徴があることが明らかになり、同住宅地の持続性を高めるためには、現役世代が住みたくなる工夫や環境不全化を予防するための仕組みづくりが必要であることが分かりました。
今後は、居住環境マネジメント組織の発足とその稼働にむけて更なる研究を進めていく予定です。また、この成果は日本建築学会計画系論文集 2020年7月第85巻第773号(一部は「世代間継承と管理不全・利用不全に着目した空き家対策」都市住宅学会104号にも掲載、2019・都市住宅学会論説賞を受賞)に掲載されました。
本研究のポイント
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遠郊外住宅地は空き家化が進んでいるが、地域の環境不全化(注1)はその地域が開発された年代に影響を受ける。
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庭付き戸建て住宅の居住者の居住環境管理力は、60歳未満の現役世代、単独世帯、後期高齢者で低い傾向があり、特に庭の手入れに関しての困難さを感じている。
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一方で、60歳代、70歳代や一部の現役世代は近隣住宅地内の庭の手入れへの協力志向があり、コミュニティマネジメントを支えるコミュニティビジネスとして居住環境マネジメントの実施を提案したい。
概要
都心部から遠距離にある郊外住宅地は今後、急速な人口減少が見込まれ、東京駅から50km圏域に位置する「遠郊外住宅地」は、長期不在・取り壊し予定の「その他空き家」の割合が5~11%と高い傾向にあります。また、遠郊外住宅地は1970年代後半から90年代にかけて宅地開発が進み住宅が急増したが、2000年代に入ると都心回帰が進み、高齢化と1人暮らしが増加しています。
そこで、本研究では2017年から2本立てで、東京駅から50㎞圏域に位置する「遠郊外住宅地」における住宅利用の実態調査を行いました。調査では環境不全チェックリストを作成し、住宅地内で目視により建物外観の実態を把握し、併せて居住者に対して空き家問題への懸念、居住環境の管理などに関するアンケート調査も行いました。

その結果、遠郊外住宅地に住む住民は、空き家化や環境悪化の不安が極めて大きいが、1970年代後半~90年代に入居が進んだ住宅地では、現状では管理状態に大きな問題のある住宅は少ないことが分かりました。しかしながら、入居後40年以上を経過すると急速に環境の悪化が進み、1970年代前半に開発された住宅地は、傷みや劣化のある建物が多くみられます。また、庭の手入れで雑草や枝の伸びなどの問題のある住宅の割合が高く、同じ戸建て住宅地内では、縁辺部の利便性の低いエリアや傾斜地に立地する住宅などで劣化が進んでいます。
また、庭付き戸建て住宅の手入れや維持管理に困難さを感じているのは、必ずしも高齢者というわけではありません。研究では、「居住環境管理力」として「住宅の清掃管理実態」、「自宅の清掃管理の評価」などをもとに、住民が良好な居住環境を維持できる力を測定したところ、60歳未満の現役世代、単独世帯、後期高齢者が低い傾向にあり、現役世代の自己評価が極めて低い一方で、近隣の庭などの清掃管理についての協力意向は、60歳代、70歳代が高いことも明らかになりました。
このことから、今後、住宅地の持続性を高めるためには、現役世代が住みたくなる工夫や環境不全化を予防する仕組みづくりを早急に検討する必要があることが分かりました。

なお、この成果は日本建築学会計画系論文集 2020年7月 第85巻第773号(一部は「世代間継承と管理不全・利用不全に着目した空き家対策」都市住宅学会104号にも掲載、2019・都市住宅学会論説賞を受賞)に掲載されました。
研究の社会的貢献および今後の展開
郊外住宅地の持続力を高めるためには、空き家以前の予防として居住環境管理が必要であり、エリアとして環境不全化を予防する「マネジメント組織」を早急につくる必要があります。
今後は、同マネジメントを行う組織の発足と稼働にむけ、更なる研究を進めていく予定です。
用語解説
注1)環境不全:
住宅建物や庭などの管理状態で、建物では外壁、屋根、玄関、シャッター、窓、雨どい、外構では、門、垣柵、庭、車庫、植栽などについての亀裂・剥離や汚れ、雑草や枝の伸びなどであり、項目ごとにレベル区分を行い目視調査により把握した。
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企画・広報室(E-mail:toshidai-pr@tcu.ac.jp)